レンズベビー(Lensbaby)の歴史と主力製品——掃除機のホースから生まれた「創造性のレンズ」

※Google Geminiにより生成したイメージ画像です。

「完璧なシャープネス」だけが写真の正解ではない。そう教えてくれるレンズメーカーが、アメリカ・オレゴン州ポートランドにある。その名はLensbaby(レンズベビー)。掃除機のホースと大判カメラのレンズを組み合わせるという、およそ正気とは思えない発想から生まれたこのブランドは、2004年の誕生以来、世界中のフォトグラファーに「型破りな表現」を届け続けている。

本記事では、Lensbabyの創業秘話から主力製品の変遷、日本での取り扱い事情、そして独自のクリエイティブフィルターシステム「OMNI」まで、このユニークなレンズメーカーの全体像を掘り下げていく。


目次

Lensbabyの誕生——掃除機のホースが写真史を変えた

原点は2002年、結婚式の現場だった

Lensbabyの物語は、共同創業者であるクレイグ・ストロング(Craig Strong)の「遊び心」から始まる。

ストロングはオレゴン州ポートランドを拠点とするプロフォトグラファーで、2002年当時、年間40件もの結婚式を撮影していた。友人の写真家ケビン・クボタ(Kevin Kubota)からデジタル・ブートキャンプのゲスト講師を依頼され、「何か面白い技術を教えなければ」と思案していたとき、ふと自宅の本棚に目が留まった。

そこには、姉のボニーからもらったスピードグラフィック(Speed Graphic)カメラが置いてあった。大判カメラ特有のあおり(ティルト)効果をデジタル一眼レフで再現できないか——そう考えたストロングは、ホームセンターへ直行する。

彼が見つけたのは、ショップバック(Shop-Vac)の掃除機用ホースだった。

ボディキャップに穴を開け、ホースを差し込み、スピードグラフィックのコダック101mmレンズを装着する。翌日、マウントフッドのティンバーラインロッジで行われた結婚式にこの「奇妙な装置」を持ち込んだ。結果は驚くべきものだった。すばやくフォーカスが合い、しかもクライアントにも喜ばれる独特の写真が撮れたのである。

ストロング自身がこう振り返っている。

「思いついたのは、あのスピードグラフィックを自分のデジタル一眼レフに載せれば、レンズを傾けられるということだった。……ホームセンターで柔軟なベローズを見つけるのは難しいと思ったが、棚の上にまさに必要なもの——ショップバックのホースがあった」——クレイグ・ストロング

Lensbaby公式ブログ「Lensbaby: The Very Beginning」より

2004年、WPPIトレードショーでのデビュー

この「ホースレンズ」の手応えを確信したストロングは、プロトタイプを再設計。起業家のサム・パーデュー(Sam Pardue)と手を組み、Lensbabies, LLCを設立した。

2004年、ウェディング&ポートレート写真の展示会WPPIで「Original Lensbaby」を発表。焦点距離50mm、単一レンズエレメント構成のこのレンズは、画面中央に「スウィートスポット」と呼ばれるシャープな合焦領域を持ち、その周囲にはなめらかに拡散するブラーが広がるという、独特の描写を実現した。

絞りはゴムOリングで固定するドロップイン式のウォーターハウスストップ。f/2.8からf/8までの4枚が付属した。電子接点を一切持たず、オートフォーカスも絞り優先制御も使えない。文字通り「手で曲げて、手でフォーカスする」レンズだった。

当初はニコンFマウントとキヤノンEFマウントのほか、ミノルタ、ペンタックス、オリンパス、コンタックス/ヤシカ、キヤノンFD、M42マウントにも対応しており、幅広いカメラユーザーが試せる仕様だった。


Lensbabyが目指したもの——「Shoot Extraordinary」の哲学

「見る」ことを変えるレンズ

Lensbabyの公式サイトには、こう記されている。

「2004年、プロフォトグラファーのクレイグ・ストロングは、あらゆるジャンルの、世界中のフォトグラファーが新しい見方で撮影できるよう、Lensbabyを設立した」

——Lensbaby公式サイト「Our Story」より

この「新しい見方(see in a new way)」という理念が、Lensbabyの製品開発を貫く柱である。

通常のカメラレンズは、画面全体にわたって均一なシャープネスを追求する。MTF曲線の数値をどれだけ高められるかがレンズ設計の「正解」とされてきた。しかしLensbabyは、その前提を真っ向から覆す。意図的な収差、意図的なブラー、意図的な光学的「欠陥」こそが、写真に感情と物語性を与える——これがLensbabyの根本思想である。

セレクティブフォーカス(選択的合焦)という概念がその中核にある。従来のレンズでも被写界深度を浅くすることで主題を浮き上がらせる技法は存在したが、Lensbabyはティルト機構を組み合わせることで、合焦面そのものを傾けられるという独自のアプローチを実現した。同じ距離にある被写体であっても、スウィートスポットの外にあれば美しくぼける。これは通常のレンズでは不可能な表現である。

「おもちゃ」ではない、「道具」である

一部のフォトグラファーからは「ギミック」「おもちゃ」と揶揄されることもあるLensbabyだが、その評価は必ずしも正しくない。

Lensbabyのレンズは映画やテレビドラマの撮影にも使用されている。ジュリアン・シュナーベル監督の『潜水服は蝶の夢を見る(The Diving Bell and the Butterfly)』、ジョス・ウェドン監督の『から騒ぎ(Much Ado About Nothing, 2012)』、スティーヴン・ソダーバーグ監督の『コンテイジョン(Contagion)』、BBC制作のドラマ『SHERLOCK/シャーロック』など、ハリウッドの一線級の作品でLensbabyが使われてきた実績がある。

「遊び」から生まれたレンズが、プロフェッショナルの現場でも通用する「表現の道具」として認められている——それがLensbabyの面白さである。


Lensbabyの進化史——2004年から現在まで

第1世代:Original〜3G(2004–2007)

モデル主な特徴
2004Original Lensbaby50mm/f2.8〜f8、単一エレメント、ドロップイン絞り
2005Lensbaby 2.0マルチコートガラスダブレット採用、磁気式絞りディスク
2006Lensbaby 3Gネジ式ロッドによるロック機構搭載、微調整が可能に
2007Lensbaby 3GPLPLマウント対応、映像制作市場へ参入

Lensbaby 2.0(2005年)はオリジナルの光学系を大幅に改良。低分散・高屈折率のマルチコートガラスダブレットを採用し、スウィートスポットのシャープネスが向上した。絞りディスクは磁石で浮かせる方式に変更され、交換が容易になった。

Lensbaby 3G(2006年)は、フレキシブルなチューブ構造に加え、3本のネジ式ロッドとロック機構を搭載。レンズを傾けた状態で固定でき、微細なフォーカス調整がバレルリングで可能になった。これにより再現性が格段に向上し、長時間露光も実用的になった。

第2世代:オプティック・スワップ・システムの登場(2008〜)

2008年、Lensbabyは社名を「Lensbabies」から「Lensbaby」に変更するとともに、大きな転換点を迎える。オプティック・スワップ・システム(Optic Swap System)の発表だ。

このシステムは、レンズボディとオプティック(光学ユニット)を分離し、ボディはそのままにオプティックだけを交換することで、まったく異なる描写特性を得られるというモジュラー設計である。

レンズボディの進化

ボディ名操作方式特徴
Muse蛇腹を手で曲げるOriginal Lensbabyの直系。直感的だが固定不可
Composerボール&ソケット+バレルフォーカス滑らかなティルト操作、ロック可能
Control Freakネジ式ロッド+ロック3Gの後継。精密なポジショニング
Composer Pro(2011年)改良型ボール&ソケットより滑らかな操作感
Composer Pro II(2015年)金属製ボディ、最大15°ティルト現行の主力ボディ。堅牢で安定
Spark 2.0(2020年)蛇腹を手で曲げるMuseの系譜を引くエントリーモデル

現在のLensbabyシステムの中心にあるのが、Composer Pro IIである。金属製ボディにボール&ソケット機構を内蔵し、ティルトの方向と角度をロックリングで固定できる。ヘリコイドによるマニュアルフォーカスも備え、通常のレンズに近い操作感でクリエイティブな撮影が可能だ。

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主要なオプティック

オプティック・スワップ・システム対応の交換光学ユニットは、現在まで十数種類がリリースされている。代表的なものを紹介する。

Sweet系(スウィートスポット効果)

オプティック焦点距離開放F値特徴
Sweet 3535mmf/2.5初の内蔵絞りオプティック(2011年)
Sweet 5050mmf/2.5標準画角のスウィートスポット
Sweet 8080mmf/2.8ポートレート向き中望遠

「スウィートスポット」とは、画面内の円形の合焦領域のことである。絞りを開けるほどスウィートスポットは小さくなり、周辺のブラーが強調される。絞り込むとスウィートスポットが広がり、通常のレンズに近い描写に近づく。

Edge系(ティルトシフト的効果)

オプティック焦点距離開放F値特徴
Edge 3535mmf/3.5広角、2019年発売
Edge 5050mmf/3.5標準画角のエッジ
Edge 8080mmf/2.8初のEdge系(2012年)

Edge系オプティックは、スウィートスポットではなく**「スライス」**——帯状の合焦領域を生成する。ティルトシフトレンズに似た効果をより手軽に、かつ安価に実現できるのがメリットだ。建築写真やテーブルフォト、ジオラマ風のミニチュア効果などに適している。

Twist 60(ぐるぐるボケ)

ペッツバール型光学設計を現代に蘇らせたオプティック。焦点距離60mm、f/2.5〜f/22。画面周辺部に独特の「ぐるぐるボケ(swirly bokeh)」が現れる。19世紀のペッツバールレンズが持っていた癖を意図的に再現したもので、ポートレートや花の撮影で人気が高い。2016年発売。

Soft Focus II(ソフトフォーカス)

焦点距離50mm。内蔵アイリス絞りと磁気式絞りディスクの二重構造を持つ。ソフトフォーカスの強度を絞りと絞りディスクの組み合わせで繊細にコントロールできる。2022年発売の第2世代モデル。

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スタンドアロンレンズ——モジュラーから独立へ

2014年以降、Lensbabyはオプティック・スワップ・システムとは別に、光学系・フォーカス機構・マウントを一体化したスタンドアロンレンズのラインナップを拡充していく。

Velvet(ベルベット)シリーズ——「ヴィンテージの柔らかさ」を現代に

Velvetシリーズは、Lensbabyの製品群の中でも特にユニークな存在だ。

モデル焦点距離開放F値フィルター径発売年
Velvet 2828mmf/2.567mm2020年
Velvet 5656mmf/1.662mm2015年
Velvet 8585mmf/1.867mm2017年

Velvet 56は、2015年の発売当初から大きな話題を呼んだ。3群4枚(シングレット・ダブレット・シングレット)の光学設計は、20世紀半ばのレンズに見られた球面収差を意図的に取り入れたもので、開放付近では独特のソフトフォーカス効果(「ベルベットグロー」)が得られる。絞り込むにつれてグローは抑えられ、f/5.6〜f/8あたりではかなりシャープな描写となる。

さらに特筆すべきは1:2マクロ撮影が可能な点だ(Velvet 56の場合、最短撮影距離約13cm)。マクロ域でのソフトフォーカス効果は水滴や花弁の撮影で威力を発揮し、「水滴がバブルボケのように見える」と評するフォトグラファーも多い。

Velvet 85はポートレート向きの焦点距離で、肌のテクスチャを自然にソフトに描写する。Velvet 28は広角ながらベルベット効果を活かした風景撮影やスナップに向く。

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Sol 45——手軽なティルト入門

Sol 45は2018年発売のスタンドアロンレンズ。焦点距離45mm、f/3.5固定絞り。Composer Pro IIのボール&ソケットを簡略化したティルト機構を内蔵し、センタリングロックでティルトを解除すれば通常のレンズとしても使用できる。価格も比較的手頃で、Lensbabyシステムへの入り口として適している。

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Burnside 35——ヴィネットとスワールの二重奏

Burnside 35は2018年発売。焦点距離35mm、f/2.8〜f/16。ペッツバール型光学設計に加え、ヴィネット(周辺減光)をコントロールする二重絞り機構を備えている。内蔵のセカンダリーアパーチャーを操作することで、ヴィネットの強さを自在に調整でき、スワールボケとの組み合わせで多彩な表現が可能だ。レンズ名はポートランドを流れるバーンサイド橋に由来する。

Sweet 22——最広角のスウィートスポット

2024年発売の最新スタンドアロンレンズ。焦点距離22mm、f/3.5。Lensbabyのラインナップ中、最も広い画角を持つスウィートスポットレンズである。パンケーキサイズの小型設計で携帯性に優れ、ストリートスナップや旅行撮影に適している。

Lensbaby OMNIクリエイティブフィルターシステム

レンズの前に「魔法の杖」を掲げる

Lensbabyの製品群の中で、レンズそのものではないが見逃せないアイテムがある。OMNI Creative Filter System(以下、OMNI)である。

OMNIは、レンズの前面にフィルターリングを装着し、そのリングに取り付けたアーム(マグネット式)を使って**「エフェクトワンド」**と呼ばれるクリスタルやフィルム片をレンズの前に差し出すシステムだ。

手持ちでクリスタルプリズムやガラス片をレンズの前にかざすテクニック(いわゆる「フリーレンジング」や「シュートスルー」)は、クリエイティブフォトグラフィーでは以前から知られていたが、それを安定的かつ再現可能な形で実現する製品化されたシステムは、OMNI以前にはほとんど存在しなかった。

同梱のエフェクトワンド

基本キットには3種類のエフェクトワンドが含まれる。

  1. Crystal Seahorse(クリスタルシーホース)——タツノオトシゴ型のクリスタル。光を屈折・分散させ、虹色のフレアやプリズム効果を生み出す
  2. Stretch Glass(ストレッチグラス)——細長いガラス片。画面の一部に引き伸ばされたようなディストーションを加える
  3. Rainbow Film(レインボーフィルム)——虹色のフィルム。レンズに虹色の光を送り込み、夢のようなカラーオーバーレイを作り出す

加えて、OMNIシステム用の追加ワンドキット(Rainbowキット、Crystal Expansion Packなど)も販売されている。

サイズ展開と仕様

OMNIはSmallサイズ(フィルター径49〜58mm対応)とLargeサイズ(フィルター径62〜82mm対応)の2種類が存在する。Largeの場合、72mmのフィルターリングをベースに、各サイズのステップアップリングおよびステップダウンリングが付属し、62mmから82mmまでのレンズに対応する。

重要なのは、OMNIはLensbabyのレンズ専用ではないという点だ。通常のカメラレンズ(キヤノン、ニコン、ソニー、フジフイルムなど何でもよい)に装着して使用できる。フィルターねじさえ合えば、あらゆるレンズで「レンズベビー的」なクリエイティブ表現が楽しめる。

価格は99.95ドル(米国公式価格)と、レンズ本体に比べて手頃だ。日本ではケンコー・トキナーを通じて販売されている。

OMNIの活用シーン

OMNIはポートレート撮影やウェディングフォトで特に重宝される。前景にフレアやプリズム効果を加えることで、後処理では再現しにくい「インカメラ」のドリーミーな効果が得られるからだ。

ただし、注意点もある。PCMag誌のレビューでは、一眼レフの光学ファインダーではOMNIの効果を正確にプレビューしにくい点が指摘されている。ミラーレスカメラのEVF(電子ビューファインダー)やライブビューを使用することで、効果をリアルタイムに確認しながら撮影することが推奨されている。

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日本でのLensbaby——ケンコー・トキナーが開いた窓

国内正規代理店:株式会社ケンコー・トキナー

Lensbaby製品の日本国内での正規取り扱いは、株式会社ケンコー・トキナーが担っている。フィルターや三脚で知られる老舗光学機器メーカーが代理店を務めるという事実は、Lensbabyが単なる「変わり種レンズ」ではなく、光学製品として一定の品質と市場性を認められていることの証左でもある。

ケンコー・トキナーの公式サイトでは、Lensbabyの全ラインナップ(オプティック・スワップ・システム、スタンドアロンレンズ、OMNI、アクセサリー類)が日本語で紹介されており、オンラインショップでの直販も行われている。

国内での価格帯と入手性

日本国内での販売価格(ケンコー・トキナー公式オンラインショップ、税込参考価格)は以下のとおりである。

製品価格(税込)
Composer Pro II + Sweet 50 セット44,800円
Composer Pro II + Edge 35 セット67,200円
Composer Pro II + Twist 60 & NDフィルター48,000円
Composer Pro II + Soft Focus II49,000円
Composer Pro II + Edge 80 セット67,200円
Twist 60 & ダブルグラス II スワップキット68,000円
Velvet 56(※スタンドアロン)67,000円

対応マウントは、Canon EF、Canon RF、Nikon F、Sony A、Sony E、Fuji X、Pentax K、マイクロフォーサーズ、Leica Lと幅広い。2022年12月にはケンコー・トキナーからLensbabyマウントアダプターも発売され、一眼レフ用のLensbabyレンズをミラーレスカメラで使用できるようになった。

また、ケンコー・トキナーのYahoo!ショッピング店でも取り扱いがあり、ポイント還元を活用した購入も可能だ。

日本市場での位置づけ

Lensbabyは、日本のカメラユーザーの間では「知る人ぞ知る」ブランドである。キヤノンやニコン、ソニーといった大手メーカーの純正レンズ、あるいはシグマやタムロンのサードパーティレンズが主流を占める日本市場において、「意図的にブラーを生み出す」というコンセプトは、決して万人受けするものではない。

しかし、花や風景の撮影を愛好する層、ウェディングフォトグラファー、そして「写真は表現である」という意識を強く持つアマチュア・プロフォトグラファーの間では、根強い支持を得ている。日本国内のレンタルサービス(パンダスタジオなど)でもLensbaby製品が取り扱われており、「まずは試してみたい」というユーザーにもアクセスしやすい環境が整いつつある。


日本以外の国での使用状況——グローバルなクリエイティブコミュニティ

世界各国で販売

Lensbabyは本社をポートランド(オレゴン州)に置くアメリカ企業だが、その製品はアメリカ国内にとどまらず世界各国で販売されている。公式サイトの「International Retailers」ページには、オーストラリア&ニュージーランド、フランス、ドイツ、香港、日本、韓国、オランダ、シンガポール、イギリスの各国ディストリビューターが掲載されている。

映画・テレビドラマでの使用

先述のとおり、Lensbabyは映像制作の分野でも一定の地位を確立している。Wikipediaの記載によると、以下の作品でLensbabyが使用されている。

映画:

  • 『潜水服は蝶の夢を見る(The Diving Bell and the Butterfly)』
  • 『から騒ぎ(Much Ado About Nothing, 2012)』
  • 『コンテイジョン(Contagion)』
  • 『ザ・レイヴン(The Raven)』
  • 『アイ・メルト・ウィズ・ユー(I Melt With You)』
  • 『ブラインド・マッサージ(Blind Massage)』

テレビ:

  • 『SHERLOCK/シャーロック(Sherlock)』
  • 『ハウス(House)』
  • 『カリフォルニケーション(Californication)』
  • 『ドールハウス(Dollhouse)』
  • 『リベンジ(Revenge)』
  • 『CSI』
  • 『フラッシュフォワード(FlashForward)』

これらの作品では、登場人物の主観的な視覚体験(酩酊状態、記憶のフラッシュバック、夢の中の情景など)を表現するためにLensbabyが用いられることが多い。PLマウント対応モデルやアダプターを介して映画用カメラに装着できるため、大型撮影機材との組み合わせも可能だ。

ウェディングフォトグラフィー

Lensbabyが特に強い支持を集めている分野のひとつがウェディングフォトグラフィーである。これはLensbaby自体がWPPIトレードショーでデビューしたことからもわかるように、創業当初からの得意領域だ。

欧米のウェディングフォトグラファーの間では、通常のポートレートレンズに加えて「1本だけ変化球」としてLensbabyをバッグに入れておく、というスタイルが広まっている。ベールやブーケ越しのドリーミーなショット、ダンスシーンの幻想的な描写など、「普通のレンズでは撮れない1枚」を生み出す切り札として重宝されている。

Lensbaby Unplugged——グローバルコミュニティ

Lensbabyは**「Lensbaby Unplugged」**というFacebookグループを運営しており、世界中のユーザーが作品を共有し、技術的な情報交換を行っている。共同創業者のクレイグ・ストロング自身もこのグループに頻繁に参加し、ユーザーと直接対話している。

加えて、Lensbabyは**International Photowalk(インターナショナル・フォトウォーク)**というイベントも主催しており、世界各地のユーザーがそれぞれの街でLensbabyを持って撮影に出かける企画が毎年行われている。「あなたのレンズ、あなたの街、あなたのフォトウォーク」というキャッチコピーのもと、グローバルなクリエイティブコミュニティの形成が進んでいる。

ヨーロッパでの人気

オランダのフォトグラファー、フランク・ドールホフ(Frank Doorhof)は、Lensbabyの愛用者として知られている。彼はShotkitのインタビューで、ミラーレスカメラのEVFがLensbabyの使い勝手を劇的に向上させたと語っている。

「もしあなたがまだ『マニュアルフォーカスレンズは使いにくい』という記憶を持っているなら、忘れてほしい。時代は変わった。EVFを搭載した新しいカメラにより、ピーキングやライブビュー拡大を使ってピントを正確に合わせることができる。これによりLensbabyの使用は驚くほど簡単になった」

——フランク・ドールホフ(Shotkit掲載記事より)

ヨーロッパ圏ではイギリス、オランダ、ドイツを中心にLensbabyユーザーが多く、特にクリエイティブポートレートや花のマクロ撮影の分野で支持されている。


Lensbabyの現在と今後——「Shoot Extraordinary」は続く

2026年現在、Lensbabyのラインナップは37製品以上(レンズ、オプティック、アクセサリー含む)に達している。創業から22年を経てもなお、Lensbabyは新製品を出し続けている。

2026年2月には、新製品Twist 28が発表された。ペッツバール型光学設計を採用した28mmパンケーキレンズで、固定絞りf/3.5、ミラーレスカメラ専用マウントで展開される。Lensbaby自身が「最もリクエストの多かったレンズ」と称するこの製品は、Twist 60の広角版ともいえる存在で、スワールボケを手軽に楽しめるコンパクトな設計が特徴だ。

近年は、ヴィンテージレンズカテゴリーの新設(公式サイトのShopメニューに「Vintage Lenses」が追加されている)など、クラシックな光学設計への回帰とも取れる動きも見られる。デジタル時代の高精細なセンサーを前にして、あえて「不完全な」描写を選ぶフォトグラファーが増えていることの表れだろう。

Lensbabyの思想は明快だ。写真は技術的な正確性だけで成立するものではない。光と影、シャープとブラー、秩序と混沌のあいだにこそ、表現の余地がある。 掃除機のホースから始まったこの冒険は、まだまだ終わりそうにない。

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典拠一覧

  1. Lensbaby公式サイト「Our Story」 https://lensbaby.com/pages/our-story
  2. Lensbaby公式サイト「About Us」 https://lensbaby.com/pages/about
  3. Lensbaby公式ブログ「Lensbaby: The Very Beginning」(Craig Strong, 2018年1月24日) https://lensbaby.com/blogs/creative-photography/about-lensbabys-beginning
  4. Wikipedia「Lensbaby」 https://en.wikipedia.org/wiki/Lensbaby
  5. Lensbaby公式サイト 製品ページ https://lensbaby.com/collections/collection
  6. Lensbaby公式サイト「OMNI Creative Filter System」製品ページ https://lensbaby.com/products/omni-creative-filter-system
  7. PCMag「Lensbaby Omni Creative Filter System Review」 https://www.pcmag.com/reviews/lensbaby-omni-creative-filter-system
  8. PCMag「The Best Lensbaby Optic Swap Lenses for Creative Photography」 https://www.pcmag.com/picks/the-best-lensbaby-optic-swap-lenses-for-creative-photography
  9. Jake Hicks Photography「Lensbaby Omni Review」 https://jakehicksphotography.com/latest-techniques/2019/6/24/lensbaby-omni-review
  10. Alik Griffin「Lensbaby OMNI Creative Filter Review」(2025年1月29日) https://alikgriffin.com/lensbaby-omni-creative-filter-review/
  11. ケンコー・トキナー公式サイト Lensbabyページ https://www.kenko-tokina.co.jp/camera-lens/lensbaby/
  12. ケンコー・トキナー ヤフー店 LENSBABYレンズベビー https://store.shopping.yahoo.co.jp/kenkotokina/lensbabya5.html
  13. Photo and Culture TOKYO「一眼レフ用のレンズベビーをミラーレスカメラで使える Lensbaby マウントアダプター」(2022年12月) https://photoandculture-tokyo.com/contents.php?i=1633
  14. PentaxForums「Lensbaby lenses on Japanese pentax store?」(2022年9月17日) https://www.pentaxforums.com/forums/16-pentax-news-rumors/446711-lensbaby-lenses-japanese-pentax-store.html
  15. The Milky Way Podcast「The Power of Play: Pushing Yourself Out of Your Creative Comfort Zone with Craig Strong」 https://themilkyway.ca/the-power-of-play-pushing-yourself-out-of-your-creative-comfort-zone-with-craig-strong/
  16. This Week in Photo「Conceiving a Lensbaby」 https://thisweekinphoto.com/conceiving-a-lensbaby/
  17. DPReview 各ニュースリリース・レビュー(Lensbaby関連記事群) https://www.dpreview.com
  18. Digital Photography School「Overview of the Lensbaby System」 https://digital-photography-school.com/overview-lensbaby-system/
  19. SheClicks「Best Lensbaby Lenses in 2026」 https://sheclicks.net/reviews/best-lensbaby/
  20. Lensbaby公式ブログ「Using Lensbaby Lenses for Creative Photography | Frank Doorhof」 https://lensbaby.com/blogs/creative-photography/using-lensbaby-lenses-for-creative-photography-frank-doorhof
  21. Lensbaby公式サイト「International Retailers」 https://lensbaby.com/pages/international-retailers
  22. Lensbaby公式サイト「International Photowalk」 https://lensbaby.com/pages/international-photowalk
  23. B&H Photo Video「Lensbaby OMNI Creative Filter System」製品ページhttps://www.bhphotovideo.com/c/product/1479755-REG/lensbaby_lbof77_omni_creative_filter_system.html
  24. Fstoppers「A Quick Review of the Lensbaby OMNI Filters」(2020年5月2日)https://fstoppers.com/gear/quick-review-lensbaby-omni-filters-481262
  25. Californialover「Mastering the Lensbaby Optic Swap System」 https://nexgenimage.com/brands/lensbaby/
  26. Lensbaby公式ブログ「Best Lensbaby Lenses to have for 2022」 https://lensbaby.com/blogs/creative-photography/best-lenses-2022
  27. Lensbaby公式ブログ「Introducing Twist 28 for Mirrorless Cameras」(2026年2月26日) https://lensbaby.com/blogs/creative-photography/introducing-twist-28-for-mirrorless-cameras
  28. Digital Camera World「Lensbaby is building a tiny pancake lens, with a twist」(2026年2月28日) https://www.digitalcameraworld.com/cameras/lenses/lensbaby-is-building-a-tiny-pancake-lens-with-a-twist-and-its-the-most-requested-lens-of-all-time
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