MONITOR & RECORDER THE COMPLETE SERIES — Vol.06

ここまでの5回で、かなりの知識が積み上がった。
ATOMOSとBlackmagic Designの企業思想、両社の製品ラインの詳細、外部RAW収録が普及しなかった理由、そして10bit Log内部収録という現実解——これらの情報は、製品選択の「素材」だ。しかし素材があるだけでは料理はできない。最後に必要なのは「自分の現場に当てはめる」という作業だ。
本記事はシリーズ中で最も実践的な内容を扱う。撮影ジャンル別・ユースケース別に、ATOMOSとBlackmagic Designの製品がどう機能するかを具体的に比較する。予算シミュレーション、機材の組み合わせ提案、そして「どちらか一方だけを選ぶ必要はない」という視点まで、現場のリアルに即した判断材料を提供する。
まず一点、前提として確認しておきたい。この比較は「どちらが優れているか」を決めるためのものではない。あなたの仕事の性質に対して「どちらがより合っているか」を考えるための補助線だ。
MONITOR & RECORDER THE COMPLETE SERIES
- 第1回:モニター&レコーダー入門——なぜ外部レコーダーが必要なのか
- 第2回:テープから8K RAWまで——外部映像収録70年の歴史
- 第3回:ATOMOSのすべて——「カメラに依存しない」オープン接続の思想
- 第4回:Blackmagic Designのすべて——「映像制作の民主化」を垂直統合で実現する稀有な企業
- 第5回:ProRes RAW・BRAW・内部収録——RAW収録は本当に必要か? 現場のコーデック選択を解剖する
- 第6回:あなたのワークフローに最適な機材はどちらか——ATOMOS vs Blackmagic Design、現場別徹底比較
- 第7回:映像制作の未来はどこへ向かうのか——AI・クラウド・8Kが変えるモニター・レコーダーの役割
ケース① ブライダル・ウェディング映像
現場の特性:再撮影が絶対に不可能。長時間の連続記録が必要。複数カメラ(多くは2〜4台)。機動性が必要。クライアントへの高品質な納品が求められる。感動的なシーンを取り逃してはならない。
ATOMOSが力を発揮する理由
ブライダル撮影でATOMOSが選ばれる最大の理由は、UltraSync BLUEによるワイヤレスタイムコード同期だ。式場内の複数カメラマンが離れた位置に散らばる中、Bluetooth経由で全カメラに同一タイムコードを流すことで、撮影後の編集が劇的に効率化される。「2〜3台のカメラで撮影した後の同期作業が苦痛だったが、UltraSync BLUEの導入後は編集時間が半分以下になった」——これはブライダルビデオグラファーからよく聞かれる声だ。
Ninja Ultraの1000nit高輝度ディスプレイは、式場の白い空間や屋外チャペルでのモニタリングにも実力を発揮する。LUTプレビュー機能でS-Log3をリアルタイムに変換表示しながら撮影できるため、「帰って見たら色が思ったと違った」というリスクを大幅に減らせる。
記録メディアがSSDというのも長時間ロケでは利点だ。Ninja Ultraに2TB SSDを入れれば、ProRes 422 HQで数時間の連続収録ができ、メディア交換の回数を最小化できる。
想定構成(ブライダル・ATOMOSメイン)
- メインカメラ(ソニーα7S IIIまたはFX3)× 2台 + Ninja Ultra × 2台
- サブカメラ(DJIドローン or ソニーFX30) × 1台
- UltraSync BLUE × 1〜2個(全カメラにタイムコード同期)
- 外部記録:ProRes 422 HQ(4K 60p)
Blackmagic Designが選ばれる状況
Blackmagicを選ぶブライダルビデオグラファーは、DaVinci Resolveでのグレーディングを最優先する場合が多い。BMPCC 6Kを使い、BRAWで撮影してDaVinci Resolveで仕上げる流れは、映画的な深みのある色調を比較的短い時間で再現できる。
ただし、ブライダル撮影でBRAWが本領を発揮するにはBlackmagicカメラが前提となる点、そして機材の重量増と予備バッテリーの管理コストは覚悟が必要だ。
判定:ブライダル撮影ではATOMOSが一歩リード。ワイヤレスタイムコード同期の実用性、長時間SSD収録、そして使い慣れたソニー・キヤノンカメラとの連携という観点で、ATOMOSのオープン性が現場の実態に合っている。Blackmagicが勝るのは「BMPCC + BRAW + DaVinci Resolveで映画的グレーディングにこだわる」ケースに限られる。
ケース② 企業VP・コーポレートビデオ・インタビュー収録
現場の特性:クライアント同席が多い。複数のカメラアングル(通常2〜3台)。インタビュー収録では長回しが発生する。プロフェッショナルな映像品質と、迅速な納品スピードが求められる。
ATOMOSのアプローチ:クライアントを「現場に参加させる」
企業VPの現場でATOMOSが持つ強みのひとつは、Camera-to-Cloud(C2C)機能だ。Ninja TXやNinja TX GO、またはShogun UltraにWi-Fi経由でCamera-to-Cloud接続すれば、撮影しながらプロキシをFrame.ioへ自動転送できる。
インタビュー収録の30分後に、離れた場所にいるディレクターやクライアントがスマートフォンでFrame.ioを開き「3テイク目の発言が一番良かった」とコメントできる——このリモートディレクション環境を、現場1台のAtomosデバイスで構築できる。東京で撮影した映像を大阪のクライアントがリアルタイムで確認し、方向性の修正指示を当日中に受け取れるというスピードは、商業案件の競争力に直結する。
複数カメラのマルチカム収録では、UltraSync BLUEがここでも力を発揮する。Aカメラ(正面)・Bカメラ(サイド)・Cカメラ(引き)の3台に同一タイムコードが流れれば、編集ソフトのマルチカム機能で即座に整列する。
Blackmagic Designのアプローチ:「毎回同じ品質を、確実に」
定期的なコーポレートコンテンツ制作(月次の社内報動画、週次のセミナー収録、定期的なYouTubeチャンネル更新など)では、Blackmagicのエコシステムが持つ「テンプレート型の効率」が光る。
ATEM Mini Pro ISOを使ったマルチカム収録では、4台のカメラをリアルタイムでスイッチングしながら、全入力のISO素材とプログラム出力を同時記録できる。「初めて、ライブプロダクションがポストプロダクション編集ワークフローに完全統合された。ISOファイルとカメラファイル、どちらも使える。RAWフィルムワークフロー、ポストプロダクションワークフロー、ライブプロダクションワークフローがすべて初めて完全に統合された」とGrant Pettyが語ったATEM Mini Pro ISOの魅力は、定期案件でのルーティン化に最も適している。
DaVinci Resolveが保存するプロジェクトファイルにより「1クリックで前回と同じグレーディング環境が再現される」という体験は、毎回一から設定するストレスを消してくれる。クライアントが気に入った色調を「このプロジェクトファイルそのまま使う」という形で継続できる。
判定:用途によって分かれる。C2Cによるリモートディレクションや柔軟なカメラ選択が重要なら→ATOMOS。定期案件のルーティン化と撮影から編集までの効率最大化が目標なら→Blackmagic Design。
ケース③ YouTube・SNS・個人コンテンツ制作
現場の特性:ほぼ一人での撮影・編集。機動性と手軽さが最優先。定期更新のスピードが収益に直結する。予算を抑えたい。
「外部レコーダーそのものが不要なケースが多い」という現実
率直に言う。YouTubeやSNS向けのソロコンテンツ制作では、ATOMOSもBlackmagic Designも「外部モニター・レコーダーとして必須」とは言えない。ソニーα7 IVやZV-E1など現行のカメラは内部で10bit 4:2:2を記録でき、画質的に外部レコーダーなしでも十分なケースがほとんどだ。
それでも外部機材を加える意味があるとすれば、「モニタリングの精度向上」だ。
AtomosのShinobi II(外部モニター専用・$379 / ¥56,320 税込)は、カメラ背面の小さな液晶に頼らない正確なフォーカス確認・露出確認・LUTプレビューを提供する。カメラの記録は内部に任せながら、画面だけ外部モニターで管理するというシンプルな使い方で、コストパフォーマンスが高い。
Blackmagic DesignのBlackmagic Video Assist 5″ 12G(¥99,800 税込)は、同等の機能に加え2500nitの高輝度ディスプレイを提供する。屋外ロケが多いクリエイターには、この輝度差が体感的に大きな差になる。
また、YouTubeチャンネルでライブ配信も行うなら、ATEM Miniシリーズが一気に選択肢として浮上する。
ライブ配信をするYouTuber向けの現実解
ATEM Mini Pro(¥48,980 税込)は、4系統のHDMI入力をリアルタイムで切り替え、Ethernet経由でYouTube Liveへの直接配信、そしてUSBドライブへの収録が可能だ。ゲスト2人を招いたトーク番組形式の収録なら、Aカメラ(ホスト)、Bカメラ(ゲスト正面)、Cカメラ(引き)、Dチャンネル(スライドや動画素材)を1台で管理できる。
「スタジオ感のあるYouTubeチャンネルを低予算で作りたい」という需要に対し、ATEM Miniはこの価格帯では圧倒的な機能を持つ。DaVinci Resolveとの自動連携(収録後すぐにResolveのプロジェクトとして開ける)は、編集作業のスタートを大幅に早める。
判定:ソロコンテンツ制作のモニタリング用途→Shinobi IIまたはVideo Assist 5インチのどちらでもよい(予算と輝度の好みで選ぶ)。ライブ配信も組み合わせる場合→ATEM Mini + DaVinci ResolveというBlackmagicの選択が合理的。
ケース④ ライブイベント・セミナー・配信収録
現場の特性:マルチカメラが必須。スイッチングと収録を同時に行う必要がある。機材コストを抑えたい。一人または少人数のスタッフで完結させたい。
「一人マルチカム」の現実解を2社で比較する
この用途こそ、両社の製品哲学の違いが最も鮮明に出るケースだ。
ATOMOSの答え:Sumo 19SE
Sumo 19SE(¥321,750 税込)は、19インチのモニター・レコーダー・スイッチャーを1台に統合する。4チャンネルのカメラをISO同時記録しながらリアルタイムスイッチングができ、切替メタデータがXMLで書き出されてNLEの編集叩き台になる。非同期スイッチングにより、GenlockなしのカメラやiPhoneすら混在使用可能というオープン性も特徴的だ。
「一人でカメラも切り替えも管理したい」という現場での利点は明確だ。Sumo 19SEの大型スクリーンを操作しながらのライブスイッチングは、専用スイッチャー+モニターセットに比べて設置・撤収の時間を大幅に短縮できる。
Blackmagicの答え:ATEM Miniシリーズ
より小規模な現場、特に予算を抑えたい場合はATEM Miniシリーズが有力だ。ATEM Mini Pro ISO(4系統HDMI・¥82,980 税込)収録後にResolveで開けば、ライブスイッチングで作った編集が叩き台として読み込まれ、細部の修正が即座に始められる。
さらに大きな現場ではATEM Mini Extreme ISO G2(8系統入力・¥332,800 税込)が選択肢に入る。2025年4月発表のG2モデルは、Thunderbolt接続によるDaVinci Resolveライブ入力・再生、CFexpress内蔵スロット、10G Ethernet、XLRバランス入力、3系統の独立HDMI出力を備え、旧モデルから大幅に機能強化された。ATEM製品の強みは「Blackmagicカメラとの連携でカメラコントロール(ISO・絞り・フォーカス)をスイッチャーから行える」点で、少人数での複数カメラ管理を省力化できる。
コスト比較
| セットアップ | 概算コスト | 入力数 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| ATEM Mini Pro ISO | ¥82,980 税込 | 4系統 HDMI | 小規模セミナー・配信 |
| ATEM Mini Extreme ISO G2 | ¥332,800 税込 | 8系統 HDMI | 中規模イベント・発表会 |
| Atomos Sumo 19SE | ¥321,750 税込 | 4系統 HDMI/SDI | 中規模イベント・ISO収録重視 |
判定:予算を抑えて小〜中規模のライブ配信・セミナー収録→ATEM Mini Pro/Extreme ISO。中規模以上で19インチの大型モニタリング画面とISO収録の精度を優先、かつカメラが混在する環境→Sumo 19SE。
ケース⑤ ドキュメンタリー・報道・フィールドワーク
現場の特性:予測不能な状況に対応できる機動性が最優先。軽量・シンプル・堅牢性が必要。バッテリーの持続時間が重要。長時間撮影が発生する。
このケースは、外部モニター・レコーダーの「重さと複雑さ」がデメリットとして際立つジャンルだ。
ATOMOSの選択肢:軽量を突き詰めるShinobi IIか、録画も欲しいならNinja
ドキュメンタリーや報道では、そもそも外部レコーダーを持ち込むかどうかの判断から始まる。カメラ本体の内部収録(10bit Log)で十分な品質が得られる現在、外部レコーダーはリスクと重量を増やす面もある。
「外部モニターとしての恩恵だけ受けたい」というニーズには、Shinobi II($379 / ¥56,320 税込)が答える。録画機能なしで軽量・低コスト。フォーカスピーキングや波形モニターで撮影の精度を上げながら、記録はカメラ内に任せる。バッテリーはカメラと独立しているため、モニター側の電力消費が課題になるが、小型モバイルバッテリーで対処できる。
「バックアップ収録も確保したい」ならNinja(¥96,690 税込)。内部収録しながらNinjaにProRes 422 HQでも収録することで、2系統のバックアップが確保できる。特に「この瞬間は絶対に失敗できない」というシーンの前にだけ接続するという運用も現実的だ。
Blackmagic Designの選択肢:ドキュメンタリーにこだわりがあるならBMPCC
映画的な映像表現を追求するドキュメンタリー制作者にとって、BMCC 6Kは依然として強力な選択肢だ。BRAW内部収録とDaVinci Resolveの組み合わせは、コスト対画質で代替が難しい領域に位置する。外部レコーダーを使わず、本体だけで完結するシンプルさも、フィールドワークに向いている。
Video Assist 12G HDRをフィールドで使う場合は、SDカードへの記録という仕様が長時間撮影での運用を楽にする。手持ちのカメラのSDカードと規格を共通化できれば、メディア管理の手間が減る。
判定:機動性・軽量を最優先→Shinobi II(モニターのみ)で内部収録と組み合わせる。バックアップ収録も確保したい→Ninja。映画的グレーディングを最優先するドキュメンタリー→BMPCC + BRAW内部収録。
ケース⑥ ウェビナー・ハイブリッドイベント・企業配信
現場の特性:会場参加者とオンライン参加者を同時にカバー。IPベースの映像伝送が求められる。柔軟なカメラ接続が必要。安定性・冗長性が最優先。
このケースでは、ATOMOSのNDI対応機能が他にない価値を発揮する。
第3回で詳述したとおり、Ninja TX($999 / ¥161,150 税込・NDI HX3内蔵)やNinja TX GO($799 / ¥132,440 税込)を使うか、Ninja UltraにNDIライセンス(USD $99)を追加することで、接続したミラーレス一眼がネットワーク上のNDIソースになる。2025年後半に発売されたNinja TXシリーズは、Wi-Fi接続によるCamera-to-Cloud機能とNDI HX3をプリインストールしており、追加モジュールなしでIP映像伝送が可能だ。OBSやvMix、TriCasterが直接認識できるIPカメラとして機能する。固定設置のPTZカメラとNDI対応のAtomosデバイスを混在させることで、ハイブリッドプロダクションの映像インフラを柔軟に構築できる。
Blackmagic DesignはATEM Production Switcerシリーズで本格的なIPプロダクションに対応しているが、フリーランスや小規模制作会社の予算では上位モデルは高価だ。小規模なウェビナーならATEM Mini ProのEthernet経由の配信機能で十分なケースもあるが、NDI HX3への対応という点ではATOMOSに一歩譲る。
判定:NDIを使ったIPプロダクションへの参入、既存カメラの活用→ATOMOS(ConnectモジュールまたはShogun Ultra)。HDMI接続が中心の小規模配信スタジオ→ATEM Mini Proシリーズで十分。
機材費シミュレーション:ゼロから揃えるならどちらが安いか
「まったく何も持っていない状態から映像制作環境を構築するとしたら、いくら必要か」——これはキャリア初期のビデオグラファーにとって最も現実的な問いだ。
ATOMOSルート(ソニーカメラ中心)
| 機材 | 概算価格 |
|---|---|
| Sony α7 IV(メインカメラ) | 約36万円 |
| Atomos Ninja(外部モニター・レコーダー) | 約10万円 |
| UltraSync BLUE(タイムコード同期) | 約4万円 |
| SSD(2TB) | 約8万円 |
| リグ・アクセサリー類 | 約3万円 |
| 合計 | 約61万円 |
※編集ソフト(DaVinci Resolve無償版 or Premiere Pro月額)が別途必要
※Sony α7 IVはヨドバシカメラ価格(税込)、Atomos製品は第3回記載のATOMOSダイレクト価格(税込)に基づく
Blackmagic Designルート(BMDエコシステム)
| 機材 | 概算価格 |
|---|---|
| Blackmagic Cinema Camera 6K | 438,800円 |
| ATEM Mini Pro(配信・記録) | 約5万円 |
| DaVinci Resolve Studio ライセンス(BMCC付属) | 0円(付属) |
| CFexpress 4.0 Type B(1TB) | 約8万3000円 |
| リグ・アクセサリー類 | 約3万円 |
| 合計 | 約61万円 |
どちらのルートも、追加購入や機材のアップグレードで費用は変動する。しかし総合的に見れば、Blackmagicルートは「編集ソフト込みで揃えた場合の実質コスト」で優位だ。一方ATOMOSルートは、カメラを自由に選べる分、既存のカメラ資産を活かすケースでは初期費用を大きく削減できる。
「どちらか一方だけを選ぶ必要はない」という真実
シリーズを通じて繰り返し触れてきたが、ATOMOSとBlackmagic Designは「競合」であると同時に「共存可能」でもある。
実際の現場では以下のようなハイブリッドな組み合わせが珍しくない。
組み合わせ例A:ソニーカメラ + ATOMOS + DaVinci Resolve
ソニーのα7S IIIまたはFX3で撮影し、NinjaにProRes 422 HQで記録。編集・グレーディングにはDaVinci Resolveを使用。ATOMOSはオープン性でどのカメラとも繋がり、Resolveは業界標準の編集環境として機能する。両社の「良い部分だけ」を使う最もポピュラーな組み合わせだ。
組み合わせ例B:BMPCC + ATEM Mini + ATOMOSタイムコード
BMPCC 6KでBRAW内部収録しながら、サブカメラ(ソニーまたはGoPro)もUltraSync BLUEでタイムコード同期。ライブ配信にはATEM Miniを使用。グレーディングはDaVinci Resolve。ATOMOSのタイムコード機器がBlackmagicのカメラを含む全体の「接着剤」として機能している。
組み合わせ例C:マルチカム現場でSumo 19SE + DaVinci Resolve
Sumo 19SEで複数カメラをISO収録しながらライブスイッチング。スイッチングデータのXMLを持ち込み、DaVinci Resolveで仕上げる。ATOMOSの収録機能とBlackmagicの編集環境が役割を分担する。
選択の最終判断基準:5つの問いで自分の答えを見つける
最終的な判断は、スペック比較ではなく「自分がどんな映像制作者でありたいか」への問いに答えることで見えてくる。
① 今使っているカメラはソニー・キヤノン・パナソニックなどのメジャーブランドで、それを使い続けたいか?
→ Yes → ATOMOSがオープン性で優れる。No(Blackmagicカメラに切り替えてもいい)→ Blackmagicエコシステムも視野に。
② 編集はDaVinci Resolveがメインか、あるいは今後DaVinci Resolveに移行したいか?
→ Yes → DaVinci Resolve + Blackmagicカメラ(BRAW連携)は最強の組み合わせ。No(Final Cut Pro・Premiere Pro継続)→ ATOMOSのProRes / DNxHDが最も汎用性が高い。
③ ライブ配信・ハイブリッドイベントへの対応が仕事の柱になっているか、なりそうか?
→ NDIが必要ならATOMOS、HDMI中心の小規模配信スタジオならATEM Mini、大規模な放送級イベントならATEM Productionシリーズ。
④ 定期案件のルーティン化と効率化を最優先したいか?
→ Yes → ATEM Mini + DaVinci Resolveの「1クリック編集」ワークフローは絶大な効率を生む。No(案件ごとに撮影スタイルが変わる)→ ATOMOSのオープン性が活きる。
⑤ 映像表現としてのカラーグレーディングに深くこだわりたいか?
→ Yes → BRAW + DaVinci Resolveの組み合わせは、この価格帯で代替が難しい品質を提供する。No(品質より速度・効率を優先)→ 内部10bit Log収録 + ATOMOSモニタリングで十分。
まとめ:「最適解は一つではない」から、選択に自由がある
ATOMOSとBlackmagic Designはどちらも、10年前には想像できなかった映像品質を、個人が買える価格で提供している。「どちらが良いか」ではなく「今の自分の仕事に対してどちらがより合っているか」という問いに向き合うことが、本当の意味での選択だ。
今の機材を使い続けながら少しずつ拡張したいなら→ATOMOSは「追加するだけで機能する」。
映像制作の環境を一から作り直す覚悟があるなら→Blackmagicのエコシステムは「深く入れば入るほど効率が上がる」。
どちらを選んでも、使いこなした先にあるのは同じ目標——「より良い映像を、より効率的に」だ。
次回は最終回として、AIとクラウド、8K、そして映像制作の未来という視点から、両社がこれからどこへ向かうのかを展望する。
次回予告:【第7回】第7回:映像制作の未来はどこへ向かうのか——AI・クラウド・8Kが変えるモニター・レコーダーの役割
MONITOR & RECORDER THE COMPLETE SERIES は全7回の連載記事です。
MONITOR & RECORDER THE COMPLETE SERIES
- 第1回:モニター&レコーダー入門——なぜ外部レコーダーが必要なのか
- 第2回:テープから8K RAWまで——外部映像収録70年の歴史
- 第3回:ATOMOSのすべて——「カメラに依存しない」オープン接続の思想
- 第4回:Blackmagic Designのすべて——「映像制作の民主化」を垂直統合で実現する稀有な企業
- 第5回:ProRes RAW・BRAW・内部収録——RAW収録は本当に必要か? 現場のコーデック選択を解剖する
- 第6回:あなたのワークフローに最適な機材はどちらか——ATOMOS vs Blackmagic Design、現場別徹底比較
- 第7回:映像制作の未来はどこへ向かうのか——AI・クラウド・8Kが変えるモニター・レコーダーの役割
この記事で登場した主な製品・ワークフロー
Atomos Ninja Ultra、Atomos Ninja、Atomos Shinobi II、Atomos Sumo 19SE、UltraSync BLUE、AirGlu、Atomos Connect、NDI HX3、Camera-to-Cloud(C2C)、Frame.io、Blackmagic Video Assist 5インチ/7インチ 12G HDR、ATEM Mini Pro、ATEM Mini Pro ISO、ATEM Mini Extreme ISO G2、Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K、BRAW(Blackmagic RAW)、DaVinci Resolve、Sony α7S III、Sony FX3、Sony α7 IV、ProRes 422 HQ、XAVC S-I
参考・典拠一覧
本記事で引用・参照した製品仕様、価格情報、ワークフロー、関連発言の主な出典は以下の通りである。
ATOMOSタイムコード同期・モニタリング関連:
- Atomos公式サイト — UltraSync BLUE製品ページ

→ UltraSync BLUEの仕様:Bluetooth経由タイムコード同期、USD $149
- Newsshooter — Matt Allard ACS(2018年12月11日)
「Timecode Systems UltraSync BLUE hands-on review」

→ UltraSync BLUEのハンズオンレビュー、Bluetooth対応機器でのタイムコード同期の実機検証
- Atomos公式サイト — Ninja Ultra製品ページ

→ Ninja Ultraの仕様:5.2インチ、1000nit HDRモニター、ProRes RAW 8Kp30/6Kp60/4Kp120対応
- Atomos公式サイト — Shinobi II製品ページ
→ Shinobi IIの仕様:5.2インチ、1500nit、USB-Cカメラコントロール、録画機能なしの軽量モニター
- CineD (2024年7月31日)
「Atomos Shinobi II Released – Slim 5.2″ 1,500-nit HDMI Monitor with Camera Control」

→ Shinobi IIの発売レビュー、USB-Cカメラコントロール機能の詳細
Atomos Camera-to-Cloud・NDI関連:
- Atomos公式サイト — Camera to Cloud
→ C2Cワークフローの解説:ATOMOSphere、Mavis Cloud Hub、Adobe Frame.io、Dropbox対応
- Frame.io — C2C: Atomos CONNECT QuickStart Guide
→ Atomos ConnectモジュールとFrame.ioの接続・設定手順
- Atomos公式サイト — NDI

→ NDI HX3対応:Ninja TX GO/Ninja TXは内蔵、Ninja/Ninja Ultraはmy.atomos.comから購入
- Newsshooter (2022年7月27日)
「ATOMOS CONNECT & NDI」

→ Atomos ConnectのNDI HX3対応の詳細、低帯域・低遅延の技術解説
Atomos Sumo 19SE関連:
- B&H Photo — Atomos Sumo 19″ SE HDR Monitor, Recorder, and Switcher
→ Sumo 19SEの仕様:19インチ1920×1080 IPS、1200nit、4ch SDI入力+HDMI入力、4ch ISO+プログラム記録、USD $2,299
Blackmagic Design ATEM Miniシリーズ関連:
- AVNetwork (2020年7月30日)
「Blackmagic Design Ships ATEM Mini Pro ISO」

→ Grant Petty CEO発言:「For the first time, live production has been fully integrated into a post-production editing workflow」
- Blackmagic Design公式サイト — ATEM Mini Pro ISO プレスリリース(2020年7月30日)
→ ATEM Mini Pro ISOの発表、5チャンネル記録エンジン、全入力のISO収録
- Blackmagic Design公式サイト — ATEM Mini Editing
→ ATEM Mini ISOモデルのDaVinci Resolve統合ワークフロー:DaVinci Resolveプロジェクトファイルの自動生成、ライブスイッチングの編集再構成
- Blackmagic Design公式サイト — ATEM Mini Tech Specs
→ ATEM Mini Extreme ISO G2:8系統HDMI入力、ISO録画、USD $2,195。ATEM Mini Extreme:USD $1,095
- Live Design Online
「Blackmagic Design Announces New Lower Price For ATEM Mini Pro」

→ ATEM Mini Pro ISO価格改定:USD $495(旧$795)。2026年2月現在の公式価格はUSD $545に改定
Blackmagic Design Video Assist・カメラ関連:
- Blackmagic Design公式サイト — Video Assist Tech Specs
→ Video Assist 5インチ/7インチ 12G HDR:2500nit HDRモニター、10bit 4:2:2 ProRes/DNx記録
- Blackmagic Design公式サイト — Pocket Cinema Camera Tech Specs
→ BMPCC 6K G2:USD $2,375、Super 35センサー、BRAW/ProRes内部収録、DaVinci Resolve Studioライセンス付属
- Blackmagic Design公式サイト — Pocket Cinema Camera
→ 全Pocket Cinema CameraモデルにDaVinci Resolve Studioフルバージョンが付属


