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海外のカメラ雑誌——Popular Photography, Amateur Photographer, そして世界の写真メディア | カメラ雑誌クロニクル(6)

産業分析
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カメラ雑誌クロニクル——写真・映像メディアの誕生から終焉、そして再生へ(6)

「カメラ雑誌」は日本だけの文化なのか——この問いに答えるには、海を渡らなければならない。実は、世界最古の写真専門誌はイギリスで1854年に創刊されている。アメリカでは1937年に二大カメ「カメラ雑誌」は日本だけの文化なのか——この問いに答えるには、海を渡らなければならない。実は、世界最古の写真専門誌はイギリスで1854年に創刊されている。アメリカでは1937年に二大カメラ雑誌が誕生し、ドイツとフランスにも独自の写真誌文化が花開いた。しかし、それぞれの国で「カメラ雑誌」の意味するものは微妙に異なる。本章では、海外の主要カメラ雑誌の歴史をたどりながら、日本のカメラ雑誌との共通点と相違点を浮き彫りにする。


イギリス——世界最古の写真メディアが生まれた国

British Journal of Photography(1854年〜)

写真専門の定期刊行物として世界最古とされるのが、イギリスの『British Journal of Photography』(以下BJP)である。1854年に『Liverpool Photographic Journal』として創刊され、1860年に現在の誌名に改称された。170年以上の歴史を持つこの雑誌は、写真技術の発展とともに歩んできた生き証人である。

BJPの特徴は、単なるカメラ機材誌ではなく、写真を「表現」として捉える視座にある。技術レビューよりも写真家のプロフィール、作品分析、写真批評に重きを置く編集方針は、日本のハイブリッド型カメラ雑誌——機材レビューと作品掲載・フォトコンテストを両立させたアサヒカメラや日本カメラ——とは対照的である。BJPは第1章で述べたスペクトラムの「作品寄り」のさらに先、写真批評の専門誌というべき位置にある。

2022年、BJPは経営危機に陥り、1854 Mediaに買収されて存続した。紙の雑誌は現在季刊で発行されている。創刊から170年、紙からデジタルへと形態を変えながらも、BJPは写真ジャーナリズムの旗艦であり続けている。

Amateur Photographer(1884年〜)

1884年10月10日、J・ハリス・ストーンが創刊した『Amateur Photographer』(以下AP)は、現存する世界最古の週刊写真雑誌である。創刊の辞でストーンは、「写真はここ数年でアマチュアの間で非常に人気となり、現在ではアマチュアの数がプロの写真家をはるかに上回っている」と記した。2024年10月10日、APは創刊140周年を迎えた。

APの誌面構成は、日本のカメラ雑誌に比較的近い。カメラ・レンズのテストレビュー、撮影テクニック、インタビュー、読者参加型のコンテンツが並ぶ。週刊という刊行ペースは、月刊が主流だった日本のカメラ雑誌よりも速いサイクルで新製品情報を届けることができた。

所有者は時代とともに変遷した。EMAP、TI Media、Future plcを経て、2023年にKelsey Mediaが取得した。一時は『Digital Camera』『Digital Photographer』といった競合誌を擁するFuture plcの傘下にあったが、独立した形で存続している。APは140年にわたり毎週発行を続けており、その持続力は驚異的というほかない。

Practical Photography(1959–2020年)

1959年創刊の『Practical Photography』は、その名の通り「実践的な写真」をテーマとした月刊誌であった。撮影テクニック、カメラのチュートリアル、機材レビュー、インタビューなど、日本の『月刊カメラマン』に近い位置づけの雑誌であった。

しかし2020年6月2日、新型コロナウイルスの経済的影響を受け、出版元のBauer Media Groupが同誌を含む複数タイトルの廃刊を決定した。創刊から61年の歴史に幕を閉じた。日本で同じ2020年に『月刊カメラマン』と『アサヒカメラ』が休刊したことと、時期的にも構造的にも符合する。パンデミックは世界中のカメラ雑誌に最後の一撃を加えたのである。

アメリカ——二大カメラ雑誌の興亡

Popular Photography(1937–2017年)

アメリカのカメラ雑誌史を語る上で避けて通れないのが、『Popular Photography』(以下ポップフォト)である。1937年5月、ニューヨークでZiff-Davis社から創刊された。フランクリン・ルーズベルト大統領の時代である。以後80年にわたり、アメリカ最大の発行部数を誇るカメラ雑誌として君臨した。

ポップフォトの誌面は、日本のカメラ雑誌と多くの共通点を持つ。新製品のラボテスト(精密な数値測定を伴うレビュー)、撮影テクニック記事、読者投稿——日本の『アサヒカメラ』のニューフェース診断室に相当するような精密機材テストを毎号掲載していた。1960年代から70年代のラボレポートは、当時のカメラ・レンズの性能を知る上での一級資料でもある。

1989年、Diamandis Communicationsが競合誌『Modern Photography』を買収・吸収合併し、発行部数は50万〜68万9000部に達した。その後Hachette Filipacchi Media US、そして2009年にスウェーデンのBonnier Corporationに売却された。

しかし2010年代に入ると、紙媒体の広告収入は急速に減少した。2016年には隔月刊に移行し、そして2017年3月/4月合併号をもって、80年の歴史に終止符が打たれた。ウェブ版のPopPhoto.comも同時に閉鎖された。姉妹誌『American Photo』もすでに2015年に紙の発行を終えていたが、こちらのウェブサイトも同時に閉鎖された。

アメリカ最大のカメラ雑誌の終焉は、世界中の写真メディア関係者に衝撃を与えた。しかし、その構造的要因——インターネットによる情報の無料化、スマートフォンによるカメラ市場の縮小、広告モデルの崩壊——は、日本のカメラ雑誌が直面したものとまったく同じであった。

Modern Photography(1937–1989年)

ポップフォトと同じ1937年に、もうひとつの重要なカメラ雑誌が誕生している。『Minicam(ミニカム)』——のちの『Modern Photography』である。1937年9月にオハイオ州クリーブランドのAutomobile Digest Publishing Companyから創刊された。当初は35mmの「ミニチュアカメラ」に特化した専門誌であった。1940年に『Minicam Photography』と改題し、1949年に『Modern Photography』へと誌名を変更した。

モダン・フォトグラフィーはポップフォトと激しい誌面競争を繰り広げた。発行部数はポップフォトの約半分の11万部であったが、1986年までにはほぼ同等の部数にまで迫り、広告ページ数と広告収入ではポップフォトを上回っていた。編集長兼発行人のハーバート・ケプラーは1963年から1987年まで誌面を率い、ABC(アメリカン・ブロードキャスティング・カンパニー)の傘下で独自の編集方針を貫いた。

しかし1989年、ABCの経営再編の波に飲まれ、廃刊。購読者リストはポップフォトに引き継がれた。アメリカの二大カメラ雑誌体制は、約50年の歴史で幕を閉じた。

Aperture(1952年〜)

カメラ雑誌とは一線を画す存在として、写真芸術の季刊誌『Aperture』に触れておく必要がある。1952年、アンセル・アダムス、ドロシア・ラング、ボーモント・ニューホール、マイナー・ホワイトらが共同で創刊した。ニューヨークを拠点とするAperture Foundationが発行するこの雑誌は、写真を芸術表現として真正面から扱う。

日本における『カメラ毎日』の先鋭的な編集方針や、のちの『déjà-vu』に通じる立場であり、機材レビューとは無縁の世界である。『Aperture』は写真集の出版、展覧会の企画も手がける非営利組織であり、写真文化のインフラストラクチャーとして70年以上機能し続けている。

ドイツ——技術大国の写真誌事情

foto MAGAZIN(1949年〜)

ドイツの写真誌で最も長い歴史を持つのが、1949年創刊の『foto MAGAZIN』(フォトマガツィン)である。ミュンヘンのHeering Verlagから創刊され、現代写真からテスト記事、ポートフォリオ、業界ニュースまで幅広くカバーする総合写真誌である。EISAアワードの共同創設メンバーでもあり、ヨーロッパの写真機材評価において重要な役割を果たしてきた。

アマチュアからプロフェッショナル、さらにはデザイナーやアートディレクターまでを読者層とする点で、日本のカメラ雑誌よりも幅広い読者を想定している。2026年現在も刊行が続いている。

ColorFoto(1968–2024年)

WEKAグループ傘下の『ColorFoto』は、ドイツ最大の有料購読写真誌であった。主にカメラ・レンズの精密テストで知られ、1980年代に実施した50mmレンズ15本の比較テストでフォクトレンダー・カラーウルトロン50mm F1.8がライカ・ズミクロンR 50mm F2を上回ったという結果は、写真界に衝撃を与えた。

2021年、同誌はオンライン写真コミュニティ「fotocommunity」と統合してブランド名を変更した。そして2024年初頭、印刷版が廃刊となった。デジタルへの移行を試みながらも、紙の雑誌としての命脈が尽きたのである。ドイツにおいても、カメラ雑誌の構造的な衰退は日本やアメリカと軌を一にしていた。

フランス——独自の写真文化を映す雑誌群

Chasseur d’Images(1976年〜)

「イメージのハンター」を意味する『Chasseur d’Images』は、1976年に創刊されたフランスを代表するカメラ雑誌である。当初は隔月刊で、第21号から月刊に移行した。1978年9月のOJD(フランスの発行部数公査機関)の最初の調査で有料部数7万2000部を記録し、それまでフランス写真誌市場を支配していた『Photo』と『Photo-Magazine』を抜いてトップに立った。

1990年には有料部数10万3000部に達し、フランスのみならずヨーロッパで最も売れた写真雑誌のひとつとなった。機材テストと撮影テクニックを中心とした誌面構成は、日本のカメラ雑誌と最も近い性格を持つ海外誌といえる。2026年現在も刊行が続いている。

Réponses Photo(1992年〜)

1992年創刊の『Réponses Photo』は、アマチュアからプロフェッショナルまでを対象とする月刊写真誌である。技術と美学の両立を掲げ、著名な写真家のポートフォリオ掲載、撮影テクニック講座、機材テストをバランスよく配置する。現在はReworld Mediaが発行し、年間発行部数は約2万2500部である。フランスの写真誌市場が『Chasseur d’Images』一強ではないことを示す存在である。

海外と日本——カメラ雑誌の比較分析

海外のカメラ雑誌と日本のカメラ雑誌を並べてみると、いくつかの重要な違いが浮かび上がる。

観点日本のカメラ雑誌海外の写真誌
誌面の重心機材レビュー+フォトコンテスト機材レビュー中心だが、BJP・Apertureなど芸術系も並立
月例フォトコンテストほぼすべての雑誌で実施。アマチュア育成の核読者投稿欄はあるが、月例コンテスト文化は希薄
機材テストの精度アサヒカメラ「ニューフェース診断室」に代表される精密テストPopular Photographyのラボテスト、ColorFotoのレンズ精密テスト
写真芸術への姿勢『カメラ毎日』が先鋭的だったが、主流は実用志向BJP・Apertureが芸術寄り、AP・PopPhotoは実用寄り
廃刊の時期2020〜2021年に集中(アサヒカメラ、日本カメラ、月刊カメラマン)2017年PopPhoto、2020年Practical Photography、2024年ColorFoto
共通する衰退要因インターネットによる情報の無料化、スマートフォンの普及、広告モデルの崩壊同一の構造的要因。国を問わず紙媒体が直面した共通課題

「カメラ雑誌」は日本だけのものか?

結論から言えば、「カメラ雑誌」というフォーマットは日本固有のものではない。機材レビュー、撮影テクニック、フォトコンテストを三本柱とする雑誌は、アメリカ(Popular Photography)、イギリス(Amateur Photographer)、ドイツ(ColorFoto)、フランス(Chasseur d’Images)にも存在した。

しかし、日本のカメラ雑誌が特殊であるのは、その数の多さ月例フォトコンテスト文化の深さである。最盛期には10誌以上のカメラ雑誌が並立し、それぞれが月例フォトコンテストを運営し、審査員として著名な写真家を起用し、入選作品が写真家としてのキャリアの出発点となった。このような重層的なフォトコンテスト文化は、海外のカメラ雑誌には見られない。

また、日本のカメラ雑誌が国産カメラメーカー——ニコン、キヤノン、ミノルタ、ペンタックス、オリンパス——の膝元で育ったという地理的要因も大きい。カメラメーカーと雑誌の密接な関係は、広告収入という経済的依存構造だけでなく、新製品情報の独占的アクセスという編集上のアドバンテージも生み出した。海外の写真誌はこのような「メーカーとの近接性」を同じ強度では持ちえなかった。

世界のカメラ雑誌——主要誌一覧

誌名創刊年状態備考
英国British Journal of Photography1854年現行(季刊)世界最古の写真専門誌。1854 Media発行。
英国Amateur Photographer1884年現行(週刊)現存する世界最古の週刊写真誌。Kelsey Media発行。
英国Practical Photography1959年2020年廃刊実践的撮影テクニック誌。COVID-19の影響で廃刊。
米国Popular Photography1937年2017年廃刊米国最大のカメラ雑誌。80年の歴史。Bonnier Corporation。
米国Modern Photography1937年1989年廃刊1937年にMinicamとして創刊。1949年に改題。
米国Aperture1952年現行(季刊)写真芸術の季刊誌。Aperture Foundation発行。
foto MAGAZIN1949年現行ドイツ最古の写真誌。EISA共同創設。
ColorFoto1968年2024年廃刊精密レンズテストで著名。fotocommunityに統合後廃刊。
Chasseur d’Images1976年現行仏最大の写真誌。機材テスト中心。
Réponses Photo1992年現行技術と美学の両立。Reworld Media発行。

次章では、日本に視点を戻し、カメラ雑誌とは異なる文脈で写真・映像メディアを支えてきた雑誌——玄光社『コマーシャルフォト』を軸に、広告写真と映像の世界を描く。


カメラ雑誌クロニクル——写真・映像メディアの誕生から終焉、そして再生へ

  1. カメラ雑誌とは何か——そして、誰が読むのか
  2. 黎明期——写真術の伝来とカメラ雑誌の誕生(〜1945年)
  3. 戦後復興と三大カメラ雑誌の時代(1945–1970年代)
  4. カメラ雑誌の黄金期——百花繚乱の1970–90年代
  5. 写真雑誌の系譜——芸術写真・フォトコンテスト・作品発表の場として
  6. 海外のカメラ雑誌——Popular Photography, Amateur Photographer, そして世界の写真メディア
  7. コマーシャルフォトと映像の時代——写真から動画への転換点
  8. デジタル化とインターネットの衝撃——カメラ雑誌はなぜ倒れたのか
  9. ウェブメディアの台頭——DPReview, PetaPixel, YouTube, そして個人ブログの時代
  10. 現行カメラ雑誌の現在地——デジタルカメラマガジン・CAPA・フォトコンは生き残れるか
  11. 終章:カメラ雑誌の未来——紙メディアは再生するのか

典拠

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