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映像制作の未来はどこへ向かうのか——AI・クラウド・8Kが変えるモニター・レコーダーの役割 | MONITOR & RECORDER THE COMPLETE SERIES(7)

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MONITOR & RECORDER THE COMPLETE SERIES — Vol.07


7回にわたる旅が、ここで終わる。

第1回で外部モニター・レコーダーの基本を学び、第2回で70年の歴史を辿った。第3回・第4回でATOMOSとBlackmagic Designという2つの企業の思想を深く理解し、第5回でRAW収録の現実を見つめ直し、第6回で自分の現場に当てはめる判断基準を手に入れた。

しかし知識はここで「完成」するわけではない。映像技術は絶えず進化し続けており、今この瞬間にも次の変化が生まれている。ATOMOSもBlackmagic Designも、今のままの形で存在し続けるわけではない。両社が見据える「次の10年」は、AIとクラウドと8Kという3つの巨大な潮流によって形作られようとしている。

最終回となる本記事では、これまでのシリーズを振り返りながら、映像制作の未来を展望する。「外部モニター・レコーダーはいつか消えるのか」という本質的な問いにも向き合い、この先10年で映像制作者に求められる「変わらないもの」と「変わるべきもの」について考える。


MONITOR & RECORDER THE COMPLETE SERIES


  1. シリーズを振り返る:6回で何を学んだか
  2. 変化の潮流① AI:「編集しなくてよくなる時代」の到来
    1. DaVinci Resolve Neural Engineが示す未来
    2. ATOMOSもAIの波に乗るのか
    3. 「AI-Pass」という新しい工程
  3. 変化の潮流② クラウド:「撮影と編集の境界が消える」
    1. Blackmagic Cloudの挑戦
    2. ATOMOSとBlackmagicのクラウド戦略の違い
    3. 「撮影現場のない映像制作」の可能性
  4. 変化の潮流③ 8K:「解像度競争の終焉」という逆説
    1. 8K対応は既に現実だが、普及は進んでいない
    2. 解像度競争の終焉と「映像体験」へのシフト
  5. 本質的な問い:「外部モニター・レコーダーはいつか消えるのか」
    1. しかし「モニタリング」の価値は消えない
    2. ATOMOSとBlackmagicが描く「次の製品」
  6. 10年後の映像制作者に求められるもの
    1. 変わらないもの:ストーリーテリングの本質
    2. 変わるべきもの:「効率化できるものは効率化する」という勇気
    3. 機材ではなく「判断力」を磨く
  7. 最後に:「道具が人を制限しない世界」はもう来ている
  8. シリーズ全7回 総目次
  9. 参考・典拠一覧
    1. Grant Petty(Blackmagic Design CEO)の発言
    2. ATOMOS CEO交代(2025年5月)
    3. Jeromy Young(ATOMOS創業者・元CEO)の発言
    4. DaVinci Resolve 20 AI機能
    5. Blackmagic Cloud・SRTストリーミング
    6. 8K普及の停滞
    7. カメラ内部収録スペック
    8. ATOMOS Ninja V+ 8K対応
    9. AI疲れ・AIコンテンツへの視聴者の関心低下

シリーズを振り返る:6回で何を学んだか

まず、ここまでの議論を整理しておこう。

第1回:「なぜ外部モニター・レコーダーが必要なのか」という出発点

カメラ背面の液晶モニターでは「正確な色と明るさの評価」ができない。カメラ内部の記録には品質とコーデックの制約がある。複数人で映像を確認する必要がある。この3つの理由が、外部モニター・レコーダーという機材を必然的なものにしてきた。

第2回:1956年から現在までの歴史が教えてくれたこと

外部映像収録の歴史は「壁を壊す者が時代を作る」という一貫したパターンを示した。Ampex VRX-1000が放送局に磁気テープ記録を届け、MiniDVが個人にデジタル映像をもたらし、5D Mark IIが映画的映像を民主化し、ATOMOSがProRes外部記録を1万ドル以下で実現した。技術の民主化は直線的には進まず、革命的な製品が登場するたびに新しいボトルネックが生まれ、それを突破する次のイノベーションが生まれる——そのくり返しが70年を形作ってきた。

第3回・第4回:2つの哲学——「オープン接続」vs「垂直統合」

ATOMOSのジェロミー・ヤング(Jeromy Young)は「カメラとソフトウェアの間に座り、どちらか一社では実現できないことを可能にする」と語った。一方、Blackmagic DesignのGrant Pettyは「お金がないという理由だけで創造力が制限されてはいけない。そのために自社でエコシステム全体を設計する」という思想を貫く。

ATOMOSは「既存の自分のワークフローを守りながら、高品質な収録とワイヤレス連携を追加する」ことを可能にする。Blackmagic Designは「このエコシステムの中で映像制作者として成長していく」という学習曲線を描かせる。どちらが正しいかではなく、自分がどう映像制作に向き合いたいかで選択が決まる。

第5回:「RAWの呪縛」から解放される

外部RAW収録が普及しなかった理由は複合的だ。7年間続いたProRes RAWとDaVinci Resolveの断絶、対応カメラの限定性、機材増加の物理的コスト、ファイルサイズの現実、そして何より「カメラ本体の内部収録が劇的に進化した」という事実。

10bit 4:2:2のLog内部収録は、RAWに迫る柔軟性をグレーディング時に提供できる。「RAWでなければプロではない」という思い込みは、今日から手放してよい。コーデック選択は「RAWかどうか」ではなく「何を目的とするか」によって決まる。

第6回:自分の現場に落とし込む

ブライダル撮影ではATOMOSのUltraSync BLUEによるワイヤレスタイムコード同期が圧倒的な価値を持つ。企業VPではCamera-to-Cloudのリモートディレクションが競争力になる。ライブイベントではSumo 19SEとATEM Miniシリーズがそれぞれ異なる規模感で力を発揮する。YouTube制作では外部モニター・レコーダーそのものが不要なケースも多い。ウェビナーではNDI対応がATOMOSの独自価値になる。

「どちらが優れているか」ではなく「今の自分の仕事に対してどちらがより合っているか」という問いに向き合うことが、本当の意味での選択だ。

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変化の潮流① AI:「編集しなくてよくなる時代」の到来

映像制作の未来を語る上で、AIは避けて通れないテーマだ。

DaVinci Resolve Neural Engineが示す未来

Blackmagic DesignはDaVinci Resolve 19から20にかけて、AI機能を劇的に強化してきた。グラント・ペティ(Grant Petty)は「われわれはResolveにAIを5年以上前から実装している」と語るが、2025年のDaVinci Resolve 20ではその進化が明確に可視化された。

AI IntelliScript:書かれた脚本を読み込み、タイムライン上のクリップの音声文字起こしと照合して、自動的にショットを正しい順序に配置する。ドキュメンタリー、インタビュー、ナラティブ映像で「粗編集」という工程が数クリックで完了する。

AI Audio Assistant:タイムライン上のすべてのオーディオトラックを分析し、プロレベルのバランスの取れたミックスを自動生成する。

Magic Mask v2:被写体の分離とモーショントラッキングが大幅に向上し、ロトスコーピング(手動での切り抜き作業)なしに正確な選択を作れる。VFXアーティストにとって、オブジェクト置換や背景変更の時間が70%以上削減される。

Smart Reframe(強化版):DaVinci Resolve 17で初登場した機能だが、20.1で大幅に強化された。16:9のHD/Ultra HD映像から、InstagramやTikTok向けの正方形・縦型バージョンを自動生成する。DaVinci Neural Engineが被写体を自動認識し、新しいフレーム内で適切に配置する。20.1では「パンのみ」「ティルトのみ」「両方」を選択できるモードが追加された。

AI Dialogue Matcher:異なる録音環境で収録された音声のトーンとボリュームを自動調和させ、一貫した音質を実現する。

こうした機能を見ると「編集者の仕事がなくなるのでは」という不安が頭をよぎる。

しかしグラント・ペティが強調するのは、AIは「クリエイティブをサポートすべきものであり、予期しない方向への創造性を引き出すツール」だという点だ。編集者が何時間もかけていた反復的な作業——クリップの整列、音声のバランス調整、被写体の切り抜き——をAIに任せることで、編集者は「どう語るか」「どう感じさせるか」というストーリーテリングの本質に集中できる。

ATOMOSもAIの波に乗るのか

ATOMOSは現時点で大規模なAI機能を製品に実装していないが、その戦略は明確だ。「ハードウェアをどんどん小型化・シンプル化し、インテリジェンスはクラウド側に移行していく」——これがジェロミー・ヤングが描いた未来像だ。なお、2025年5月にヤングはCEOを退任し、Blackmagic Designの共同創業者でもあるピーター・バーバー(Peter Barber)がATOMOSの新CEOに就任した。バーバーはATOMOSの経営再建に取り組み、FY26第1四半期(2025年7〜9月期)には3年以上ぶりのEBITDA黒字を達成している。

Atomos Cloud StudioがFrame.ioやDropboxと統合し、プロキシを自動転送する仕組みは既に稼働している。将来的には、クラウド上のAIがプロキシを分析し、「編集者が選びたくなる最良のショット」を自動抽出して提示する機能が実装される可能性もある。

Camera-to-Cloudと組み合わせることで「撮影終了の10分後に、AIが粗編集したタイムラインがFrame.ioに用意されている」という世界は、技術的には十分に実現可能だ。

「AI-Pass」という新しい工程

ある映像制作教師はBlackmagicのフォーラムでこう書いた。「もはや『AIパス』が映像プロジェクトの標準工程になることを否定できない。かつて『カラーグレーディング工程』が当然のものになったのと同じように」。

これは示唆的な指摘だ。かつて映像制作は「撮影→編集→納品」という流れだった。そこに「カラーグレーディング」という工程が加わり、今では当然のものになった。同様に、これから10年以内に「AIパス」——AIによる自動字幕生成、自動ノイズ除去、自動カラーマッチング、自動シーン検出——が、当たり前の工程として組み込まれていく。

ただし、ここで一つの重要な問いが浮かぶ。「AIが生成したコンテンツばかりになると、視聴者は飽きないか?」

ある制作者はこう述べる。「私や多くの同僚にとって、AIを使ったコンテンツを見るのは退屈になってきた。4年以上AIを活用してきたが、人々はそうしたコンテンツへの関心を次第に失いつつある。品質レベルに関係なく」。

これは重要な警告だ。AIは効率化のツールとしては素晴らしいが、AIに「創造」を丸投げした瞬間、映像は魂を失う。編集者とクリエイターが「AIに何をさせて、自分は何に集中するか」を明確に判断できるかが、この先の分水嶺になる。

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変化の潮流② クラウド:「撮影と編集の境界が消える」

第3回で詳述したATOMOSのCamera-to-Cloud(C2C)は、すでに現実のものになっている。しかしこれは始まりに過ぎない。

Blackmagic Cloudの挑戦

Blackmagic Designは2023年から「Blackmagic Cloud」を本格展開している。DaVinci Resolveのプロジェクトファイルをクラウド上で共有し、複数の編集者・カラリスト・VFXアーティストが同時にアクセスして分業できる環境だ。

SRT(Secure Reliable Transport)ストリーミング技術により、リモートモニタリング時の高品質・低遅延映像伝送を実現している。エンドツーエンドの暗号化により、ストリームが不正アクセスから保護される。

Blackmagic Cloud Podという小型デバイスにより、既存のNASストレージをBlackmagic Cloudに接続できる。これによりスタジオのローカルストレージが、リモート編集者にとってクラウドストレージと同等に扱えるようになる。

ATOMOSとBlackmagicのクラウド戦略の違い

ATOMOSのクラウド戦略は「既存のクラウドサービス(Frame.io、Dropbox)との接続」を重視する。自社でクラウドインフラを構築するのではなく、編集者が既に使っているサービスへのブリッジとして機能する。これは「オープン接続」という第3回で論じたATOMOSの思想に一貫している。

Blackmagic Designのクラウド戦略は「Blackmagicエコシステム内でクローズドに完結する」方向性だ。Blackmagic CloudとDaVinci Resolveの統合は深く、他のソフトウェアとの互換性は二の次になる。これは「垂直統合」という第4回で論じたBlackmagicの思想に一貫している。

どちらが優れているかではなく、この対比は両社の哲学が「クラウド時代にも変わらず貫かれている」ことを示している。

「撮影現場のない映像制作」の可能性

クラウドワークフローが極限まで進化した未来では、映像制作者が物理的に同じ場所にいる必要がなくなる。カメラマンは東京で撮影し、プロキシが即座にシドニーのクラウドに転送され、編集者がロンドンで粗編集を始め、カラリストがロサンゼルスでグレーディングを施す——すべてが「撮影終了を待たずに」並行して進行する。

ATOMOSのC2Cとクラウドベースの編集ソフトウェアが組み合わさることで、この世界は技術的には既に実現可能だ。パンデミックが加速させたリモートワークフローの需要は、今後も映像制作の現場を変え続ける。


変化の潮流③ 8K:「解像度競争の終焉」という逆説

8Kは来るのか。それとも来ないのか。

8K対応は既に現実だが、普及は進んでいない

ATOMOSのNinja V+は8K 30p ProRes RAW記録に対応していた(現在はNinja TX / TX GOシリーズに世代交代)。Shogun Ultraも8K対応だ。キヤノンEOS R5は2020年の時点で8K内部収録を実現していた。技術的には、8K収録は「できる」。

しかし「する必要があるか」は別の問題だ。

8Kディスプレイの普及は遅々として進んでいない。YouTubeは8K動画をサポートしているが、視聴者の大半は4K以下の環境で見ている。Netflix、Amazon Prime Video、Disney+といった主要配信プラットフォームでさえ、8Kコンテンツの配信はごく限定的だ。

8K収録の実用的な価値は「4Kへのダウンコンバート時のクロップ・ズーム・手振れ補正の余裕」や「スチル切り出しの高解像度化」といった副次的な用途に限られる。「8Kで見せる」ことよりも「8Kで撮って4Kで見せる」という逆説的な使い方が主流になりつつある。

解像度競争の終焉と「映像体験」へのシフト

映像技術の進化は長年「解像度の向上」という分かりやすい軸で進んできた。SD→HD→フルHD→4K→8Kという一本道だ。しかし8Kを超えた先に「16K」「32K」へと進むかといえば、おそらく進まない。

人間の視覚には限界がある。通常の視聴距離では、4Kと8Kの差を識別できる人は限られる。8Kを超えると、解像度を上げることの価値は急速に薄れていく。

その代わりに注目されているのが「映像体験の質」だ。HDR(High Dynamic Range)、広色域、高フレームレート、立体音響——これらは解像度とは独立した次元で映像体験を豊かにする。特にHDRは、4K HDRと8K SDRを比べた場合、多くの視聴者が「4K HDRの方が美しい」と感じるほどのインパクトを持つ。

ATOMOSが高輝度HDRモニタリング機能に力を入れ、Blackmagic DesignがDolby Vision対応を進めているのは、この「解像度から体験へ」というシフトを見据えた動きだ。


本質的な問い:「外部モニター・レコーダーはいつか消えるのか」

7回のシリーズを通じて、繰り返し見えてきた事実がある。「カメラ本体が進化するほど、外部レコーダーの必要性は薄れる」。

キヤノンEOS R5 Mark IIは内部で12bit Cinema RAW Light(8K 60p)を記録できる。ニコンZ8/Z9は内部で12bit N-RAW(最大8.3K 60p)およびProRes RAW HQ(最大4.1K 60p)を記録できる。ソニーα7S IIIは内部で10bit 4:2:2 XAVC S-Iを最大600Mbps(4K 60p時)で記録でき、グレーディング耐性は外部ProRes 422 HQと遜色ない。パナソニックLUMIX S5 IIXはUSB-SSD経由で、ProRes 422 HQを最大5.8Kや4K 60pで直接記録できる。

このトレンドによって「外部レコーダーを使わなければ高品質な収録ができない」という時代は、ほぼ終ったといってもいい。

しかし「モニタリング」の価値は消えない

重要なのは、外部「レコーダー」の必要性が薄れても、外部「モニター」の価値は消えないという点だ。

カメラ背面の3インチ液晶は物理的に小さい。晴天下では見えない。複数人で確認できない。波形モニター、ベクトルスコープ、ヒストグラム、フォーカスピーキング、LUTプレビュー——これらのプロ用モニタリングツールは、撮影の「正確さ」を担保するために依然として必要だ。

ATOMOSのShinobi IIシリーズが「記録機能なしの外部モニター専用モデル」として存在する理由はここにある。Blackmagic DesignのVideo Assistも、2500nitの超高輝度ディスプレイという「モニタリング品質」でユーザーを引きつけている。

つまり、外部モニター・レコーダーという製品カテゴリーは「レコーダー」から「モニター」へと重心を移していく可能性が高い。

ATOMOSとBlackmagicが描く「次の製品」

ATOMOSの創業者ジェロミー・ヤングが語った「画面のないダムボックス」というビジョンは、この文脈で興味深い。外部レコーダーが「録画ボックス」ではなく「接続ハブ」として機能し、NDI変換、タイムコード同期、クラウド転送といった「ワークフローの接着剤」の役割に特化していく可能性を示唆している。2025年5月に新CEOに就任したピーター・バーバーのもと、ATOMOSはNinja TX / TX GOシリーズでカメラコントロール機能を強化し、PTZカメラ(A-Eyeシリーズ)やマイク・ヘッドフォン(StudioSonicシリーズ)など製品ラインナップの多角化を進めている。

Blackmagic Designは逆に、モニタリング機能をさらに深化させる方向に進むだろう。Video Assistの2500nit HDRディスプレイは、現場での正確なHDRモニタリングを実現する。これはDaVinci ResolveのHDRグレーディング環境との連携を前提とした設計であり、垂直統合エコシステムの延長線上にある。


10年後の映像制作者に求められるもの

シリーズの締めくくりとして、最も本質的な問いを投げかけたい。「10年後、映像制作者に求められる能力とは何か」。

変わらないもの:ストーリーテリングの本質

AIが粗編集を自動生成しても、クラウドがリアルタイムコラボレーションを可能にしても、8Kが圧倒的な解像度を提供しても、映像制作の核心は「何を伝えるか」「どう感じさせるか」というストーリーテリングにある。

技術は道具だ。道具がどれだけ高度になっても、それを使って「何を語るか」を決めるのは人間だ。AIが「どのショットを選ぶべきか」を提案できても、「なぜそのショットが必要なのか」を判断するのは編集者の感性だ。

映像制作者として生き残るために必要なのは、機材の知識ではなく、人間の感情を理解する力だ。

変わるべきもの:「効率化できるものは効率化する」という勇気

一方で、技術の進化を拒むことは衰退を意味する。

「AIに頼るのは邪道だ」「外部レコーダーを使わないのはプロではない」「RAWで撮らなければ本気ではない」——こうした思い込みは、自分の首を絞めるだけだ。

AIに字幕生成を任せることで、編集者はストーリー構成に集中できる。内部10bit Log収録で十分な品質が得られるなら、外部レコーダーの重量と複雑さから解放される。クラウドワークフローを活用すれば、世界中の才能とコラボレーションできる。

「本質的な創造」のために時間を使うために、「効率化できる部分」は徹底的に効率化する——この判断ができる映像制作者が、次の10年を生き抜く。

機材ではなく「判断力」を磨く

ATOMOSとBlackmagic Design、どちらを選ぶかは重要だ。しかしもっと重要なのは「なぜそれを選んだか」を説明できることだ。

ProRes RAWで撮るかLog内部収録で撮るかは重要だ。しかしもっと重要なのは「このプロジェクトにとってどちらが適切か」を判断できることだ。

機材の知識は陳腐化する。新しいカメラが出れば、古い知識は役に立たなくなる。しかし「目的に対して最適な手段を選ぶ判断力」は、どれだけ技術が進化しても価値を失わない。

このシリーズが提供してきたのは「知識」だけではなく「判断の補助線」だった。第6回で提示した「5つの問い」のような判断フレームワークは、10年後にも通用する。なぜなら、それは機材のスペックではなく「自分がどう映像制作に向き合いたいか」という本質的な問いだからだ。


最後に:「道具が人を制限しない世界」はもう来ている

グラント・ペティが語った言葉を、もう一度ここに引用したい。

「お金がないという理由だけで、創造力が制限されてはいけない。道具は人を解放するためにある」。

この言葉は、ATOMOSとBlackmagic Designの両社が共に体現している真実だ。

10年前、ProResで外部記録するには数百万円の機材が必要だった。今は10万円で手に入る。

10年前、カラーグレーディングはハリウッドの特権だった。今はDaVinci Resolveが無償で使える。

10年前、4K 60p RAW収録は夢物語だった。今はミラーレス一眼で内部記録できる。

10年前、クラウドで世界中の編集者とリアルタイム共同編集する環境は存在しなかった。今は当たり前になりつつある。

「道具が人を制限しない世界」は、もう来ている。

これから10年後、さらに多くの壁が壊されるだろう。AIが編集をサポートし、クラウドが距離を無効化し、8Kを超えた先にある「体験の質」が映像表現を深化させる。

その未来で、あなたは何を語るか。

ATOMOSとBlackmagic Designは、あなたがその答えを見つけるための道具を用意している。どちらを選んでも、あるいは両方を使っても、その先にあるのは同じゴール——「より良い映像を、より効率的に、そしてより多くの人に届ける」ことだ。

7回にわたるシリーズを読んでくれたあなたに、最後の言葉を贈る。

機材は変わる。技術は進化する。しかし映像制作の本質——人の心を動かす物語を紡ぐこと——は変わらない。その本質を忘れなければ、どんな時代でも映像制作者として生き続けることができる。

ここまで読んでくれて、ありがとう。

あなたの次の作品が、素晴らしいものになることを願っている。


シリーズ全7回 総目次

第1回:モニター&レコーダー入門——なぜ外部レコーダーが必要なのか

カメラ背面液晶の限界、外部モニター・レコーダーが必要な3つの理由、ATOMOSとBlackmagic Designの紹介

第2回:テープから8K RAWまで——外部映像収録70年の歴史

1956年Ampex VRX-1000からDSLRムービーブーム、ProRes RAW・BRAW登場までの歴史的必然

第3回:ATOMOSのすべて——「カメラに依存しない」オープン接続の思想

Jeromy Youngの物語、Ninja・Shogun・UltraSync BLUEの詳細、NDI・C2Cワークフローの価値

第4回:Blackmagic Designのすべて——「映像制作の民主化」を垂直統合で実現する稀有な企業

Grant Pettyの哲学、DaVinci Resolve無償化の衝撃、BMPCC・ATEM・Video Assistの連携、垂直統合の光と影

第5回:ProRes RAW・BRAW・内部収録——RAW収録は本当に必要か? 現場のコーデック選択を解剖する

RAWとは何か、ProRes RAWとBRAWの技術的差異、RAW収録が普及しなかった7つの理由、10bit Log内部収録という現実解

第6回:あなたのワークフローに最適な機材はどちらか——ATOMOS vs Blackmagic Design、現場別徹底比較

ブライダル・企業VP・YouTube・ライブイベント・ドキュメンタリー・ウェビナー、6つのユースケース別判定と機材費シミュレーション

第7回(最終回):映像制作の未来はどこへ向かうのか——AI・クラウド・8Kが変えるモニター・レコーダーの役割

AI Neural Engineの衝撃、クラウドワークフローの進化、8K解像度競争の終焉、外部モニター・レコーダーの未来、映像制作者に求められる本質


MONITOR & RECORDER THE COMPLETE SERIES 完

本シリーズは2026年2月時点の情報をもとに執筆されています。製品仕様やファームウェアは随時更新される場合があります。


参考・典拠一覧

本記事中の引用・主張・製品スペックの主な典拠を以下にまとめる。

Grant Petty(Blackmagic Design CEO)の発言

  • 「われわれはResolveにAIを5年以上前から実装している」「AIはクリエイティブをサポートすべきもの」「予期しない方向への創造性を引き出すツール」等の発言 → No Film School「The Philosophy of Grant Petty and the Future of Blackmagic Design」(2023年4月28日) https://nofilmschool.com/philosophy-grant-petty-and-future-blackmagic-design
  • 「お金がないという理由だけで、創造力が制限されてはいけない」 → 同上 No Film School インタビュー(NAB 2023)

ATOMOS CEO交代(2025年5月)

Jeromy Young(ATOMOS創業者・元CEO)の発言

DaVinci Resolve 20 AI機能

Blackmagic Cloud・SRTストリーミング

8K普及の停滞

カメラ内部収録スペック

ATOMOS Ninja V+ 8K対応

AI疲れ・AIコンテンツへの視聴者の関心低下


シリーズで登場した主な製品・技術用語(総索引)

ATOMOS: Ninja V / V+ / Ultra, Shogun Ultra / Connect / Classic, Sumo 19SE, Shinobi II, UltraSync BLUE / ONE, AirGlu, Atomos Connect, NDI HX3 / NDI 6, Camera-to-Cloud (C2C), Atomos Cloud Studio

Blackmagic Design: Video Assist 5″ / 7″ 12G HDR, Pocket Cinema Camera (BMPCC) 6K / 4K, URSA Mini Pro 12K, Studio Camera, ATEM Mini / Pro / Extreme ISO, HyperDeck Studio, Blackmagic Cloud / Cloud Pod, DaVinci Resolve / Studio, Fusion, Fairlight

コーデック・フォーマット: ProRes RAW / ProRes 422 HQ, Blackmagic RAW (BRAW), XAVC S-I / HS, DNxHD, H.265 (HEVC), H.264, S-Log3, V-Log, F-Log2, C-Log3, N-Log

カメラ: Sony α7S III / FX3 / FX6, Canon EOS 5D Mark II / EOS R5 Mark II, Nikon Z6 / Z8 / Z9, Panasonic LUMIX S5 II, Fujifilm X-H2s

人物: Jeromy Young (ATOMOS創業者・元CEO), Grant Petty (Blackmagic Design創業者・CEO)

技術: 10bit 4:2:2, RAW (リニアRAW), デベイヤー(デモザイク), LUT, HDR, タイムコード同期, NDI (Network Device Interface), AI Neural Engine

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