
「あと少しだけ撮りたい」——その瞬間にバッテリーが切れる。映像制作の現場で、これほど悔しい瞬間はない。 ミラーレス一眼カメラの内蔵バッテリーは、写真撮影には十分でも、長時間の映像収録ではあっという間に底をつく。Canon EOS R50Vの標準バッテリーLP-E17で連続撮影できる時間は、4K 30p撮影時でおおよそ40〜50分程度(1080pならもう少し長くなる)。収録の合間にバッテリーを交換する手間、そして「収録が止まる」リスクをどう回避するか。
本記事(前編)では、NP-F互換バッテリーを中心に、ミラーレス一眼カメラへの外部給電方法を徹底的に解説する。後編ではVマウントバッテリーを用いたさらにパワフルな給電システムを取り上げる。
カメラに給電する4つの方法
ミラーレス一眼カメラに電力を供給する方法は、大きく分けて4つある。
1. 専用バッテリー(カメラ用バッテリー)
カメラメーカーが各機種向けに設計した純正バッテリーである。筆者が普段使用しているCanon EOS R50VならLP-E17、Canon C50ならLP-E6Pがこれにあたる。FX3やα7Vなど、SONYのカメラではNP-FZ100を使用する機種が多い。
メリット
- カメラに直接装着するだけで使える。追加の機材やケーブルは一切不要
- 軽量・コンパクト。持ち運びに困らない
- カメラとの通信が正確に行われ、残量表示の信頼性が高い
デメリット
- 容量が限られている。LP-E17は約7.5Wh、LP-E6Pは約16Whと、長時間収録には心もとない
- 収録中にバッテリーを交換すると、録画が中断される
- 予備バッテリーを何本も持ち歩く必要がある
2. 専用バッテリーグリップ(カメラ用バッテリーグリップ)
カメラのボディ下部に取り付ける大型グリップで、内部に2本のバッテリーを装填できる製品が多い。
メリット
- 2本分の容量で撮影時間がほぼ倍になる
- 縦位置での操作性が向上する(縦位置シャッターボタン付きの場合)
- カメラのバランスが改善され、大口径レンズとの重量バランスが取りやすい
デメリット
- カメラ全体の重量とサイズが大きく増す
- 機種専用品のため汎用性がない
- 価格が高い(純正品の場合、2〜5万円程度)
- それでも容量は2倍にしかならないため、長時間収録の根本的な解決にはならない
3. USB給電(USB Power Delivery)
USB-Cポートを搭載したカメラであれば、USB PD(Power Delivery)対応の電源からカメラに直接給電できる場合がある。Canon C50はUSB-Cパワーアダプター PD-E2に対応している。
メリット
- モバイルバッテリーやUSB充電器など、身近な機器から給電できる
- ケーブル1本で接続でき、セットアップが簡単
デメリット
- USB PDの出力が不足すると、給電しながらでもバッテリーが減る場合がある
- USB-Cケーブルは抜けやすく、収録中の事故リスクがある
- カメラのUSB端子がデータ通信と共用のため、外部レコーダーとのデータ接続と排他になる場合がある
4. カプラーを利用した給電
本記事で最も詳しく解説する方法がこれである。カプラー(DCカプラー) とは、バッテリーの形状をした「ダミーバッテリー」のことだ。カメラのバッテリー室にカプラーを装填し、そこからDCケーブルで外部電源に接続する。カメラからすると「バッテリーが入っている」と認識されるが、実際の電力は外部から供給されている、という仕組みである。
メリット
- NP-FバッテリーやVマウントバッテリーなど、大容量の外部電源を利用できる
- バッテリー交換の必要がなく、長時間の連続収録が可能
- 外部電源の選択肢が広く、用途に応じた柔軟な運用ができる
デメリット
- カプラー、アダプタープレート、DCケーブルなど、複数のアクセサリーが必要
- セットアップに手間がかかる
- ケーブル類が増えるため、取り回しに注意が必要
- カメラ側の残量表示が正確に機能しないことがある
カプラーを利用した給電で使える外部電源
カプラー給電の電源として使えるものは、主に以下の4つである。
| 電源の種類 | 容量の目安 | 可搬性 | コスト |
|---|---|---|---|
| モバイルバッテリー | 10〜25Wh程度 | ◎ 非常に軽い | ◎ 安い |
| NP-F互換バッテリー | 16〜77Wh程度 | ○ 軽い | ○ 手頃 |
| Vマウントバッテリー | 50〜150Wh程度 | △ やや重い | △ 高い |
| 家庭用電源(AC→DCアダプター経由) | 無制限 | × 移動不可 | ○ 安い |
本記事では、このうち NP-F互換バッテリー を中心に解説する。Vマウントバッテリーについては後編で詳しく取り上げる。
NP-F互換バッテリーとは何か
NP-Fバッテリーは、もともとソニーが1990年代に業務用カムコーダー向けに開発したバッテリー規格である。正式には「Lシリーズ」とも呼ばれる。ソニーのハンディカムやプロフェッショナルカムコーダーに広く採用されたことで、映像制作業界のスタンダードとなった。
現在では、ソニー純正品だけでなく、SmallRig、NEEWER、Wasabiなど多くのサードパーティメーカーが互換バッテリーを製造・販売している。これらを総称して 「NP-F互換バッテリー」 と呼ぶ。
NP-Fバッテリーがカメラアクセサリーの世界で重宝される理由は、その 汎用性 にある。外部モニター(ATOMOSやSmallHDなど)、LEDビデオライト、ワイヤレス伝送装置など、映像制作で使用するさまざまな機器がNP-Fバッテリースロットを標準搭載している。ATOMOS Ninja TXも例外ではなく、背面にNP-F(Lシリーズ)バッテリーマウントを備えている。
NP-Fバッテリーのサイズと容量
NP-Fバッテリーには複数のサイズがある。末尾の数字が大きいほど容量が大きい。
| 型番 | サイズ感 | 容量(純正基準) | 電圧 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| NP-F550 | 小型・薄型 | 約2,200mAh(約16Wh) | 7.2V | 小型モニター、LEDライトなど軽量な機器向け |
| NP-F750 / F770 | 中型 | 約4,400mAh(約33Wh) | 7.2V | モニター、中型LEDライトなどオールラウンド |
| NP-F970 | 大型 | 約6,300mAh(約45Wh) | 7.2V | 長時間収録、大型機器向け |
互換バッテリーでは、NP-F970互換品で10,500mAh(約77Wh)という大容量モデルも存在する。純正の約1.7倍の容量であり、長時間収録には頼もしい存在である。
なお、NP-Fバッテリーは上位互換の関係にある。NP-F970対応スロットにNP-F550を装着しても問題なく動作する(ただし容量は当然少ない)。逆に、NP-F550専用のスロットにNP-F970を物理的に装着できない場合がある。
用語解説——DCケーブルとコネクタの基本
NP-Fバッテリーからカメラに電力を届けるまでには、いくつかの機材とケーブルが必要になる。ここで、初めて外部給電に挑戦する人が戸惑いやすい用語を整理しておこう。
カプラー(DCカプラー / ダミーバッテリー)
前述のとおり、カメラのバッテリー室に装填する「バッテリーの形をした端子」である。カプラーからはDCケーブルが伸びており、外部電源と接続する。
DR-E18(LP-E17互換形状、入力DC 5.5×2.1mm、8V/2A)
Canon EOS R50Vやその他対応機種で使用できるカプラーだ。


DR-E6P(LP-E6P互換形状)
Canon C50はこのカプラー利用する。
LP-E6系のバッテリーを使用するすべてのカメラで使用可能なDCカプラー。


DC端子——5521と5525の違い
DCケーブルの先端にある円筒形のコネクタを「DCバレルコネクタ」と呼ぶ。映像機器で頻繁に使われるのが、以下の2種類である。
| 通称 | 外径 | 内径(ピン径) | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 5521 | 5.5mm | 2.1mm | 7.4V系の機器(カメラカプラー、小型モニターなど) |
| 5525 | 5.5mm | 2.5mm | 12V系の機器(大型モニター、レコーダーなど) |
外見がほとんど同じため、間違えて接続してしまうことがある。5525のプラグは5521のジャックに差し込めてしまう場合があるが、接触不良を起こし、給電が不安定になるか、最悪の場合ショートの原因になる。購入時は必ずサイズを確認すること。

SmallRig NP-Fバッテリーアダプタープレート(Lite)SR3018は、この両方のDC出力を備えている。
- 7.4V出力 → DC 5.5×2.1mm(5521)
- 12V出力 → DC 5.5×2.5mm(5525)

SmallRig NP-Fシリーズバッテリー用アダプタープレート(Lite)SR3018

NP-Fバッテリーからカメラに給電するための「橋渡し」となるのが、バッテリーアダプタープレートである。SmallRig SR3018は、NP-F互換バッテリーをカメラリグに組み込むための軽量なプレートだ。
主な仕様
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 対応バッテリー | ソニー NP-Fシリーズ(NP-F550 / F750 / F770 / F970) |
| DC出力(1) | 7.4V DC(5.5×2.1mm / 5521) |
| DC出力(2) | 12V DC(5.5×2.5mm / 5525) |
| バッテリー残量インジケーター | LED(低残量警告) |
| 素材 | ABS + PC |
| 本体サイズ | 94 × 18.7 × 45.9mm |
| 重量 | 約48.5g |
| 取り付け | 1/4″-20 ネジ穴(底面ラバーパッド付き) |
SR3018の特徴は、2系統のDC出力を同時に使える 点にある。7.4Vポートからカメラのカプラーに給電しつつ、12Vポートから外部モニターやレコーダーに給電する、といった運用が可能だ。ただし、2ポート同時使用時はバッテリーの消費が早まるため、大容量のNP-F970を使用することを推奨する。
実践セットアップ例:Canon EOS R50V + NP-F互換バッテリー


ここでは、Canon EOS R50Vに NP-Fバッテリーから給電する具体的な手順を示す。
必要な機材
- Canon EOS R50V(カメラ本体)
- DR-E18 DCカプラー(LP-E17ダミーバッテリー、DC 5.5×2.1mm入力、8V/2A)
- SmallRig NP-Fバッテリーアダプタープレート(Lite)SR3018
- NP-F互換バッテリー
接続手順
- Canon EOS R50Vのバッテリー室を開け、DR-E18カプラーを装填する。カプラーから伸びるDCケーブルは、バッテリー室のケーブルスリットから外に出す
- SmallRig SR3018にNP-F互換バッテリーを装着する
- SR3018の 7.4V DC出力(5521) とDR-E18カプラーのDC入力をDCケーブルで接続する
- カメラの電源を入れる。カプラー経由で外部から給電されていれば、カメラは正常に起動する

注意: DR-E18の入力は8V/2Aであり、内部に電圧レギュレーターを搭載していない製品が多い。SR3018の7.4V出力は定格7.4Vであり、NP-Fバッテリーの充電状態によっては8V前後まで出力される場合があるため、動作上は問題ない。ただし、12V出力に接続すると過電圧となりカメラを損傷する可能性がある。必ず7.4V(5521)ポートを使用すること。
バッテリー持続時間の目安
写真ではNP-F550互換バッテリーを装着したが、例えばNP-F970(純正相当 約45Wh)でCanon EOS R50Vに給電した場合、カメラの消費電力を約9〜11Wと仮定すると、おおよそ 4〜5時間 の連続撮影が見込める。10,500mAh(約77Wh)の大容量互換バッテリーであれば、7〜8時間 程度の連続運用も期待できる。

今回の記事では紹介していないが、筆者はソニーのα7シリーズも使用している。αやFXシリーズで使用する場合は下記のダミーバッテリーを使用することで今回の記事と同様の運用を行うことができる。

撮影の都合上三脚に載せた写真が中心だが、このセットアップであれば手持ちでの撮影も問題なく行える。バッテリー分の重量増加はあるものの、R50VのキットレンズであるRF-S14-30mm F4-6.3 IS STM PZやダブルズームキットのRF-S55-210mm F5-7.1 IS STMは手振れ補正機能付きでかつレンズが軽量なので、長時間の手持ち撮影にも対応できる。とくに14-30mmは電動ズームが優秀だ。被写界深度を必要とする手持ち撮影ならキットレンズでも活躍の場はあるなと感じた。
NP-F互換バッテリー
充電器
Amazonや楽天市場では様々なものが販売されている。特にこだわりがなければ有名メーカー製を買うのが良いだろう。筆者は8年ほど前に購入したNewmowaという中華メーカーの充電器を2台使用しているが、2台とも現役で稼働している。
NP-Fバッテリーは容量が大きいため充電に時間が掛かる。カメラバッテリーとしてであれば一日1,2個の使用で済むかもしれないが、モニターや照明で使用する場合は一日何個も使用すると思われるので、充電器は複数台用意することをお勧めする。
ソニーのα7やFX3、FX30等を使用している場合は下記のようなNP-FZ100バッテリー兼用の充電器も販売されている。ソニー製のカメラで撮影しているビデオグラファーや、フォトスタジオや結婚式場の撮影室に据え置きする場合に適している。
NP-Fバッテリー給電のメリットとデメリット——まとめ
| 評価軸 | NP-Fバッテリー給電 | コメント |
|---|---|---|
| イニシャルコスト | ★★★★☆(手頃) | バッテリー約4,000〜8,000円 + アダプター約3,000円 + カプラー約1,500〜3,000円。合計1万円前後から始められる |
| 重量 | ★★★★☆(軽い) | NP-F970は約300g、アダプタープレートは約50g。合計350g前後と非常に軽量 |
| セットアップの手間 | ★★★☆☆(普通) | カプラー装填 → アダプタープレートにバッテリー装着 → DCケーブル接続。慣れれば1分程度 |
| 運用時の事故リスク | ★★★☆☆(やや注意) | DCバレルコネクタは抜けやすい。ロックケーブルの使用を推奨 |
| 拡張性 | ★★☆☆☆(限定的) | SR3018は2ポート出力があるが、NP-F970でカメラとモニターを同時駆動すると持続時間は大幅に短くなる |
| バッテリー持続時間 | ★★★☆☆(中程度) | NP-F970でEOS R50V単体なら4〜5時間。Ninja TXとの同時給電は実用的に厳しい |
NP-Fバッテリーによる外部給電は、「手軽さ」と「コスト」のバランスが優れた入門的な選択肢 である。単体のカメラに長時間給電する用途であれば、これで十分だ。
しかし、カメラに加えて外部モニターレコーダーや伝送装置にも同時に電力を供給したいとなると、NP-Fの容量では力不足を感じる場面が出てくる。その場合に検討すべきが、後編で詳しく解説する Vマウントバッテリー である。
典拠
- SmallRig「NP-F Battery Adapter Plate Lite」製品ページ https://www.smallrig.com/smallrig-np-f-battery-adapter-plate-lite-3018.html
- SmallRig「USB-C Rechargeable Camera Battery for Sony NP-F970(4577)」製品ページ https://www.smallrig.com/NP-F970-USB-C-Rechargeable-Camera-Battery.html
- SmallRig「Sony NP-F970 USB-C Fast Charge, 10500mAh(4267)」製品ページ https://www.smallrig.com/smallrig-NP-F970-USB-C-Rechargeable-Camera-Battery-4267.html
- NEEWER「TP-F970 10500mAh NP-F970 Replacement Battery」製品ページ https://neewer.com/products/neewer-10500mah-np-f970-replacement-battery-66605166
- Canon 欧州「EOS C50 Specifications」https://www.canon-europe.com/video-cameras/eos-c50/specifications/
- Amazon「HangTon DR-E18 DC Coupler Dummy Battery for LP-E17」https://www.amazon.com/HangTon-DR-E18-Coupler-Battery-LP-E17/dp/B08C5CJ984
- B&H Photo「Compare Watson NP-F550 vs Sony NP-F970 vs Watson NP-F770」https://www.bhphotovideo.com/c/compare/Watson_NP-F550_vs_Sony_NP-F970_vs_Watson_NP-F770/BHitems/835995-REG_352125-REG_835998-REG
- DSLR Video Shooter「Everything You Need to Know About NP-F Batteries」https://dslrvideoshooter.com/everything-need-know-np-f-batteries/
- No Film School「Watch: A Filmmaker’s Guide to Sony NP-F Batteries」https://nofilmschool.com/2017/03/watch-filmmakers-guide-sony-np-f-batteries


