なぜ同じ「RAW」で画質差が生まれるのか|内部収録RAWと外部ProRes RAWの技術的差異|動画RAWコーデック解剖(3)

動画RAWコーデック解剖(3)

「RAWで撮れば、どのカメラでも同じ高画質が手に入る」。そう思っている人は少なくない。RAWという言葉には、加工されていない、生の、いちばん良い状態というイメージがつきまとう。だが現場を知る人ほど、この思い込みには首をかしげる。同じ被写体を、同じRAWという看板のもとで記録しても、カメラや記録経路が変われば、出てくる画質は確かに変わるのだ。

なぜ同じRAWで差が出るのか。その理由は一つではない。ビット深度、圧縮方式、デベイヤーの有無、センサーの読み出し方、信号が通る経路、そして熱や電力の制約。これらが折り重なって、最終的な画質を決める。本章は、この「RAWの中の格差」を一つずつ分解していく。とくに、同じカメラで内部にRAWを記録する場合と、外部レコーダーへ信号を送ってProRes RAWなどに変換する場合とで、なぜ結果が違いうるのかを技術的に解剖する。

あわせて、読者の疑問のうち、もっとも骨太な一つに正面から答える。「外部レコーダーのRAWは12bitが主流だと言われるが、なぜ16bitではないのか。ハードウェアの限界なのか、それとも別の理由があるのか」。順を追って解いていく。

目次

「RAW=同一品質」という誤解

まず、RAWとは何をしていないかを確認しておく。通常のJPEGや一般的な動画コーデックは、撮影時にホワイトバランスやコントラスト、彩度、シャープネスといった調整を映像に焼き込み、そのうえで圧縮する。いったん焼き込まれた調整は、後から完全には戻せない。これに対しRAWは、センサーが受け取った信号を、そうした現像処理を通す前の段階で保持する。色温度も露出の解釈も、後工程でやり直せる。これがRAWの本質だ。

ここまでは、どのRAWにも共通する。問題は、その「現像前の信号」を、どれだけの精度で、どういう方式で、どの経路を通して記録するかが、製品ごとに大きく違う点にある。RAWという言葉は「現像前である」という状態を指すだけで、「同じ品質である」ことを保証しない。同じ生鮮食品でも、産地や鮮度、保存方法で味が変わるのと似ている。生であることと、良い状態であることは、別の話なのだ。

この章で見ていく差の要因を、先に一覧で示しておく。

  • ビット深度。1画素あたり何段階の明暗を刻めるか。
  • 圧縮方式と圧縮率。どれだけ情報を捨てているか、どういう捨て方か。
  • 部分デベイヤーの有無。純粋なセンサー生データか、途中まで処理した半加工か。
  • センサー読み出しモード。全画素を読むか、間引くか、まとめ読みするか。
  • 信号経路。カメラ内で完結するか、外部へ伝送してから記録するか。
  • 熱と電力の制約。連続記録での発熱が読み出しや処理をどこまで許すか。

これらは互いに絡み合う。一つだけを取り出して優劣を決められるものではない。以下、順に掘り下げる。

ビット深度の差

ビット深度とは、明るさを何段階の数値で表すかを示す値だ。8bitなら256段階、10bitなら1024段階、12bitなら4096段階、14bitなら16384段階、16bitなら65536段階になる。数値が大きいほど、明暗のグラデーションをなめらかに刻める。空のグラデーションや肌の陰影で段差(バンディング)が出にくくなるのは、このビット深度が効いているからだ。

RAWで画質差が生まれる第一の要因が、このビット深度である。ただし、ここには落とし穴がある。「16bitの方が12bitより常に上」とは言い切れないのだ。理由は、ビット深度の数字がエンコード曲線とセットでしか意味を持たないからだが、その原理は後半のQ3で詳しく扱う。ここでは、同じRAWでも記録段のビット深度が製品や経路で変わりうる、という事実だけを押さえておく。

重要なのは、カタログに書かれたビット深度が、どの段階の値を指しているのかを見分けることだ。センサーが信号を読み出す段のビット深度、それを外部へ伝送する段のビット深度、そして最終的にファイルへ書き込む段のビット深度は、必ずしも一致しない。たとえばあるカメラが「16bit RAW出力」とうたっていても、それは伝送経路に載せる信号の深度であって、センサーが本当に16bitで読み出しているとは限らない。この区別を曖昧にしたまま数字だけを比べると、実態を見誤る。

圧縮方式と圧縮率

RAWは無圧縮とは限らない。むしろ実務で使われる動画RAWのほとんどは、なんらかの圧縮を施している。無圧縮では、データ量が現実的な記録メディアに収まらないからだ。ここで、圧縮の「方式」と「率」が画質差を生む。

代表的な方式がウェーブレット変換による圧縮だ。REDのREDCODEが採用してきた方式で、画像を周波数成分に分解し、人間の目が気づきにくい細部から優先的に情報を減らしていく。JPEGなどが使う離散コサイン変換(DCT)とは別系統のアプローチだ。圧縮率を上げれば軽くなるが、その分だけディテールやダイナミックレンジのマージンが削られる。同じREDCODEでも、圧縮率の設定で画質が変わるのはこのためだ。なお、REDCODEはRED One以来ウェーブレットを採用してきたが、KOMODO 6K以降はJPEGと同じDCT系へ移行しており、この変遷は第6章で詳しく扱う。

圧縮率という軸も見逃せない。多くのRAWは、同じコーデックの中に複数のグレードを用意している。高品質で重いものから、軽くて長時間回せるものまで幅がある。ここで一つ、直感に反する事実を挙げておく。RAWだから常に重い、とは限らない。可変ビットレートと効率のよい圧縮を組み合わせると、RAWでありながら中間コーデックより軽くなる場合すらある。この具体例はSonyのX-OCNで顕著なので第9章に譲るが、圧縮方式と圧縮率の設計しだいで、RAWの「重さ」も「画質」も大きく動くということだ。

もう一つの論点が、圧縮が可逆か非可逆かだ。数学的に完全に元へ戻せる可逆圧縮と、一部の情報を捨てる非可逆圧縮では、意味合いが違う。実務の動画RAWの多くは非可逆だが、その捨て方が知覚的に分からない範囲に収まるよう設計されている。これを「視覚可逆」と呼ぶことがある。完全な可逆ではないが、人間の目には劣化が見えない、という考え方だ。メーカーが可逆性を明言しているかどうかは、そのRAWの性格を読むうえで手がかりになる。

部分デベイヤーの有無

RAWの「生っぽさ」にも段階がある。ここを理解すると、同じRAWという言葉の中にある性格の違いが見えてくる。

カメラのセンサーは、多くの場合ベイヤー配列と呼ばれる並びで赤・緑・青のフィルターを画素に割り当てている。各画素は一色分の情報しか持たないので、周囲の画素から不足分を補って、すべての画素にフルカラーを与える処理が必要になる。これがデベイヤー(デモザイク)だ。

純粋なRAWは、このデベイヤーを一切かけず、センサーが読み取ったモザイク状の生データをそのまま記録する。現像はすべて後工程にゆだねられる。自由度は最大だが、扱いには専用の現像が要る。一方で、カメラ内で軽い前処理を済ませてから記録する方式もある。完全な現像はしないが、まったくの生でもない。半加工のRAWだ。この設計は扱いやすさと引き換えに、純粋なRAWよりも後工程の自由度がわずかに狭まる場合がある。

この「どこまで生か」の違いが、RAW同士の性格を分ける。純RAW型は自由度と引き換えに手間とデータ量を要し、最適化RAW型は扱いやすさと軽さを取る。どちらが上という話ではなく、設計思想の違いだ。最適化RAWの代表例であるBlackmagic RAWの詳しい仕組みは第5章で扱う。ここでは、RAWと一口に言っても、生の度合いに幅があるという点を押さえておく。

センサー読み出しモード

同じセンサーでも、どう読み出すかで元になる情報量が変わる。これがRAWの画質差の、かなり根っこにある要因だ。

もっとも情報量が多いのは、全画素をそのまま読み出すフルピクセル読み出しだ。センサーの解像力を最大限に引き出せる。オーバーサンプリングは、出力解像度より多くの画素を読み、それを縮約して高精細で低ノイズな映像を作る方式で、これもフル読み出しの一種と考えてよい。

これに対し、処理負荷や発熱、フレームレートの都合で情報を間引く読み出しもある。ピクセルビニングは隣接する画素をまとめて一つとして扱う方式で、感度やノイズ耐性は上がるが解像感は落ちる。ラインスキップは走査線を飛ばして読む方式で、負荷は軽くなるがモアレや偽色、解像感の低下を招きやすい。

ここが本章の主題に直結する。あるカメラが高フレームレートや高解像度のRAWを実現するために間引き読み出しに切り替えていれば、たとえ記録がRAWでも、元の情報がすでに欠けている。RAWは現像前の信号を保つ仕組みだが、その信号そのものが読み出し段でやせていれば、後からは取り戻せない。同じRAWでも、読み出しモードしだいで土台の質が変わるのだ。そして次に見るように、外部へ信号を伝送する構成では、この読み出しモードの制約がさらに効いてくる。

内部処理と外部出力の信号経路の違い

ここからが、本章がもっとも解剖したい論点だ。同じカメラでRAWを得るにしても、カメラ内で記録するか、外部レコーダーへ信号を送って記録するかで、通る経路が根本的に違う。

カメラ内で完結する内部記録では、センサーの信号は自社設計の画像処理回路を通り、そのままカメラ内のメディアへ書き込まれる。経路が短く、途中で標準規格の伝送に載せ替える必要がない。メーカーは自社のセンサー、プロセッサー、記録方式を一体で設計できるので、信号を落とさずに保持しやすい。

外部出力では、センサーの信号をいったんHDMIやSDIといった標準の映像インターフェースに載せ、ケーブルを通して外部レコーダーへ送る。レコーダー側がその信号を受け取り、ProRes RAWやBlackmagic RAWといった形式に変換して記録する。ここで二つの制約が加わる。一つは、伝送インターフェースの規格に合わせて信号の形を整える必要があること。もう一つは、記録の主導権がカメラメーカーではなくレコーダー側に移ることだ。

この経路の違いが、なぜ画質差になりうるのか。カメラ内完結なら、メーカーは自社の16bit scene-linearのような高精度な内部表現を、外に見せることなくそのまま圧縮記録できる。外部経路では、伝送規格という共通の器に一度収める過程で、記録形式やビット深度がレコーダーの仕様に合わせて決まる。どちらが優れているという単純な話ではないが、「信号をどこで保持し、どこで確定させるか」が違えば、結果が違いうるのは道理だ。この設計思想の差が、内部RAWと外部ProRes RAWの本質的な分かれ目になる。

熱・電力制約が画質に与える影響

見落とされがちだが、熱と電力もRAWの画質を左右する。データ量や記録時間そのものへの影響は第2章で詳しく扱うので、本章は画質への波及に絞る。

センサーを高解像度かつ高フレームレートで読み出し、それを圧縮して記録し続ける処理は、大量の電力を消費し、相応の熱を生む。熱がたまると、機材を保護するために処理を抑える必要が出てくる。その抑制が、読み出しモードの切り替え、すなわち間引きへの後退という形で画質に跳ね返ることがある。前述のとおり、間引き読み出しになれば元の情報がやせる。つまり熱制約は、遠回りに、しかし確実に画質へ影響しうる。

小型のボディほど放熱に不利で、この制約は厳しくなりやすい。逆に、大型で放熱設計に余裕のあるシネマカメラは、高負荷のフル読み出しRAWを長く維持しやすい。同じ系統のセンサーを積んでいても、ボディの熱設計しだいで維持できる画質が変わる。RAWの画質を語るとき、コーデックの仕様表だけでなく、それを支える筐体の設計まで視野に入れる必要がある。

なぜ外部レコーダーRAWは12bitが主流で16bitでないのか

ここで、読者から寄せられた疑問に正面から答える。「外部レコーダーのRAWは12bitが多いと言われるが、なぜ16bitではないのか。ハードウェアの限界か、別の要因か」。結論から言えば、これは単一のボトルネックのせいではない。複数の要因が合わさった、工学的に合理的な帰結だ。三段構えで解いていく。

前提の訂正:帯域不足でもコーデックの上限でもない

まず、よくある二つの説明を退けておく必要がある。「HDMIやSDIの帯域が足りないから16bitを送れない」という説明と、「ProRes RAWなどのコーデックが12bitで頭打ちだから」という説明だ。どちらも一次情報とは整合しない。

伝送帯域から見ていく。HDMI 2.0は最大18Gbps(実効データレートで約14.4Gbps)、HDMI 2.1は最大48Gbps(実効約42.6Gbps)だ。SDIは3G-SDIが2.97Gbps、6G-SDIが5.94Gbps、12G-SDIが11.88Gbps(SMPTE ST 2082-1:2015)である。これらの帯域は、実際に16bitのリニアRAWを伝送できる。その証拠に、後述するSonyのFXシリーズは、まさにこれらの経路で16bit linear RAWを外部へ送っている。帯域は解像度やフレームレートの上限を左右するが、「外部が12bitである主因」ではない。

コーデックの上限についても訂正が要る。ProRes RAWは12bitで頭打ちのフォーマットではない。Library of Congressのフォーマット記述によれば、ProRes RAWは1画像チャンネルあたり最大16bitサンプルに対応する(参考として、ProRes 422は10bit、ProRes 4444は12bitが上限で、これらとは別枠だ)。つまり12bitはコーデックの天井ではなく、現行の実装・実用上の値にすぎない。

主因:動画の読み出し深度と実測ダイナミックレンジ

では本当の主因は何か。二つある。動画時のセンサー読み出しビット深度と、実測ダイナミックレンジとの整合だ。

現行のミラーレスや一眼が静止画のRAWで刻めるビット深度は、多くが最大14bitだ。Sony公式のサポート情報も、電子シャッターや連写など条件によっては14bitから12bitへ下がると明記している。そして動画RAWは、静止画よりはるかに高いフレームレートで画素を読み出し続ける必要があるため、読み出しビット深度は通常12bitかそれ以下に落ちる。高速に読むほど、一画素にかけられる時間が短くなり、深いビット深度を維持しにくくなるからだ。16bitの読み出しモードを持つセンサーがあっても、それは静止画や低フレームレート限定であることが多い。たとえばSonyのIMX455は16bit読み出しモードを備えるが、それは静止画用で、フル解像度では12bit読み出しで最大9.42fps、10bitでも最大21.33fpsにとどまる。動画のフレームレートで16bit読み出しを回すことは、そもそも想定されていない。

もう一つが、実測ダイナミックレンジとの整合だ。ビット深度は、記録すべき明暗の幅、つまりダイナミックレンジに見合った分だけあればよい。現行センサーの実効ダイナミックレンジはおおむね13段から15段程度だ。この幅を後述のログ曲線で記録するなら、12bitで十分な階調を運べる。16bitのリニアが持つ膨大な符号空間は、この用途にはむしろ過剰だ。つまり「動画RAWは12bit前後」というのは、削られた妥協ではなく、実測ダイナミックレンジに対して合理的に選ばれた深度なのだ。

記録段の実情と、通説の反例

記録する側の事情も確認しておく。外部レコーダーの入力仕様を見ると、たとえばAtomosのNinja系は入力を「Video 8/10bit、RAW 最大12bit」と定めている(Atomos公式)。ここでも12bitが出てくるが、これは天井ではなく実用値だ。実際、Sonyの16bit linear出力をAtomosのレコーダーが受ける場合、レコーダー側は視覚可逆の処理でそれを12bit logのRAWへ変換して記録する(Sony Cine公式)。12bit記録でも10bitの4倍の階調を持てるため、実務上はこれで足りるという判断が働いている。

ここで注意したいのが、「外部レコーダー=RAW記録機」という単純化だ。すべての外部レコーダーが、どんなカメラのRAWでもそのまま記録できるわけではない。同じBlackmagic Video Assistでも、機種によって扱いが違う。3Gモデルは10bit 4:2:2のProResやDNxでの収録に限られ、Blackmagic RAWは記録できない。一方、12G HDRモデル(5型・7型)は、対応カメラと組み合わせたときにかぎり、送られてくる信号を12bitのBlackmagic RAWとして記録できる(Blackmagic公式)。外部でRAWになるかどうかは、レコーダーの機種と、接続するカメラの組み合わせ次第なのだ。

そして、通説の重要な反例を明記しておかなければならない。「外部は必ず12bit」ではない。Sonyの公式Cinema Lineチャートによれば、FX3はHDMI経由で16bit RAWを、FX6は12G-SDI経由で16bit RAW(UHD/DCI 4K 60pまで)を、FX9はXDCA-FX9を併用してSDI(BNC)経由で16bit RAWを、それぞれ外部出力する。つまり外部経路そのものが12bitを強制しているわけではない。

ただし、ここにも冷静な但し書きが要る。この16bitは、あくまで出力(伝送)コンテナの深度だ。CineDのラボ検証では、FX6やFX9の実測ダイナミックレンジは旧世代のFS7やFS5と同等であり、動画時のセンサー読み出しが本当に16bitなのかには疑問が残る(Sonyは読み出しモードを非開示だ)。「16bit出力イコール16bit読み出し」ではない。本章はこの区別を強調しておく。出力段の数字と、センサーが実際に読み出している深度は、分けて考えなければならない。

まとめよう。外部レコーダーのRAWが12bit主流なのは、帯域不足でもコーデックの限界でもない。動画時の高速読み出しでセンサーとADCが実質12bit前後になること、そして実測ダイナミックレンジに対して12bit logで十分な階調を運べること。この二つが主因だ。そして例外として、Sonyのフルサイズシネマ系は16bit linearを外部出力する。ただし記録段では12bit logへ変換され、実読み出し深度は非開示だ。だから「外部は一律12bit」と単純化してはならない。

なお、この12bit logがなぜ16bit linear相当の階調を運べるのか、その原理そのものは、X-OCNの16bit scene-linearを扱う第9章で詳しく解説している。本章は一般構図として、内部完結RAWと外部レコーダー経由RAWの違いに焦点を当てた。

具体例:同じ差はどこに現れるか

以上の要因が、実際のカメラでどう現れるかを整理する。ここでは「内部にRAWを記録できるか」「外部へRAWを出力できるか」という軸で、2018年以降の代表的な機種を、ソニー・キヤノン・ニコンの順に並べる。内部と外部で、扱えるRAWの性格がどう変わるかに注目してほしい。

機種(2018年以降)内部RAW記録外部出力RAW内外の主な差・備考
Sony FX3なし(内部はXAVC)HDMIから16bit linear RAW(4.2K/4264×2408)を出力→外部でProRes RAW/BRAW外部専用。RAWを得るには外部レコーダーが必須
Sony FX30なし(内部はXAVC)HDMIから16bit linear RAW(4.7K/4672×2628)を出力→外部でProRes RAW/BRAW外部専用。APS-Cセンサー機
Sony FX6なし(内部はXAVC)12G-SDIから16bit linear RAW(最大DCI 4K60)を直接出力→外部でProRes RAW外部専用。拡張ユニット不要
Sony FX9なし(内部はXAVC)XDCA-FX9+SDIで16bit RAW(4K/2K)を出力→外部でProRes RAW外部専用。拡張ユニットとファームVer.2.0以降が必要
Canon EOS R5CCinema RAW Light(内部記録)HDMIからProRes RAW(最大8K30p、6Kは最大59.94p)を出力→ProRes RAW対応Atomos機で記録内部・外部の双方を選べる代表例。機種別の詳細な数値は第7章で扱う
Canon EOS C80Cinema RAW Light(12bit、最大6K30p。S35クロップ時4.3K60p)HDMIからProRes RAW 6K(17:9・6000×3164、最大59.94p)を出力→ProRes RAW対応Atomos機で記録フルサイズ6K。内部Cinema RAW Lightと外部ProRes RAWの双方を選べる内外両対応型(R5Cに近い)
Nikon Z8N-RAW/ProRes RAW HQ(ともに内部記録)なし(HDMIはクリーンフィードのみ。Atomos対応もモニタリング/カメラ制御用でProRes RAW記録は非対応)内部完結型。内部でRAWを二方式持つ。詳細は第10章
Nikon Z6IIIN-RAW(最大6K60p)/ProRes RAW HQ(最大6K30p)(ともに12bit内部記録)なし(HDMIはクリーンフィードのみ。Atomos対応もモニタリング/カメラ制御用でProRes RAW記録は非対応)フルサイズ。内部完結型。詳細は第10章

この表からいくつかのことが読み取れる。第一に、SonyのFXシリーズのように、そもそも内部にRAWを持たず、RAWを得るには外部レコーダーが前提になる機種があること。この場合、画質は16bit linearの出力をどう受けて記録するかに左右され、記録段では前述のとおり12bit logへ変換される。第二に、Canon EOS R5CやEOS C80のように、内部のCinema RAW Lightと外部のProRes RAWを選べる機種があること。同じカメラでも、内部で完結させるか外部へ出すかで、経路も記録形式も変わる。R5CはHDMIから最大8KのProRes RAWを、C80は最大6KのProRes RAWを外部出力できる。どちらが優れているかは条件しだいであり、一概に「内部が上」「外部が上」とは言えない。この条件依存こそが、本章が繰り返し強調してきた点だ。

第三に、Nikon Z8やZ6IIIのように、RAWを内部で完結させ、外部にはRAW信号を出さない機種があること。ここで注意したいのが、外部レコーダーに「対応」しているという表記の読み方だ。たとえばNikon Z6IIIはAtomos機と接続できるが、その対応はクリーンフィードのモニタリングとカメラ制御までで、ProRes RAWの外部記録には対応しない(Atomos公式)。クリーンフィードは現像処理済みの通常映像であり、デベイヤー前のRAWストリームとは別物だからだ。外部レコーダーがつながること自体は、そのカメラが外部RAWを出せることを意味しない。この点は、本章が扱う内部と外部の違いを読み解くうえで見落としてはならない。

いずれの型であっても、圧縮方式や読み出しモード、熱設計によって画質が左右される点は変わらない。

なお、Canon機における内部RAWと外部RAWの画質の優劣という具体的な問い(読者の疑問Q2)は、Canon固有の実装差として第7章で詳しく扱う。また、X-OCNの16bit linearが外部ProRes RAWやBRAWより画質面で優位かという問い(読者の疑問Q1)は、X-OCN側の視点から第9章で扱う。本章は、それらの土台となる一般原理を提供する役割に徹した。

まとめ

同じRAWでも画質に差が出るのは、RAWという言葉が「現像前である」という状態を指すだけで、精度も方式も経路も保証しないからだ。ビット深度、圧縮方式と圧縮率、デベイヤーの有無、センサー読み出しモード、内部か外部かの信号経路、そして熱と電力の制約。これらが重なって、最終的な画質が決まる。

とりわけ、内部完結RAWと外部レコーダー経由RAWの違いは、単なるビット数の差ではなく、信号をどこで保持し、どこで確定させるかという設計思想の差だ。外部RAWが12bit主流なのも、帯域やコーデックの限界ではなく、動画時の読み出し深度と実測ダイナミックレンジという合理的な理由による。そしてSonyのFXシリーズという反例が示すとおり、「外部は一律12bit」という通説は正確ではない。数字の大小に飛びつく前に、その数字がどの段階の、どういうエンコード曲線の値なのかを見分けること。それが、RAWの画質を正しく読むための第一歩になる。

出典(一次情報)


動画RAWコーデック解剖

  1. RAWとは何か|A/D変換・デベイヤーと「RAWのグラデーション」
  2. RAWの代償|データ量・熱・記録時間・メディア・ワークフロー
  3. なぜ同じ「RAW」で画質差が生まれるのか|内部収録RAWと外部ProRes RAWの技術的差異
  4. ProRes RAW|Apple×Atomosが選んだ「生に近い」設計
  5. Blackmagic RAW(BRAW)|「最適化されたRAW」という発明
  6. REDCODE RAWと特許|動画RAWを縛った知的財産の構造
  7. CanonのRAWコーデック群|Cinema RAWとCinema RAW Light(ST・HQ・LT)
  8. Sony X-OCN 前編|歴史と設計思想(FX5から遡るVENICE・F5/F55の系譜)
  9. Sony X-OCN 後編|ワークフロー・対応ソフトウェア・他RAWとの比較
  10. Nikon N-RAWとTicoRAW|ライセンスRAWという第三の道
  11. その他のRAWフォーマット概観|ARRIRAW・CinemaDNG・Panasonic・DJIほか
  12. 総合比較|「どれだけRAWか」の見取り図と2026年版マトリクス
  13. カラーマネジメントとアーカイブ|ACES・メタデータ駆動現像・長期保存
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