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CP+——Photokina亡き後の「世界唯一」へ(2010–現在)| 展示会クロニクル(4)

産業分析
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展示会クロニクル——写真映像産業を動かす見本市の歴史と未来(4)

※Adobe Firefly 及び Google Gemini 3.1 (w/ Nano Banana2 )により生成したイメージ画像です。

第 II 部 個別史──主要展示会の軌跡

2010年、横浜のパシフィコ横浜に一つの新しい展示会が誕生した。CP+(Camera & Photo Imaging Show)——CIPA(一般社団法人カメラ映像機器工業会)が主催するこの展示会は、それまで別々に開催されていた「日本カメラショー」と「フォトイメージングエキスポ(PIE)」を統合したものであった。当時、Photokinaは依然として健在であり、CP+はあくまで「日本のカメラ展示会」という位置づけであった。しかし2020年以降、Photokinaの無期限休止とPMA Showの消滅を経て、CP+は世界で唯一の大規模写真専門展示会という、想定外の地位を担うことになる。

なおCP+については、CP+とは何か——世界最大級のカメラ・映像機器展示会という記事でも解説しています。


CP+の誕生——二つの展示会の統合(2010年)

前史:日本カメラショーとフォトイメージングエキスポ

CP+誕生以前、日本には二つの主要な写真関連展示会が存在していた。

日本カメラショー(1960年〜2009年)は、CIPAの前身組織であるJCIA(日本写真機工業会)が主催する展示会で、主にカメラメーカーの新製品展示を中心としていた。業界関係者と一般消費者の双方を対象とし、毎年開催されていた。

フォトイメージングエキスポ(PIE)(2004年〜2009年)は、写真関連団体が主催する展示会で、写真文化の普及と関連製品の展示を目的としていた。

この二つの展示会を統合し、日本の写真産業を代表する単一の展示会として2010年に誕生したのがCP+である。正式名称は「Camera & Photo Imaging Show」、主催はCIPA。

なぜ統合が必要だったのか

統合の背景には、日本の写真産業が直面していた構造変化がある。

  • デジタルカメラ市場の成熟:2010年はコンパクトデジタルカメラの出荷がピークに達した年であり、市場は成長から成熟へと移行しつつあった。二つの展示会を別々に維持する余裕が薄れていた。
  • 国際的プレゼンスの強化:分散した展示会よりも、統合した大型展示会の方が国際的な注目を集めやすい。Photokinaに次ぐ「アジア最大の写真展示会」としての地位を確立する意図があった。
  • 運営の効率化:二つの展示会の運営を一本化することで、出展社・来場者双方の利便性を高め、運営コストを削減する狙いがあった。

CP+の成長(2010年代)

初期の規模と位置づけ

CP+の初回(CP+ 2010)は、パシフィコ横浜で開催された。当初の出展社数は約100社、来場者数は約4〜5万人程度であった。Photokinaの1,400社超、17万人超と比べると、まだ規模は小さかった。

初期のCP+は、明確に「日本国内向け」の色彩が強かった。出展社の大半は日本メーカーとその関連企業であり、来場者もほぼ日本人であった。海外メディアの注目度も限定的で、「Photokinaのアジア版」というよりは「日本のカメラファン向けのイベント」という位置づけであった。

出展社と来場者の推移

CP+は年を追うごとに規模を拡大していった。

  • 2012年:来場者数が5万人を超え、着実な成長を示した。
  • 2015年:来場者数が約6万7千人に達し、出展社数も増加傾向を続けた。
  • 2017年:来場者数が約6万8千人を記録。海外出展社の比率が少しずつ上昇し始めた。
  • 2019年:来場者数は約7万人に迫り、CP+史上最大規模となった。

出展社構成の変化

2010年代を通じて、CP+の出展社構成には注目すべき変化があった。

  • 日本の大手カメラメーカー(Canon、Nikon、Sony、Fujifilm、OM Digital Solutions、Panasonic等)が常に最大のブースを構え、新製品のハンズオン体験を提供。これがCP+の最大の集客力であった。
  • レンズメーカー(Tamron、Sigma、Tokina等)の存在感が年々増大。特にSigmaは、CP+を自社の最重要発表の場として位置づけた。
  • 三脚・アクセサリーメーカー(Manfrotto、Gitzo等)が安定的に出展。
  • 中国メーカーの参入:2010年代後半から、中国のレンズメーカー(Viltrox、7Artisans、TTArtisan等)やアクセサリーメーカーの出展が増加し始めた。当初は小さなブースであったが、年々存在感を増していった。
  • ストロボ・照明メーカー:Godox、Profoto等の出展が見られるようになった。

COVID-19と転機(2020–2022年)

CP+ 2020の中止

2020年2月、CP+ 2020は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて開催中止を決定した。これは日本国内で最も早い時期の大型イベント中止決定の一つであり、その後のイベント中止の連鎖の先駆けとなった。

オンライン開催(2021–2022年)

CP+はCOVID-19の影響を受け、2021年と2022年はオンライン開催(一部ハイブリッド)となった。メーカー各社がオンラインでプレゼンテーションやデモンストレーションを配信する形式であった。

オンライン開催は、海外からのアクセシビリティを向上させるという意外な副産物をもたらした。日本に渡航しなくても、世界中からCP+のコンテンツに触れられるようになったのである。


「世界唯一」の大規模写真展示会へ(2023年以降)

Photokina亡き後のCP+

2020年のPhotokina無期限休止により、CP+は意図せずして「世界で唯一残った大規模写真専門展示会」となった。この地位の変化は、CP+の国際的な位置づけを劇的に変えた。

海外メディアの注目度の急上昇:PetaPixel、DPReview(2023年に一度閉鎖後、復活)、Digital Camera World等の海外写真メディアが、CP+を「年間最重要の写真展示会」として報道するようになった。2026年のCP+に関しては、PetaPixelが「The 2026 CP+ Photo Show in Japan Will Be the Biggest Ever」と報じている。

海外出展社の増加:CP+ 2023以降、海外からの出展社が顕著に増加した。特に目立つのは以下の傾向である。

  • 中国メーカーの大規模参入:レンズメーカー(Viltrox、7Artisans、TTArtisan、Laowa、NiSi等)、ジンバルメーカー(DJI、Zhiyun等)、照明メーカー(Godox、Aputure等)、三脚メーカー(Leofoto等)、映像アクセサリーメーカー(SmallRig、Tilta等)が軒並みCP+に出展するようになった。
  • 韓国メーカー:Samyang(北米ではRokinonブランドでも知られる)がCP+での新製品発表を行うようになった。
  • 欧州メーカー:Leica、Hasselblad(DJI傘下)等も継続的に出展。

CP+ 2025–2026の規模

2025〜2026年のCP+は、過去最大規模を更新し続けている。CP+ 2025は来場者数55,791人、オンライン視聴約42万人。CP+ 2026(2026年2月26日〜3月1日)は、出展社数149社(過去最多、45社が新規、38のグローバルブランドを含む)、来場者数58,924人を記録した(PetaPixel報道)。海外出展社の比率が特に上昇しており、国際的な来場者も増加している。

CIPA(カメラ映像機器工業会)の会員企業であるキヤノン、ニコン、ソニー、富士フイルム、OM Digital Solutions、パナソニック等が大型ブースを構えるという基本構造は変わらないが、それに加えて「非日本メーカー」の存在感が年々大きくなっている点が、2020年代のCP+を特徴づける最大の変化である。


CP+の強みと課題

強み

  • CIPAの会員企業が直接参加:世界のカメラ市場シェアの大部分を占める日本メーカーが一堂に会する。これはCP+にしかない最大の強みである。
  • ハンズオン体験の充実:CP+は新製品の実機に触れる機会を重視しており、来場者は発売前のカメラやレンズを実際に試すことができる。オンラインイベントでは代替できない価値である。
  • 日本市場のアクセス:日本は依然として世界有数のカメラ消費市場であり、海外メーカーにとって日本市場への参入・認知度向上のためにCP+出展は戦略的に重要である。
  • アクセスの良さ:パシフィコ横浜は成田・羽田両空港からアクセスが良く、周辺の宿泊施設も充実している。

課題

  • 国際化の深化:CP+は急速に国際化しつつあるが、展示会場のサイネージ、セミナーの言語対応、公式ウェブサイトの多言語化など、さらなる対応が求められる。
  • 映像制作分野との統合:「写真」と「映像」の境界が曖昧になる中、CP+が映像制作機材をどこまで取り込むかは戦略的な判断が必要である。Photokinaの轍を踏まないためにも、カテゴリーの拡張は重要な課題である。
  • 開催時期:CP+は毎年2月末〜3月に開催されるが、NAB Show(4月)との近接性をどう考えるかは出展社にとって戦略的な問題である。
  • 会場キャパシティ:パシフィコ横浜の展示ホールには物理的な上限があり、出展社数の増加に対応するためには、会場の拡張やサテライト会場の活用が必要になる可能性がある。

既存CP+連載との関係

本連載とは別に、CP+の詳細な解説は既存の連載記事で扱っている。CP+の歴史、出展社数・入場者数の推移、出展社の傾向、パシフィコ横浜のアクセスガイド、日本市場への参入ガイドなどは、そちらを参照されたい。

本章では、CP+を「世界の写真展示会史」の文脈の中に位置づけ、Photokina・PMA Showの消滅という歴史的文脈の中でCP+が担うことになった役割を分析した。


次章予告

第5章では、視点を「写真」から「映像」に広げる。NAB Show(ラスベガス)とIBC(アムステルダム)——放送・映像技術の二大展示会が、なぜ写真産業にとっても無視できない存在になったのかを検証する。シネマカメラ、シネレンズ、ジンバル、ワイヤレス伝送といった製品カテゴリーが、「写真の展示会」ではなく「映像の展示会」で発表されるようになった構造的理由を掘り下げる。


展示会クロニクル——写真映像産業を動かす見本市の歴史と未来 ガイドページ

第Ⅰ部:展示会総論

第Ⅱ部:世界の主要展示会——個別史

第Ⅲ部:出展社分析と産業予測


典拠

  • CIPA (Camera & Imaging Products Association), CP+ Official Website, https://www.cpplus.jp/
  • PetaPixel, “The 2026 CP+ Photo Show in Japan Will Be the Biggest Ever,” 2026.
  • CIPA, Digital Camera Shipment Statistics, 2010–2025.
  • CP+ 公式報道資料(各年度プレスリリース).

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