※当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

デジタル一眼レフ以前のサムヤン——OEMとミラーレンズの時代(1972〜2007)| サムヤン(SAMYANG Optics)——韓国が生んだレンズメーカーの半世紀と、その先(2)

未分類
※当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。 記事内のリンクから商品を購入すると、当サイトに紹介料が支払われる場合があります。

サムヤン(SAMYANG Optics)——韓国が生んだレンズメーカーの半世紀と、その先

1972年。前年には日本でニコンF2が発売され、キヤノンがF-1でプロ市場に本格参入したばかりの時代。韓国の慶尚南道馬山市(現・昌原市)では、一人の起業家が「コリア・ワコー株式会社(Korea WAKO Co., Ltd.)」を設立した。これがサムヤンの原点である。


創業——コリア・ワコーとして(1972年)

サムヤンの前身は、1972年9月6日に設立された「コリア・ワコー株式会社」である。社名に含まれる「WAKO」の由来について公式な説明は少ないが、当時の韓国製造業においては日本企業との技術提携やOEM関係が一般的であったことから、日本の光学関連企業との何らかの関係が推察される。

設立当初から、同社はSLRカメラ用の交換レンズの製造を開始した。ただし、この時期のサムヤンが自社ブランドで広く知られることはほとんどなかった。その理由は、同社のビジネスモデルがOEM(相手先ブランド製造)を中核としていたためである。


OEM時代——「Made in Korea」のレンズたち

1970年代から2000年代初頭にかけて、サムヤンは数多くのブランド向けにレンズを製造した。その出荷先は驚くほど多岐にわたる。

主なOEM供給先とブランド

  • シアーズ(Sears): アメリカの大手百貨店チェーン。「Made in Korea」と刻印されたシアーズブランドのレンズは、すべてサムヤン製であった
  • アルバイナー(Albinar): アメリカのBest Products社が自社チェーンで販売するカメラ用品ブランド。1980年代前半のアルバイナーレンズはサムヤンが韓国で製造していた
  • JCPenney: アメリカの大手百貨店向けにもレンズを供給
  • ワリメックス(Walimex): ドイツのFoto Walser社のブランド。「Walimex, made in Korea」はサムヤン製
  • ポーラー(POLAR): 1980年代に韓国国内で販売されたサムヤン自社ブランド。コストパフォーマンスの高い交換レンズとして韓国で人気を博した

このほか、ビビター(Vivitar)、フェニックス(Phoenix)、クァンタレイ(Quantaray)といったブランド名でもサムヤン製レンズが販売されていた。


ミラーレンズ——サムヤンの代名詞

この時代のサムヤンを語るうえで欠かせないのが、反射望遠レンズ(ミラーレンズ) の存在である。

特にT-マウント仕様の500mm F8ミラーレンズは、さまざまなブランド名で世界中に出荷され、「Made in Korea」の反射望遠レンズといえばサムヤン製、という図式が成り立つほどであった。ミラーレンズだけでも500mm F8、EDガラスを採用した500mm F6.3 DX、そして800mm F8といったバリエーションが存在した。また、ミラーレンズではないが、同じT-マウント仕様の屈折式超望遠ズームレンズとして650-1300mm F8-16もラインナップされていた。

ミラーレンズは、屈折レンズに比べて大幅にコンパクト・軽量に設計でき、超望遠域を手軽に体験できるという利点がある。画質面では一般的な屈折式望遠レンズに劣るものの、その圧倒的なコストパフォーマンスから、天体写真や野鳥撮影の入門用として多くのフォトグラファーに愛用された。

T-マウントはアダプターを介してほぼすべてのSLRカメラに装着可能であり、これがサムヤンのOEMビジネスとの相性の良さを生んでいた。マウントごとにレンズ設計を変える必要がなく、アダプターだけを変えれば良いからだ。


1979年——「サムヤン」の誕生

創業から7年後の1979年、コリア・ワコーは社名を「サムヤン光学工業株式会社(Samyang Optical Co., Ltd.)」に変更する。これが「サムヤン」ブランドの始まりである。

なお、韓国には「サムヤン」の名を冠する企業が複数存在する。ブルダック炒め麺(불닭볶음면)で知られるサムヤン食品(Samyang Foods)や、繊維・化学のサムヤンサ(三養社)、GSグループ傘下のサムヤン交易などがあるが、いずれもLKサムヤンとは無関係の別企業である。


輸出立国——韓国経済の波に乗る

1970〜80年代の韓国は、朴正煕大統領の「輸出立国」政策の下、製造業の輸出拡大が国策として推進されていた。サムヤンもこの潮流に乗り、急速に海外輸出を拡大していく。

  • 1981年: 輸出額1000万ドル突破(外国貿易協会より表彰)
  • 1984年: 附設研究所を設立。輸出額2000万ドル突破(外国貿易協会「産業包装・2000万ドル輸出の塔」受賞)
  • 1989年: 銅塔産業勲章を受章
  • 1993年: 大統領賞を受賞(科学技術振興協会)

従業員130名程度の中小企業でありながら、着実に輸出実績を積み上げていった姿は、当時の韓国製造業の縮図でもある。


AFレンズとカメラ本体への挑戦

1980年代後半から1990年代にかけて、SLRカメラのオートフォーカス化が急速に進む。サムヤンもこの流れに対応し、ミノルタ/ソニーAマウント、ニコンAF、キヤノンEOS、ペンタックスKAF向けのAFズームレンズを製造した。

主なAFズームレンズ:

  • AF 28-70mm F3.5-4.5
  • AF 28-200mm F4-5.6
  • AF 35-70mm F3.5-4.5
  • AF 35-135mm F3.5-4.5
  • AF 70-210mm F4-5.6

これらは自社ブランドではなく、主にOEM向けに供給された廉価ズームレンズであった。この時期のサムヤンはあくまで「他社ブランドの裏方」としての役割が中心であり、光学性能で高い評価を得るような製品は少なかった。

また、NamuWikiによれば、サムヤンは1980年代にオートカメラ(コンパクトカメラ)、双眼鏡、偏光顕微鏡なども製造していたとされる。レンズ専業メーカーというよりは、光学技術を軸にした総合的な製造業者であった。


CCTVレンズ事業と精光(Seikou)との合併

2000年代に入ると、サムヤンは成長市場であったCCTV(監視カメラ)用レンズの分野にも参入する。

  • 2001年: CCTVレンズ(550、2810、358シリーズ)を発売
  • 2002年: ISO 9001認証取得。新本社・新工場を建設。社名を「サムヤンオプティクス株式会社(Samyang Optics Co., Ltd.)」に変更。精密技術振興賞(商工エネルギー省)を受賞
  • 2003年: 部品素材専門企業認定を取得
  • 2004年: 日本のCCTV光学機器メーカー・精光(Seikou)と合併
  • 2005年: ISO 14001(環境マネジメント)認証取得
  • 2006年: CCTVメガピクセルレンズ、ハイブリッド非球面レンズ、プラスチック非球面レンズを発売

この時期のサムヤンは、SLRカメラ用レンズのOEM生産とCCTVレンズの2本柱で事業を展開していた。しかし、SLR市場ではタムロンやシグマといった日本のサードパーティメーカーが圧倒的な存在感を放っており、サムヤンが自社ブランドで大きなシェアを獲得することは難しかった。


経営危機——上場廃止と再出発

2010年代初頭、サムヤンは深刻な経営危機に直面する。

NamuWikiの記述によれば、2011年10月、関連会社への金融融資に関する開示義務の不履行により株式の取引が停止。取引再開後も開示規定への不適合を理由に管理銘柄に指定された。最終的に有償増資、その後の有償減資を実施するに至った。

当時のサムヤンオプティクスは、光学レンズ事業のほかに配送業など他業種にも手を広げていた。この中で、中核事業である光学レンズ部門が新法人として物理的に分割(スピンオフ)され、旧法人(SY Corporation)は自主的に上場廃止となった。

2013年8月、スピンオフされた新法人「サムヤンオプティクス」は、プライベート・エクイティ・ファンドのVIGパートナーズ(ボゴファンド)に買収される。この買収が、サムヤンの歴史における大きな転換点となった。


この時代のサムヤンを振り返って

1972年から2007年までの約35年間、サムヤンはOEM製造と廉価レンズの供給を軸に事業を営んできた。この時期の同社の製品を使った経験を持つフォトグラファーは多いはずだが、その多くは「サムヤン」の名前を意識していなかったであろう。シアーズのレンズ、アルバイナーのレンズ、ワリメックスのレンズ——それらの「正体」がすべて韓国・馬山の工場で作られていたことを知る人は、当時それほど多くなかったはずだ。

しかし、このOEM時代に蓄積された光学設計・製造のノウハウこそが、次の章で述べる2008年以降の「サムヤン・ルネサンス」の礎となるのである。


サムヤン(SAMYANG Optics)——韓国が生んだレンズメーカーの半世紀と、その先

ガイドページ

  1. サムヤン(SAMYANG)・ロキノン(Rokinon)とは何か
  2. デジタル一眼レフ以前のサムヤン——OEMとミラーレンズの時代(1972〜2007)
  3. デジタル一眼レフ時代のサムヤン——高品質MFレンズへの転身(2008〜2015)
  4. ミラーレス時代のサムヤンとAFレンズへの参入(2016〜現在)
  5. 中華レンズとの競合——サムヤンが切り拓いた道と新たな挑戦者たち
  6. 欧米市場におけるサムヤンのプレゼンス——ロキノン、バウアー、そしてLKサムヤンへ
  7. なぜ韓国にはカメラ関連企業が少ないのか

典拠

  1. LK Samyang 公式ウェブサイト — History(https://www.lksamyang.com/en/about/history.php)
  2. Wikipedia — “LK Samyang”(https://en.wikipedia.org/wiki/LK_Samyang)
  3. NamuWiki — “LK삼양”(https://en.namu.wiki/w/LK삼양)
  4. Camera-wiki.org — “Samyang”(https://camera-wiki.org/wiki/Samyang)
  5. Camerapedia — “Samyang”(https://camerapedia.fandom.com/wiki/Samyang)
  6. ePHOTOzine — “A Golden Anniversary – 50 Years Of Samyang”(https://www.ephotozine.com/article/a-golden-anniversary—50-years-of-samyang-36151)
  7. Scott Bradford — “JCPenney, Polar, Samyang, Oh My”(https://www.scottbradford.us/2025/03/02/jcpenney-polar-samyang-oh-my/)
  8. Popular Photography, November 9, 1994(Samyang AF zoom lenses reference via Wikipedia)
  9. dyxum.com — Samyang 28-70mm F3.5-4.5 AF / Samyang 70-210mm F4-5.6 AF(via Wikipedia)
  10. 한겨레(ハンギョレ)— サムヤン POLARブランドに関する記事(https://www.hani.co.kr/arti/specialsection/esc_section/459719.html)
タイトルとURLをコピーしました