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出展社から読み解く分野別業界予測——カメラ・レンズ・ジンバル・三脚・アクセサリー | 展示会クロニクル(10)

産業分析
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展示会クロニクル——写真映像産業を動かす見本市の歴史と未来(10)

※Adobe Firefly 及び Google Gemini 3.1 (w/ Nano Banana2 )により生成したイメージ画像です。

第Ⅲ部:出展社分析と産業予測

展示会のフロアを歩けば、業界の未来が見える。どのカテゴリーのブースが増えているか、どの企業が撤退したか、どの国のメーカーが新たに参入してきたか——展示会の出展構成は、写真映像産業の構造変化を映し出すリアルタイムの指標である。

本章では、前章までに蓄積した展示会データと出展動向をもとに、カメラボディ、レンズ、ジンバル・スタビライザー、三脚、その他カメラアクセサリーの5分野について、2026年以降の業界予測を展開する。予測の根拠は、展示会の出展社数・業種構成の推移、各分野の市場データ、そして展示会で観察される技術トレンドである。


1. カメラボディ——「成熟」と「新規参入」の二極化

1-1. 展示会が示す現状

CP+、NAB Show、IBCの出展社リストを経年で追うと、カメラボディメーカーの構成に顕著な変化が見られる。

日本メーカーの安定的プレゼンス。 キヤノン、ニコン、ソニー、富士フイルム、パナソニック、OMデジタルソリューションズの6社は、CP+とNAB Showの常連である。2025年時点でも、これらのメーカーがレンズ交換式カメラ市場の95%以上を占めている。CIPAデータによれば、2025年のレンズ交換式カメラ出荷台数は約700万台(前年比約6%増)であり、うちミラーレスは約631万台(前年比約12.5%増)と堅調に推移している。

中国メーカーの台頭。 NAB Show 2024–2025では、DJI、Blackmagic Design(豪州だがアジア太平洋圏)に加え、Z CAM、Kinefinity、Xiaomi(小米)関連のブースが注目を集めた。Vision & Image Shanghai 2025では、中国メーカーのカメラボディ展示が目立ち始めている。姉妹連載「カメラ覇権の地殻変動」第13章で詳述した通り、DJIのOsmo Action 5 ProやXiaomiの14 Ultra Camera Kitなど、「カメラ的スマートフォン」と「スマートフォン的カメラ」の境界が曖昧になりつつある。

コンパクトカメラの復権。 CIPAの2025年データは衝撃的だった。固定レンズ式カメラ(コンパクトカメラ)の出荷台数は前年比30%増の約244万台に達した。2026年のCIPA予測では277万台(さらに13.6%増)が見込まれている。ソニーのRX100シリーズ後継機、富士フイルムのX100VI、リコーのGR IIIxの供給不足は、需要の強さを物語る。展示会でもコンパクトカメラへの関心が急上昇しており、CP+ 2025では富士フイルムのX100VIブースに長蛇の列ができた。

1-2. 分野別予測

ミラーレス一眼市場:2026年は微減の可能性。 CIPAは2026年のレンズ交換式カメラ出荷台数を約682万台と予測しており、2025年の約700万台から2.6%の減少となる。これは「レンズ交換式カメラ市場の成熟」を示唆する。フルサイズ以上のカメラは2025年に前年比98.4%とわずかに減少した一方、APS-C+マイクロフォーサーズは109.3%と増加した。市場の成長を牽引しているのは、フルサイズではなく小型センサー機である。

コンパクトカメラ:成長継続。 2026年も二桁成長が見込まれる。TikTokやInstagramでの「フィルム風写真」「ポイント&シュート」ブームが需要を押し上げている。ただし、成長率は2025年の30%増から13.6%増に鈍化する見込みであり、「爆発的成長」から「安定成長」への移行期にある。

中国メーカーのカメラボディ参入:段階的拡大。 2026–2028年にかけて、DJIがシネマカメララインを拡充し、Xiaomiがカメラ専用機市場に接近する可能性がある。ただし、レンズ交換式カメラの参入障壁(マウント規格、レンズエコシステム、AF技術)は依然として高く、日本メーカーの支配が短期的に崩れる可能性は低い。展示会での中国メーカーのカメラボディ展示は「観察すべきトレンド」であり、「差し迫った脅威」ではない。

一眼レフ(DSLR):事実上の終焉。 CIPAの2025年データでは、DSLR出荷台数は約69万台(前年比69.3%)まで落ち込んだ。2024年の約100万台から1年で30%以上が消失した計算である。2026年のCIPA予測ではレンズ交換式カメラ全体が約682万台(2025年比97.4%)に減少するが、DSLRの個別予測は公表されていない。減少トレンドが継続すれば、DSLR出荷台数は50万台前後にまで縮小すると見られる。展示会でのDSLR展示はほぼ姿を消しており、CP+ 2025ではキヤノンのEOS-1D X Mark III関連展示がわずかに残る程度だった。DSLRは2027–2028年に出荷台数が50万台を割り込み、統計上の独立カテゴリーとしての意味を失う可能性が高い。

1-3. 展示会への示唆

カメラボディ分野では、展示会の役割が「新製品発表の場」から「体験提供の場」へとシフトしている。オンラインで発表し、展示会でハンズオン体験を提供する——このハイブリッドモデルが定着しつつある。また、中国メーカーのカメラボディ展示が増加することで、NAB ShowやVision & Image Shanghaiの出展構成が変化していくことが予想される。


2. レンズ——中国勢の攻勢と日本メーカーの「高付加価値シフト」

2-1. 展示会が示す現状

レンズ市場の展示会動向は、カメラボディ以上に劇的な変化を見せている。

中国レンズメーカーの爆発的増加。 CP+ 2024–2025では、Viltrox、TTArtisan、7Artisans、Laowa(Venus Optics)、Meike、Pergear、NiSi、Sirui(シネレンズ)などの中国レンズメーカーが大量に出展した。Vision & Image Shanghai 2025では、レンズメーカーの出展数が過去最多を記録した。これらのメーカーは、MF単焦点レンズ→AF単焦点レンズ→AFズームレンズ→シネレンズと、段階的に製品ラインを拡大してきた。

韓国Samyangの変貌。 姉妹連載「Samyang Optics」で詳述した通り、SamyangはSchneider-Kreuznachとの提携を通じて「プレミアムAFレンズ」市場に参入した。CP+ 2025およびNAB Show 2025では、Schneider-Kreuznach x Samyangブランドのプロトタイプが公開され、業界の注目を集めた。

日本メーカーの高付加価値化。 キヤノンのRFマウントレンズ、ニコンのNIKKOR Zレンズ、ソニーのGマスターレンズは、いずれも高価格帯に軸足を移している。シグマとタムロンは、サードパーティレンズメーカーとしての地位を維持しつつ、中国メーカーとの差別化を「光学性能」と「AF精度」で図っている。

2-2. 分野別予測

交換レンズ全体:安定推移。 CIPAの2025年データでは、交換レンズの出荷本数は約1,060万本(前年比約2.8%増)。2026年のCIPA予測では約1,051万本とほぼ横ばいである。レンズ市場はカメラボディ以上に安定しているが、内訳は大きく変化している

中国メーカーのシェア拡大:2030年までに20–30%の可能性。 中国レンズメーカーは現在、グローバル市場の推定10–15%を占めていると見られる。展示会での出展増加、Amazon等のEC販売チャネルの拡大、AF対応レンズの品質向上を考慮すると、2030年までにシェアが20–30%に達する可能性がある。特にAPS-C用AF単焦点レンズ、MF単焦点レンズ、マニュアルシネレンズの3カテゴリーでは、すでに中国メーカーが市場をリードしている

シネレンズ市場:民主化の加速。 NAB ShowとCine Gear Expoでは、$1,000以下のフルフレームシネレンズセットが中国メーカーから大量に出展されている。DZOFilm、NiSi、Sirui、Viltroxのシネレンズは、かつてZeissやCookが独占していた市場を下から切り崩している。姉妹連載「The Anamorphic Chronicle」で詳述した通り、アナモルフィックレンズの民主化はその象徴例である。2026–2030年にかけて、シネレンズの平均価格はさらに低下し、中国メーカーのプレゼンスは拡大する。

日本メーカーの戦略:高付加価値+エコシステム。 キヤノン、ニコン、ソニーは、純正レンズの高付加価値化(RF 28-70mm F2L USM、NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noctなど)と、マウントエコシステムの囲い込みで差別化を図る。サードパーティに対するマウント情報の開放度が、今後のレンズ市場の構造を左右する重要な変数である。

Samyang / Schneider-Kreuznach:ミッドプレミアムの確立。 2026–2028年にかけて、Schneider-Kreuznach x Samyangブランドの本格展開が予想される。価格帯$500–$1,500のAFレンズ市場で、日本のシグマ・タムロンとの直接競合が激化する。

2-3. 展示会への示唆

レンズ分野では、展示会のフロア構成が「日本メーカー中心」から「多国籍」へと変化している。CP+でも中国レンズメーカーの出展が増加しており、Vision & Image Shanghaiでは中国メーカーがフロアの過半を占める。展示会は「レンズ市場の多極化」を可視化する場となっている。


3. ジンバル・スタビライザー——DJIの覇権と競合の模索

3-1. 展示会が示す現状

ジンバル・スタビライザー市場は、DJIの圧倒的シェアが特徴である。NAB Show、IBC、InterBEEのいずれでも、DJIのRonin/RSシリーズが展示の中心を占める。

DJIの支配。 DJI Ronin 4D、RS 4、RS 4 Proは、シネマ向けからYouTuber向けまで幅広いセグメントをカバーする。NAB Show 2025でのDJIブースは年々拡大しており、ジンバルだけでなくカメラシステム全体の展示に移行している。

中国競合メーカー。 Zhiyun(智雲)、FeiyuTech(飛宇科技)、Moza(魔爪)は、DJIの価格帯の下を狙う戦略をとってきた。しかし、DJIがRS 3 Miniなどの低価格モデルを投入したことで、差別化が困難になっている。NAB Show 2024–2025では、これらの競合メーカーのブース面積がやや縮小傾向にある。

日本メーカーの不在。 かつてソニーやキヤノンが手ブレ補正技術を持っていたが、外付けジンバルの市場には参入していない。日本メーカーの戦略は「ボディ内手ブレ補正(IBIS)の高性能化」であり、外付けジンバルの需要を減少させる方向に働いている。ソニーα7S IIIやキヤノンEOS R5 Mark IIのIBIS性能向上は、一部のユースケースで外付けジンバルの必要性を低下させた。

3-2. 分野別予測

市場規模:緩やかな成長。 ジンバル・スタビライザー市場は、映像制作の民主化に伴い拡大してきたが、成長率は鈍化傾向にある。IBISの性能向上が外付けジンバルの需要を一部侵食しているためである。

DJI:一人勝ちの継続。 DJIのジンバル市場シェアは推定40–50%とされ、2026年以降もこのポジションを維持する可能性が高い。DJI Ronin 4Dのような「ジンバル一体型カメラシステム」は、ジンバルとカメラの境界を曖昧にする新カテゴリーである。

競合メーカー:ニッチ化。 Zhiyun、Moza、FeiyuTechは、DJIとの正面衝突を避け、特定ユースケース(車載撮影、マクロ撮影、VR撮影など)に特化したニッチ製品にシフトする可能性がある。Zhiyunはクレーンシリーズで映像プロ向け、FeiyuTechはアクションカメラ用途でそれぞれ差別化を図っている。

IBIS vs. ジンバル:共存。 ボディ内手ブレ補正の進化は「ジンバルが不要になる」のではなく「ジンバルが必要なシーンが変わる」ことを意味する。歩き撮り、ランニングショット、車載撮影など、IBISだけではカバーできないシーンは残り続ける。しかし、「とりあえずジンバルを買う」という行動は減少し、「本当に必要な人だけが買う」市場に移行する。

3-3. 展示会への示唆

ジンバル・スタビライザー分野の展示は、「単体製品」から「ワークフロー提案」へとシフトしている。DJIのNAB Showブースでは、Ronin 4D+LiDAR+DaVinci Resolveの統合ワークフローが展示される。展示会は「ジンバルを売る場」から「撮影ワークフロー全体を提案する場」へと変化している。


4. 三脚——中国メーカーの世界制覇と「ブランド戦争」

4-1. 展示会が示す現状

三脚市場は、中華三脚クロニクルで詳述した通り、中国メーカーの台頭が最も顕著な分野である。

中国メーカーの圧倒的プレゼンス。 CP+ 2024–2025では、Leofoto、Sirui、Benro、iFootage、SmallRigの三脚関連ブースが目立った。Vision & Image Shanghai 2025では、三脚メーカーの出展数が100社を超えた。NAB Showでも、中国メーカーのビデオ三脚・フルードヘッドの展示が増加している。

欧州メーカーの苦境。 Videndum plc(旧Vitec Group、Manfrotto・Gitzoの親会社)は、2024–2025年にかけて業績が低迷した。Manfrotto / Gitzoの展示会プレゼンスは維持されているが、かつてのような「三脚業界のリーダー」としての存在感は薄れつつある。SLIK(日本、ケンコー・トキナー傘下)やVelbon(日本、ハクバ写真産業傘下)も、中国メーカーとの価格競争に苦しんでいる。

SmallRigの三脚参入。 元来はカメラリグ・ケージのメーカーだったSmallRigが、2023年以降に三脚・一脚市場に本格参入した。NAB Show 2025では、SmallRigの三脚ラインナップが展示され、既存の三脚メーカーに新たな競合圧力をもたらしている。

4-2. 分野別予測

中国メーカー:シェア60–70%へ。 中国メーカーは、OEM/ODM時代を経て自社ブランドを確立し、グローバル市場のシェアを拡大し続けている。2026–2030年にかけて、スチル用三脚市場では中国メーカーのシェアが60–70%に達する可能性がある。Leofoto、Sirui、Benroの3社がプレミアム帯で、iFootage、SmallRig、Ulanziが中価格帯で、さらに多数のノーブランドメーカーがAmazon等のEC低価格帯でそれぞれポジションを確立する。

欧州メーカー:プレミアム特化。 Gitzoは「Made in Italy」のブランド価値と、世界初のカーボンファイバー三脚という歴史的遺産を武器に、超プレミアム帯($500以上)に特化する戦略を取らざるを得ない。Manfrottoは中価格帯で中国メーカーとの競合が激化しており、ブランド力と流通ネットワークの維持が生存の鍵となる。

日本メーカー:再編の可能性。 SLIK(ケンコー・トキナー)とVelbon(ハクバ写真産業)は、中国メーカーの攻勢を受けて国内市場でもシェアを失いつつある。両社の三脚事業は、親会社の多角化戦略の一部として存続しているが、単独での収益性は厳しい。2026–2030年にかけて、日本の三脚メーカーの事業再編や、中国メーカーへのOEM/ODMシフトが加速する可能性がある。

ビデオ三脚・フルードヘッド:成長市場。 ミラーレスカメラの動画機能強化に伴い、ビデオ三脚とフルードヘッドの需要は拡大している。Sachtler、Vinten(いずれもVidendum傘下)が支配してきたプロ向けビデオ三脚市場にも、中国メーカー(特にSmallRig、iFootage、Leofoto)が参入しつつある。

4-3. 展示会への示唆

三脚分野では、CP+やVision & Image Shanghaiでの中国メーカーのプレゼンスが年々拡大している。「中華三脚クロニクル」で描いた中国三脚産業の成長曲線は、展示会のフロア構成の変化と完全に一致している。展示会は、三脚市場の「中国化」を年次で記録する定点観測装置として機能している。


5. カメラアクセサリー——SmallRig帝国とエコシステムの拡大

5-1. 展示会が示す現状

カメラアクセサリー市場は、中華撮影機材クロニクルで詳述した通り、中国メーカーの支配が最も進んだ分野である。

SmallRigの帝国。 カメラケージ、リグ、クランプ、マジックアーム、モニターマウント——SmallRigは「カメラ周辺機器のIKEA」として、映像制作者のワークフローに不可欠な存在となった。NAB Show 2025では、SmallRigのブースが年々拡大し、三脚・照明・モニターまで含むフルエコシステムの展示を行っている。

照明機器。 Godox、Aputure / Amaran(2024年にAmaranがAputureから独立ブランドとして分離)、Nanlite(Nanguangの海外ブランド)は、NAB ShowとIBCの照明セクションを席巻している。LED照明の市場は中国メーカーがほぼ独占しており、日本メーカー(パナソニック照明、ソニーのプロ照明)やドイツのARRIは、ハイエンドのシネマ照明に特化している。

ワイヤレスビデオ伝送。 Hollyland(好利来)、Accsoon(致迅)、DJIは、ワイヤレスビデオ伝送デバイスの展示を年々拡大している。NAB Show 2025では、Accsoon CineViewシリーズやDJI Transmission 2が注目を集めた。Teradekが支配していたプロ向けワイヤレス市場にも、中国メーカーが$200–$500の価格帯で参入している。

モニター・レコーダー。 Atomos(豪州)が長年支配してきたフィールドモニター・レコーダー市場に、SmallRig、Feelworld、Portkeys(中国)が挑戦している。NAB Show 2025では、SmallRigの5.5インチ4Kモニターが話題となった。

5-2. 分野別予測

SmallRig:総合カメラアクセサリーメーカーへ。 SmallRigは2026–2030年にかけて、ケージ・リグに留まらず、三脚、照明、モニター、マイク、バッテリーを含む「ワンストップ」のカメラアクセサリーブランドへと進化する可能性が高い。展示会でのSmallRigブースは、現在の「映像制作アクセサリー」から「撮影ソリューション全体」へと展示範囲を拡大していくだろう。

LED照明:市場飽和と差別化。 LED照明市場は中国メーカー間の競争が激化しており、価格競争による利益率の低下が予想される。Godox、Aputure、Nanliteの3社は、製品ラインの差別化(Godoxはストロボ統合、Aputureはシネマ照明特化、Nanliteはコスパ重視)で住み分けを図っているが、長期的には統合・淘汰が起きる可能性がある。

ワイヤレスビデオ伝送:低価格化の加速。 Hollylandの$200前後のワイヤレス伝送デバイスが市場を席巻しつつあり、Teradekの$2,000–$5,000帯の製品との価格差は10倍以上に開いている。2026–2030年にかけて、プロ向けを除くワイヤレスビデオ伝送市場は中国メーカーがほぼ独占する。

カメラバッグ。 Peak Design(米国)がデザイン主導で市場を牽引しているが、中国メーカー(PGYTECH、Ulanzi、K&F Concept)が「Peak Designキラー」を投入しつつある。展示会での中国製カメラバッグの品質向上は目覚ましく、2030年には中国メーカーのシェアが50%を超える可能性がある。

5-3. 展示会への示唆

カメラアクセサリー分野は、展示会の「隠れた主役」である。カメラボディやレンズが主役に見えるが、展示会のフロア面積で見ると、アクセサリーメーカーの合計ブース面積はカメラボディメーカーの合計を上回ることがある。NAB Show 2025では、アクセサリー関連の出展社数がカメラメーカーの10倍以上だった。展示会は「アクセサリーのエコシステム」を俯瞰できるほぼ唯一の場である。


6. 分野横断的トレンド——5つの構造変化

6-1. 「中国化」の深化

5分野すべてにおいて、中国メーカーのプレゼンスが拡大している。この「中国化」は、単なる低価格品の氾濫ではなく、品質の向上、独自技術の開発、ブランドの確立を伴う構造的変化である。展示会のフロアを歩けば、2010年代には見られなかった「中国メーカーのプレミアムブース」が増加していることに気づく。

6-2. 「コンバージェンス」——分野間の境界消失

カメラとジンバルの融合(DJI Ronin 4D)、三脚とリグの融合(SmallRig)、照明とモニターの統合(Aputure)——分野間の境界が消失しつつある。展示会でも、かつてはカメラゾーン、レンズゾーン、アクセサリーゾーンと明確に分かれていた展示構成が、「ワークフロー全体を提示するブース」へと変化している。

6-3. 「AIの浸透」

C2PA(Content Credentials)対応カメラ、AIベースのAF、AIノイズ除去、AIベースのカラーグレーディング——AI技術は展示会での注目トピックとして急浮上している。NAB Show 2025では、AI関連の出展が前年比で大幅に増加した。2026年以降、AIは展示会のあらゆる分野に浸透する。Fstoppersの2026年予測でも、「C2PA署名カメラのフラッグシップ以外への拡大」が最重要トレンドとして挙げられている。

6-4. 「サステナビリティ」

欧州を中心に、カメラ機材の環境負荷に対する関心が高まっている。IBCでは「サステナブル放送」セッションが定期的に開催され、製品パッケージの簡素化、リサイクル素材の使用、修理可能性の向上が議論されている。2026年以降、展示会でのサステナビリティ関連展示は増加する。

6-5. 「D2C(Direct to Consumer)」の台頭

中国メーカーの多くは、展示会での知名度向上→Amazon / 自社EC直販という「展示会→D2C」モデルを採用している。伝統的なメーカー→代理店→小売店の流通チェーンを迂回するこのモデルは、展示会の「B2B商談」機能に変化をもたらす。展示会は「代理店を探す場」から「消費者と直接つながる場」へと、一部のメーカーにとっては機能が変化しつつある。


7. 総合予測——2026–2030年のカメラ機材市場

7-1. 市場規模予測

Global Market Insightsのレポートによれば、グローバルデジタルカメラ市場は2025年の244億ドルから2035年の418億ドルへ、年平均成長率(CAGR)6%で成長すると予測されている。この成長は、ミラーレスカメラの高付加価値化、コンパクトカメラの復権、映像制作市場の拡大によって駆動される。

カメラボディ本体よりも、レンズ、アクセサリー、照明、モニタリング機器を含む「エコシステム全体」の市場規模はさらに大きい。展示会のフロア構成がアクセサリー偏重にシフトしているのは、市場の重心がカメラボディからエコシステム全体へと移動していることの反映である。

7-2. 分野別サマリー

分野2026–2030年の見通し主なプレイヤー変動展示会への影響
カメラボディミラーレス微減→安定、コンパクト成長継続、DSLR事実上終焉日本6社の支配継続。中国メーカーはシネマ・アクション領域で段階的参入体験提供の場へシフト。コンパクトカメラ展示の増加
レンズ全体横ばい。中国メーカーのシェア拡大(20–30%へ)中国AF対応レンズの品質向上。Samyang/Schneider-Kreuznachの挑戦多国籍化。CP+でも中国レンズ出展が増加
ジンバル緩やかな成長。IBIS進化による一部需要侵食DJI一人勝ち継続。競合はニッチ化ワークフロー提案型展示へ
三脚中国メーカー60–70%シェアへLeofoto/Sirui/Benroがプレミアム帯確立。欧州メーカーは超高級帯に退避展示会フロアの「中国化」が最も顕著な分野
アクセサリーSmallRig帝国の拡大。LED照明は飽和へSmallRigがワンストップブランドへ。ワイヤレス伝送は中国独占展示会の「隠れた主役」。フロア面積比で最大カテゴリー

7-3. 日本人が知らない世界の潮流

本章の分析を通じて浮かび上がるのは、日本国内からは見えにくい以下の変化である。

第一に、中国メーカーの「品質革命」は完了しつつある。 2010年代には「安かろう悪かろう」だった中国製カメラ機材は、2020年代半ばには「安くて良い」を超え、「日本メーカーと同等かそれ以上」の領域に入りつつある。展示会での中国メーカーのブース品質(デザイン、展示方法、スタッフの専門性)も年々向上しており、これは製品品質の向上と連動している。

第二に、カメラ機材市場の重心は「ボディ」から「エコシステム」へ移動している。 カメラボディ自体の出荷台数は横ばい〜微減だが、レンズ、アクセサリー、照明、モニタリング機器を含むエコシステムの市場は拡大している。展示会のフロア構成の変化は、この市場重心の移動を如実に反映している。

第三に、D2Cモデルの台頭が流通構造を変えている。 中国メーカーが展示会で知名度を獲得し、Amazon等のEC直販で販売する「展示会→D2C」モデルは、伝統的なメーカー→代理店→小売店の流通チェーンを脅かしている。日本の映像機器商社(銀一、浅沼商会、ケンコー・トキナー)は、このモデルへの対応を迫られている。

次章(最終章)では、展示会そのものの将来予測を行う。デジタル化、地域化、専門化の3つのベクトルから、写真映像産業の展示会がどのような姿に進化していくかを展望する。


展示会クロニクル——写真映像産業を動かす見本市の歴史と未来 ガイドページ

第Ⅰ部:展示会総論

第Ⅱ部:世界の主要展示会——個別史

第Ⅲ部:出展社分析と産業予測


参考・典拠一覧

  1. CIPA(一般社団法人カメラ映像機器工業会)「デジタルカメラ生産出荷実績」各年版: https://www.cipa.jp/
  2. CIPA「2026年需要見通し」(2026年2月26日公表): https://www.cipa.jp/documents/e/PRESSRELEASE20260226_e.pdf
  3. DPReview「CIPA Data 2025: Camera & Lens Shipments — Fixed Lens Cameras & Interchangeable」: https://www.dpreview.com/articles/2386206926/
  4. Digital Camera World「The compact camera trend isn’t going away — but Japan’s experts warn that mirrorless may decline」(2026年2月): https://www.digitalcameraworld.com/
  5. Global Market Insights「Digital Camera Market Size & Share 2026–2035」: https://www.gminsights.com/industry-analysis/digital-camera-market
  6. Fstoppers「11 Predictions for the Photography Industry in 2026」(2026年1月): https://fstoppers.com/opinion/11-predictions-photography-industry-2026-720319
  7. NAB Show 公式サイト「NAB Show 2025 Exhibitor List」: https://nabshow.com/
  8. IBC 公式サイト「IBC2025 Exhibitor Directory」: https://show.ibc.org/
  9. CP+ 公式サイト「CP+ 2025出展社一覧」: https://www.cpplus.jp/
  10. Vision & Image Shanghai 2025 公式報告: http://www.camerashanghai.com/
  11. Videndum plc(旧Vitec Group)Annual Reports: https://videndum.com/investors/SmallRig 公式サイト: https://www.smallrig.com/
  12. DJI 公式サイト「DJI Professional」: https://www.dji.com/
  13. Hollyland 公式サイト: https://www.hollyland.com/Accsoon 公式サイト: https://www.accsoon.com/

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