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テープから8K RAWまで——外部映像収録70年の歴史| MONITOR & RECORDER THE COMPLETE SERIES(2)

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MONITOR & RECORDER THE COMPLETE SERIES — Vol.02

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CANON EOS R50V + ATOMOS Ninja TX

すべての技術には「生まれた理由」がある。

外部モニター・レコーダーという機材も、突然空から降ってきたものではない。何十年にもわたる映像技術の進化の中で、「もっと高品質に記録したい」「もっと正確に映像を確認したい」というクリエイターの欲望と、それを阻む技術的・経済的な壁との格闘の歴史の中から生まれた必然の産物だ。

2008年にキヤノンがEOS 5D Mark IIをリリースしたとき、映像制作の世界は一夜にして変わったと言われる。しかしその変化は、じつは1956年から積み重なってきた70年の歴史が一気に花開いた瞬間でもあった。

本記事では、外部映像収録技術の70年を辿りながら、なぜATOMOSとBlackmagic Designという2社がこの世界で重要な存在になったのかを、歴史という文脈の中で理解していく。


MONITOR & RECORDER THE COMPLETE SERIES

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1956年:すべての始まり——Ampex VRX-1000の衝撃

外部記録という概念が誕生したのは、テレビ放送黎明期の1950年代だ。

当時、テレビ番組はすべてライブ放送だった。ニューヨークで収録した番組をロサンゼルスで時間差放送したくても、それを実現する手段がなかった。唯一の方法は「キネスコープ」——放送中のテレビモニターに向けて映画用フィルムカメラで撮影するという苦肉の策だったが、画質は著しく悪く、フィルム現像に数時間かかった。

その状況を根本から変えたのが、アメリカのAmpex Corporationだ。チャールズ・ギンスバーグ(Charles Ginsburg)率いる開発チームは、1956年4月に世界初の実用的な磁気テープビデオレコーダー「VRX-1000」を発表した。2インチ幅の磁気テープを高速回転するヘッドで読み書きするこの装置は、映像信号をリアルタイムで記録・再生することを初めて可能にした。

価格は1台5万ドル。当時の日本円に換算すれば億を超える金額だ。操作するには高度な訓練を受けたエンジニアが必要だった。それでもCBSが1956年11月30日に初めてこのシステムを使い、ニューヨークで収録したニュース番組を時間差でハリウッドから再放送することに成功したとき、放送業界は沸いた。「録画する」という行為が、映像の世界に革命をもたらした瞬間だ。

テレビ局はこの技術を競うように導入し、1950年代末から1960年代にかけて放送用ビデオレコーダーは急速に普及した。ただし対象はあくまで放送局という特殊な組織に限られており、映像を「外部に記録する」という行為は依然として数億円規模のインフラを必要とする行為だった。

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1970年代:Uマチックとベータマックス——記録が「小さく」なった時代

1971年、ソニーが業務用ビデオカセットレコーダー「Uマチック」を発売した。それまでのオープンリール式と異なり、テープがカセットに収まった形式は取り扱いが格段に簡単になり、学校や企業などでの業務用途に普及し始めた。

そして1976年、家庭用ビデオカセットの歴史に残る「フォーマット戦争」が始まる。ソニーが「ベータマックス」を、JVCが「VHS」をほぼ同時に発表したのだ。画質ではベータマックスが勝るとされたが、録画時間の長さとコストの安さでVHSが市場を制し、1990年代には事実上の標準となった。

この時代に重要なのは、映像を記録するという行為が「家庭レベルの予算」で可能になってきたという事実だ。まだ数十万円の機材が必要だったが、それまでとは桁が違った。映像は「放送局の専有物」から少しずつ解放され始めた。

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1995年:MiniDVという革命——デジタルが日常に降りてきた

VHS時代の映像はアナログ記録だった。コピーするたびに画質が劣化し、編集はリニア(テープを順番に再編集する方式)しかできず、コンピューターとの親和性はゼロに等しかった。

それを一変させたのが、1995年にソニーとパナソニックを中心とするメーカー連合が策定・発売したDV(Digital Video)規格、とりわけその家庭用フォーマット「MiniDV」だ。

MiniDVは1995年に登場した。ソニー、パナソニック、JVCなどの主要電機メーカーが協力して開発したDV規格に基づき、デジタル動画をコンパクトで手頃なデザインで記録可能にした技術革新だ。

7cm×5cmほどの小さなカセットに、なぜそれほどの価値があったのか。MiniDVは、VHS-CやHi8といったアナログフォーマットより高い映像解像度を実現した。NTSC方式で720×480ピクセル、PAL方式で720×576ピクセルのデジタル映像を記録でき、CDと同等の16bitリニアPCMデジタル音声も収録できた。

そして最も革命的だったのが、1999年ごろに本格普及したFireWire(IEEE 1394)接続だ。これによりMiniDVテープの映像をコンピューターに直接デジタル転送でき、Adobe PremiereやApple iMovieのような編集ソフトでノンリニア編集が可能になった。世代劣化なしに素材をコンピューターに取り込めるこのワークフローは、個人クリエイターやドキュメンタリー制作者に映像制作の力を与えた。

MiniDVはもともとアマチュア向けに設計されていたが、その高品質を評価したビデオジャーナリストやドキュメンタリー制作者たちがプロダクションでも活用し始めた。「映像制作の民主化」という言葉が初めて現実味を帯びた瞬間でもある。


2008年:5D Mark IIの衝撃——「フィルムの夢」が手の届く値段になった

MiniDVが映像制作の裾野を広げた後、HDV(Hi-Definition Video)という高解像度テープフォーマットを経て、2000年代中盤には固体メモリーへの記録が普及し始める。ソニーXDCAMやパナソニックP2といった業務用フォーマットが登場し、テープから「ファイル」への移行が進んでいった。

しかしこの時代の映像制作には、まだ越えられない壁があった。「映画的なボケ味」だ。

35mmフィルムの大きなフォームファクターがもたらす浅い被写界深度——あの映画のような前後ボケを伴う美しい映像は、家庭用ビデオカメラの小さなセンサーでは実現不可能だった。シネマカメラを持てるのは映画会社だけ。インディーフィルムメーカーや独立系のビデオグラファーには手が届かない世界だった。

その壁をぶち壊したのが、2008年のキヤノンEOS 5D Mark IIだ。フォトグラファーのためのスチルカメラとして設計されたこのカメラは、動画機能を「おまけ」のように搭載したのだが、その「おまけ」が映像制作の世界を根底から変えることになった。

EOS 5D Mark II 出典:キヤノンカメラミュージアム

ニコンD90が2008年に720p動画対応の初のDSLR(デジタル一眼レフカメラ)となり、5D Mark IIはそれに続いて世界初のフルHD動画記録DSLRとなった。5D Mark IIのフルサイズセンサーによる動画は、撮影者を映画史上もっとも象徴的なルックと同じ浅い被写界深度を実現する映像ツールへと変えた。これは「DSLRムービー革命」の始まりだった。

映像制作者ヴィンセント・ラフォーレ(Vincent Laforet)がこのカメラとCanonの大口径レンズで撮影した短篇映画「Reverie」が2008年10月末にオンラインで公開されると、映像制作の世界は度肝を抜かれた。「DSLRとしてよい」ではなく、自分の何倍もの値段のカメラと肩を並べる「本物の映画的な映像」だと気づいたのだ。

結婚式のビデオグラファーたちは突然、映画館に並ぶような映像を作れるツールを手にした。ドキュメンタリー作家は小型で目立たないカメラで低照度環境を撮影できるようになった。YouTubeクリエイターたちは従来のメディア制作に匹敵するクオリティの作品を、わずかな予算で作れるようになった。

しかし5D Mark IIには大きな問題もあった。映像は8bitの高圧縮H.264で記録され、1クリップ最大12分(1080p時)という制限があり、マニュアル露出コントロールも当初は不完全だった。何より、カメラ背面の小さな液晶では「自分が何を撮っているか」を正確に確認する術がなかった。

DSLRムービーというブームは、外部モニターと外部レコーダーへの強い需要を生み出した。そのニーズに答えるべく登場したのが、ATOMOSという企業だ。

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2011年:Atomos Ninjaの登場——外部レコーダー市場の誕生

DSLRムービーが持つ問題——カメラ内部の低品質な圧縮コーデック、短い録画時間制限、信頼性の低いモニタリング——は、映像制作者たちの共通の悩みだった。

この問題に正面から挑んだのが、2010年設立のATOMOSだ。創業者ジェロミー・ヤング(Jeromy Young)は、Apple、Avid、Pinnacle Systemsでの経験を持つ業界ベテランで、「カメラが外部に出力する信号を、高品質なコーデックで記録すれば、内部圧縮の壁を超えられる」という着想のもと、最初の製品開発に取り組んだ。

2011年、ATOMOSはNinjaを発売した。価格は995ドル(当時の為替レートで約8万円)。この製品が革命的だったのは、技術仕様だけではなく「価格」にあった。

当時、外部レコーダーといえばAJAのKi Pro Mini(約2,000ドル)やConvergent DesignのNanoFlash(約3,000ドル)が主な選択肢だった。これらはプロの放送現場向けの製品で、一般のビデオグラファーが購入するには敷居が高かった。

Ninjaはその半額以下で、以下を実現した。

ProRes 10bit 4:2:2記録:カメラのHDMI出力から信号を取り出し、Apple ProRes(HQ/422/LT/Proxy)形式で記録する。カメラ内部の8bit 4:2:0記録と比べて色情報が大幅に豊かになり、カラーグレーディングへの耐性が飛躍的に向上した。

無制限の録画時間:2.5インチのHDDやSSDに記録するため、カメラのファイルサイズ制限や30分制限を受けない。容量の許す限り連続録画できた。

タッチスクリーン式モニター:5インチのタッチスクリーンLCDを搭載し、フォーカスピーキングやゼブラパターンといったモニタリングツールを提供した。

「外部から記録する」という発想自体は新しくなかったが、ATOMOSはそれを「一般の映像制作者が買える価格帯」で提供した。これが外部レコーダーというジャンルを、プロ専用の高級機材から「ビデオグラファーの標準装備」へと変えた出発点だ。


2012〜2014年:4K前夜の混乱と成熟

Ninjaの成功を受けて、ATOMOSは製品展開を加速させた。2012年にNinja IIを発売し、2013年にはSamurai Blade(SDI入力対応)を追加。しかし真のゲームチェンジャーは、2014年に登場したShogunだった。

ShogunはATOMOSとして初めて4K記録に対応した製品だ。7インチの1920×1200タッチスクリーンを搭載し、HDMI 2.0と12G-SDI入力を備え、UHD 4K(3840×2160)を最大30fpsで、Full HD(1920×1080)を最大120fpsで10-bit 4:2:2のProRes HQ/422/LTおよびAvid DNxHDで記録できた。

Shogunのもうひとつのエポックメイキングとなった機能が、CinemaDNG RAWのSDI記録対応だ。ソニーFS700やFS7など、特定のシネマカメラからのRAW出力をShogunで記録できるようになった。これは外部レコーダーにおける「RAW記録」の最初の実用的な形だった。

同じ2015年、Blackmagic Designが外部モニター・レコーダー市場に参入した。Video Assistの発売だ。初代Video Assistは5インチ1080p対応モデルで価格は495ドル。Ninjaの普及価格に対してさらに一段安い設定で、市場は急速に価格競争とコモディティ化が進む。しかしこの参入により、外部レコーダーはもはやニッチな機材ではなく「あって当然の機材」として認識されるようになった。


2016〜2018年:4K時代の本格化とHDR元年

2016年、Blackmagic DesignはVideo Assist 4Kを発売した。7インチの1920×1200ディスプレイを搭載し、UHD 4K 30pまでの10-bit記録に対応。SDカードへの記録という手軽な仕様が受け入れられ、特にDaVinci Resolveユーザーからの支持を集めた。

同年から翌年にかけて、映像業界ではHDR(High Dynamic Range)が急速に注目を集め始める。ネットフリックスやAmazon Prime Videoによる4K HDRコンテンツの配信が始まり、制作現場でもHDRモニタリングへの対応が求められるようになった。ATOMOSは2017年にShogun Infernoを発売し、1500nitの高輝度ディスプレイとHDRモニタリング機能を搭載。「現場でHDR映像をリアルタイムに確認する」という新しいニーズに答えた。

2018年、ATOMOSはNinja Vを発売する。5.2インチ・1000nitのディスプレイと、本体のコンパクトさを維持しつつ4K 60pまでのProRes収録に対応したこのモデルは、その後数年間にわたって外部モニター・レコーダーの事実上の標準製品となる。価格は695ドル。軽量・コンパクト・高品質・手頃な価格という要素が揃い、ミラーレス一眼ユーザーを中心に爆発的に普及した。

同じ2018年、外部記録の歴史において非常に重要な出来事が起きた。Appleが新しいRAWフォーマット「ProRes RAW」を発表したのだ。AppleはFinal Cut Pro X 10.4.1と同時にこのフォーマットを発表し、ATOMOSはShogun InfernoとSumo 19向けに無償ファームウェアアップデートを即座に提供した。RAW記録の新しい時代が始まろうとしていた。


2019年:RAW over HDMI——歴史が変わった日

2019年は、外部レコーダーの歴史において特別な年だ。

それまでRAW記録は、SDIを経由したシネマカメラ専用の機能だった。ミラーレス一眼の一般的な接続端子であるHDMIは帯域幅が低く、RAW信号を伝送するには不十分と考えられていた。

その常識を覆したのが、ATOMOSとニコンのパートナーシップだ。2019年のCESで、ニコンZ 6とAtomosのNinja VがHDMI経由でのProRes RAW記録に対応することが発表された。実際のファームウェアアップデートは同年12月に提供され、手頃な価格のミラーレス一眼で初めて本格的なRAW記録が可能になった。

これは業界を驚愕させた。数百万円のシネマカメラでしか実現できなかったRAW記録が、30万円台のミラーレス一眼と10万円の外部レコーダーの組み合わせで可能になったのだ。

その後、ソニー、キヤノン、パナソニック、富士フイルムなど主要カメラメーカーが次々とProRes RAW(ATOMOSとの協業)またはBlackmagic RAW(Blackmagic Designとの協業)への対応を表明し、「ミラーレス一眼+外部レコーダーでRAW収録」というワークフローが技術的に成立するようになった。

また同年、Blackmagic DesignはBlackmagic RAW(BRAW)を独自のフォーマットとして強力に推進し始める。DaVinci Resolveとの完全統合という強みを武器に、特にBlackmagic Pocket Cinema Cameraユーザーを中心にBRAWは浸透していった。


2020〜2021年:ミラーレスの内部収録が外部レコーダーに追いついた

しかしここで、外部レコーダー市場にとって予想外の「敵」が現れる。カメラメーカー自身の進化だ。

2020年に発売されたソニーα7S IIIは、内部で4K 4:2:2 10bitを記録でき、XAVC S-I(All-Intra)を選べば最大600Mbpsの高ビットレートで収録できた。録画時間の制限も事実上撤廃された。

続いて2021年にはソニーFX3、2022年には富士フイルムX-H2s、2023年にはパナソニックLUMIX S5 IIが内部ProRes記録に対応した。カメラメーカーは、それまで外部レコーダーが担っていた「高品質コーデックでの記録」を、本体に内蔵し始めたのだ。

外部レコーダーが「内部記録の限界を超えるための道具」として存在していた時代が、ここで大きく変わり始めた。

2021年、ATOMOSはNinja V+を発売する。新しいAtomIC3チップを搭載し、キヤノンEOS R5との組み合わせで8K 30p ProRes RAW記録を実現。8Kという次のフロンティアへの進出を宣言した。Blackmagic Designも同時期にVideo Assist 12G HDRシリーズを大幅アップデートし、12G-SDI対応と2500nitの超高輝度ディスプレイを搭載したモデルを投入した。


2022〜2025年:クラウド統合と8K——新たな価値軸を模索する時代

外部レコーダー市場は「記録品質の向上」だけでは差別化できなくなってきた2022年以降、両社はそれぞれ異なる方向で製品の価値を再定義しようとする。

ATOMOSはAtomos Cloud Studioを発表し、「撮影しながらクラウドにプロキシを転送する」という新しいワークフローを提案した。現場で収録した素材を、撮影終了を待たずに世界中の編集者やクライアントが確認できる環境——これはパンデミックが加速させたリモートワークフロー需要に応えるものだった。

2023年にはNinjaNinja Ultraの新シリーズを発表。これは初代Ninjaへのオマージュとも言える製品名への回帰で、AtomOS 11という完全リニューアルされたオペレーティングシステムを搭載し、H.265の標準サポートやEL Zoneなど新しい露出モニタリングツールを装備した。

そして2024年のIBCショーでは、Shogun Ultraを発表。7インチ・2000nitの高輝度ディスプレイ、Wi-Fi内蔵によるCamera-to-Cloud、NDI TX対応、最大8K ProRes RAW対応と、ATOMOSが蓄積してきた技術の集大成とも言える製品になった。

Blackmagic Design側では、DaVinci Resolveのバージョンアップが年々機能を充実させ、AIによる自動字幕、Magic Mask、スーパースケールなど映像制作の自動化・高度化が急速に進んだ。そして2025年、DaVinci Resolve 20.2がついにProRes RAWに正式対応したことで、ATOMOSとBlackmagic Designを隔てていた「ソフトウェアの壁」がついに取り除かれた。

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70年の歴史が示すパターン:「壁を壊す者」が時代を作る

外部映像収録の70年を振り返ると、技術の進歩に一貫したパターンが見えてくる。

「プロだけが持てた技術を、もっと多くの人が使えるようにする」という力が、常に市場を動かしてきた。

Ampexが放送局に磁気テープ記録を届けた。ソニーとパナソニックがMiniDVで個人映像制作にデジタル時代をもたらした。キヤノンの EOS 5D Mark IIが映画的映像を数十万円のカメラで実現した。ATOMOSが外部RAW記録を100万円以下で可能にした。そしてBlackmagic Designが、業務用カラーグレーディングを無料で開放した。

年代出来事壊した壁
1956年Ampex VRX-1000発売映像記録を「生放送のみ」から解放
1971年ソニーU-matic発売ビデオ記録を業務レベルに普及
1976年VHS・Betamax登場映像記録を家庭レベルに普及
1995年MiniDV規格登場映像をデジタルデータに変え、PCで編集可能に
2008年Canon 5D Mark II発売映画的映像を民生機で実現
2011年Atomos Ninja発売外部ProRes記録を1万ドル以下で実現
2014年Atomos Shogun発売4K外部記録とSDI RAW対応
2018年ProRes RAW・BRAW発表圧縮RAW記録を実用化
2019年HDMI経由ProRes RAW実現ミラーレス一眼でのRAW収録を解禁
2025年DaVinci Resolve ProRes RAW対応7年越しのソフトウェア障壁が解消

この表を見ると、一つの流れが見えてくる。技術の「民主化」は直線的には進まない。革命的な製品が登場するたびに新しいボトルネックが生まれ、そのボトルネックを突破する次のイノベーションを誰かが生み出す——そのくり返しが歴史を作ってきた。


現在地と、これからの問い

2025年現在、外部モニター・レコーダー市場はある意味「成熟期」に入っている。

RAW記録も、4K 60pも、HDRモニタリングも、クラウド転送も——かつては夢だった機能が、今や10〜15万円の製品で当たり前のように使える。ATOMOSもBlackmagic Designも、もはや「次の解像度」「次のコーデック」だけで差別化を語れなくなってきた。

その中で両社は、それぞれの方向で「次の価値」を定義しようとしている。ATOMOSはクラウド統合とワイヤレスワークフローの方向へ、Blackmagic Designは垂直統合エコシステムの深化とAI活用の方向へ。

この「次の価値」の模索が、映像制作の未来を決める。

その話は第7回(最終回)まで続く。まずは次回、ATOMOSという企業の全貌を深く掘り下げていこう。


次回予告:【第3回】ATOMOSのすべて——製品ラインナップ、思想、そして「オープン接続」という戦略

MONITOR & RECORDER THE COMPLETE SERIES は全7回の連載記事です。


MONITOR & RECORDER THE COMPLETE SERIES


この記事で登場した主な製品・キーワード

Ampex VRX-1000、U-matic、VHS、Betamax、MiniDV、FireWire(IEEE 1394)、Canon EOS 5D Mark II、DSLRムービー革命、Atomos Ninja(初代)、Atomos Shogun、Blackmagic Design Video Assist、CinemaDNG、ProRes RAW、Blackmagic RAW(BRAW)、Ninja V、Ninja V+、Ninja Ultra、Shogun Ultra、Video Assist 12G HDR、Atomos Cloud Studio

参考記事・文献

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