CanonのRAWコーデック群|Cinema RAWとCinema RAW Light(ST・HQ・LT)|動画RAWコーデック解剖(7)

動画RAWコーデック解剖(7)

Canonは初代のCinema RAWから、後発のCinema RAW Lightと、その中で枝分かれする複数のグレードまで、用途と機種に応じて使い分ける道を選んできた。名前が似ているうえに世代で呼称が揺れるため、外から見ると分かりにくい。この章では、Canonが持つRAWの系統を整理し、Cinema RAW Lightのグレード体系(LT/ST/HQ)が何を意味するのか、Cinema EOSとEOS R系で実装がどう違うのかを、Canon公式の仕様に立脚して読み解く。あわせて、読者から寄せられた「内部で記録するRAWと、外部レコーダーで受けるRAWとでは、どちらが高画質なのか」という疑問に、EOS R5 Cを主な例として答える。

目次

Canonが持つ二系統のRAW

Canonの動画RAWには、大きく二つの系統がある。ひとつは初代のCinema RAW、もうひとつが後発のCinema RAW Lightである。

初代Cinema RAWは、拡張子が.RMFで、EOS C500(2012年)で導入された。これは外部レコーダーに記録する非圧縮の4K RAWで、4K 60pを10bitで、2KやHDでは10bitまたは12bitのRGB 4:4:4として出力できた。センサーの出力を素直に外へ出し、大がかりな外部機材で受けるという、当時のハイエンドらしい設計である。第2章で見たとおり、非圧縮RAWはデータ量が大きく、記録にも運用にも重い負担を伴う。

もうひとつのCinema RAW Lightは、拡張子が.CRMで、EOS C200で初めて導入された。名前のとおり軽量化されたRAWで、初代Cinema RAWのおよそ三分の一から五分の一のファイルサイズに収まる。色情報をクロマサブサンプルせずに保持し、RGB 4:4:4に相当する色を残しながら、Canon Log 2で16ストップを超えるダイナミックレンジを扱える。非圧縮の重さと、扱いやすいデータ量との折り合いをつけた形式だと言える。

Cinema RAW Lightのグレード体系

Cinema RAW Lightの分かりにくさは、そのグレード体系にある。同じCinema RAW Lightの中に、データレートの異なる三段階が用意されている。軽い順に、LT(Light)、ST(Standard)、HQ(High Quality)である。現行のCinema EOSの多くは、12bitのCRM LT/ST/HQの三段に対応する。ただし機種やセンサーモードによって選べるグレードは一様ではなく、たとえばEOS C80の6K RAWはLTのみで、同じ6KでもLT/ST/HQを選べるC400とは差がある。

数字で見ると差は明確である。EOS C500 Mark IIのフルフレーム5952×3140、12bit、24pの場合、公式のビットレート例はLTが544Mbps、STが836Mbps、HQが1700Mbpsである。29.97pではHQが2120Mbpsに達するなど、フレームレートが上がればビットレートも上がる。HQはSTのおよそ二倍、STはLTのおよそ一・五倍という関係で、画質を優先するほどデータ量は膨らむ。この関係は第2章で述べた「圧縮率と画質とデータ量の三すくみ」を、Canonが三つの選択肢として明示的に切り出したものだと理解できる。

撮影者は、VFXや高品質な納品が必要ならHQを、標準的な制作ではSTを、長時間の記録やストレージの節約を優先するならLTを選ぶ。第9章で扱うX-OCNのXT/ST/LTと発想はよく似ており、圧縮RAWを段階で提供するという考え方は各社に共通する。

展開機種とCanon Logとの関係

Cinema RAW Lightは、C200を皮切りに、C300 Mark III、C500 Mark II、C70、そして新しいC400やC80、2025年発表のC50、さらにEOS R5 Cへと広がった。C400は6K RAWを60pで、C80は6K RAWを30pで記録でき、いずれもNetflix承認機であって、CRMが推奨の記録形式に位置づけられている。C50はCinema EOSとして初めてフルフレーム3:2のオープンゲート記録に対応し、DIGIC DV7を積む7Kフルフレームセンサーから、12bitのCinema RAW Light(LT/ST/HQ)を最大7K 60pで内部記録できる。

RAWといっても、Canonの現像はCanon Logとの関係を抜きに語れない。第1章で述べたとおり、RAWは色や露出を後工程で決められる余地を残すが、実際の運用ではCanon Log 2やCanon Log 3といったログのカーブを前提に、ダイナミックレンジと階調を扱う。Cinema RAW Lightは色情報を豊かに保持するため、後工程での色の追い込みに耐える。専用のCinema RAW Development(現像ソフト)やACESとの連携も用意されており、カラーマネジメントの詳細は補章で扱う。

Cinema RAW Developmentと現像・ACESワークフロー

CanonのRAWは、撮って終わりではなく、後工程での現像を前提に設計されている。第1章で述べたとおり、Cinema RAW Lightのファイル(.CRM)は完成した動画ファイルではなく、センサーの生データを収めた容器に近い。Canon公式の説明でも、.CRMはガンマや処理パラメータを焼き込まず、ソフトウェア上で展開(デベイヤー)し、編集環境が読める形式に書き出してはじめて素材として扱えるとされる。

この展開を担う純正ソフトが「Cinema RAW Development」である。Canonのデジタルシネマカメラで撮影したRAWクリップを現像・再生・書き出しできる純正の現像ソフトで、ここで色空間やガンマ(Canon Log 2、Canon Log 3、Rec.709など)を選び、階調と色を追い込む。RAWゆえに撮影時点でカーブを固定せず、後からRec.709にもCanon Log 2にもLog 3にもできる点が、ログ収録との最大の違いである。

運用は純正ソフトだけに縛られない。Canon公式によれば、CRMはAdobe Premiere ProやDaVinci Resolveへ直接読み込めるほか、Apple Final Cut Pro向けの「Canon RAW Plugin for Final Cut Pro」、Avid Media Composer向けの「Canon RAW Plugin for Avid Media Access」も用意されている。編集ソフトごとにRAWの操作パネルの見せ方は異なるが、ガンマが焼かれていないため、どの環境でもRec.709やCanon Logを選び直せる。

カラーマネジメントの標準であるACESにも対応する。Canon公式のカラーグレーディング資料では、Cinema RAW DevelopmentでCanon Log 2/3のクリップをACESワークフローに乗せ、撮影と並行したオンセットグレーディングを行う手順が示されている。ACESの詳しい仕組み(IDTから作業色空間、RRT、ODTへと至る流れ)とアーカイブは補章に譲るが、CanonのRAWがこの標準的なカラーマネジメントの土台に乗る点は、規模の大きな制作や長期保存を見すえる立場では重要である。

Cinema EOSとEOS R系の実装差

CanonのRAWで注意すべきは、Cinema EOSとEOS R系で実装が異なる点である。

Cinema EOS(C70、C300 Mark III、C500 Mark II、C400、C80など)は、内部にCinema RAW Lightを記録できる。これらは業務用のシネマカメラとして設計されており、CRMのLT/ST/HQを本体内で選んで収録する。

一方、写真も撮るミラーレスの系統であるEOS R系は、機種と世代によって内部RAWの扱いが違う。Canon公式仕様と製品マニュアルで確認すると、初代EOS R5(2020年)は8K DCIのRAW(.CRM、12bit)を最大29.97pで内部記録できる。Cinema EOSのLT/ST/HQのようなグレード区分はないが、データレートの異なるRAWとRAW(Light)の二つのモードを持つ。EOS R5 Mark II(2024年)は8K 59.94pの内部RAWに対応し、Cinema EOSのLT/ST/HQではなくRAW(Standard)/RAW(Light)という二段の呼称を採り、加えて4K解像度のSRAWを備える。EOS R6 Mark III(2025年11月発表)は7K 59.94pの内部RAW(Standard/Light)を記録し、HDMI経由では最大7K 30pのProRes RAWを外部出力できる、写真も動画も撮るハイブリッド機である。これと同じ32.5MPフルフレームセンサーとDIGIC Xを積みながら、動画撮影に特化したのが翌2026年5月発表のEOS R6 Vで、Canonのフルフレーム機として初めてEOS Vシリーズに属する。縦位置対応のUIや前面録画ボタン、パワーズームレバー、タリーランプ、フルサイズHDMI端子、アクティブ冷却ファンを備え、内部7K RAW(Standard/Light、6960×3672、12bit CRM)と7K 30pのオープンゲート、そしてHDMI経由の7K ProRes RAW外部出力に対応する。R6 Mark IIIとR6 Vは名称も発売年(2025年と2026年)も位置づけも異なる別機種であり、一方をもう一方の通称として扱うのは誤りである。フラッグシップのEOS R1(2024年)は6KのRAW/Light RAWを最大60pで内部記録する。いずれも記録ファイルはCinema RAW Lightと同じ.CRMだが、EOS R系はグレード名を「Standard/Light」とし、Cinema EOSの「LT/ST/HQ」とは呼称体系が異なる点に注意したい。

内部Cinema RAW Lightと外部RAWの画質──読者の疑問への回答

ここで、読者から寄せられた疑問に答える。内部で記録するRAWと、外部レコーダーで受けるRAWとでは、どちらが高画質なのか。Canonの中でこの問いを最も分かりやすく体現するのが、EOS R5 Cである。

R5 Cは、内部にCinema RAW Light(LT/ST/HQ)を記録できるうえに、HDMIから最大8K・12bit linearのRAW信号を出力し、外部のAtomos Ninja V+などでProRes RAWとして収録することもできる。同じ一台のカメラで、内部CRMと外部ProRes RAWの両方が選べるのである。Cinema EOSにも同じ構図はあり、EOS C80は内部にCinema RAW Light(6K RAWはLT)を記録できるだけなく、HDMIから最大6K60pのRAW信号を出力して外部でProRes RAWとして収録でき、内外両対応の一例となっている。近年のEOS R系にも同じ構図は広がっており、2025年のEOS R6 Mark IIIは7Kの内部RAWと、HDMI経由で最大7K 30pの外部ProRes RAW出力を併せ持つ。2026年のEOS R6 Vも、動画特化のVシリーズ機として同じく内部7K RAWと外部7K ProRes RAW出力の両方を備える。

では、どちらが上なのか。第3章で述べた一般原理に立ち返ると、答えは「一律にどちらが上とは言えない」である。理由は三つの観点に分かれる。第一にビット深度で、内部CRMは12bit、外部へ出るRAW信号はカメラのパイプライン段の値に依存する。第二に圧縮方式で、内部CRMはCanon独自の圧縮で三段階のデータレートを選べるのに対し、ProRes RAWはApple側の設計に従う。第三に信号経路で、内部記録はセンサーからの信号をカメラ内で完結して扱うのに対し、外部出力はいったんHDMIという経路を通す。

つまり、どちらが高画質かは、解像度、フレームレート、必要なデータレート、後工程のソフトウェア、収録メディアといった条件の組み合わせで決まる。内部CRM HQは高いデータレートで色情報を厚く保持でき、ワークフローもCanon内で完結する。外部ProRes RAWは、ProRes RAWを軸にしたワークフローや、8Kを外部レコーダーで扱いたい制作に向く。第3章で強調したとおり、「内部だから高品質、外部だから低品質」と単純化するのは誤りで、条件依存で考えるべきである。内外差の一般論は第3章に、Canon固有の数値と機種の事情は本章に置いて、重複を避ける。

弱点と制約

CanonのRAWにも制約はある。まず、機種ごとに使えるグレードやセンサーモードが異なり、同じCinema RAW Lightという名前でも、対応する解像度やフレームレートは一様でない。次に、HQを選べばデータレートは大きく、第2章で述べたメディアとストレージの負担が増す。さらに、EOS R系では内部RAWの可否が機種で分かれるため、購入前に公式仕様を確認しないと、想定した収録ができないことがある。RAWの自由度は、こうした機種ごとの条件を正しく把握してはじめて生きる。

2018年以降のCinema RAW/Cinema RAW Light対応カメラ

以下は、2018年以降に関わる主なCanon機と、対応するRAWおよびグレード、発売時期をまとめたものである。EOS R系はCinema EOSと異なりグレードをRAW(Standard)/RAW(Light)と呼び、機種・世代で内部RAWの解像度やフレームレートが異なる。数値はCanon公式仕様・製品マニュアルで確認できる範囲を記す。

機種発売時期系統対応RAW・グレード解像度・フレームレートの到達点
EOS C2002017年Cinema EOSCinema RAW Light(初導入)4K(5.9Kセンサー)
EOS C500 Mark II2019年Cinema EOSCinema RAW Light(LT/ST/HQ、12bit)5.9K フルフレーム(例:24p LT544/ST836/HQ1700Mbps)
EOS C300 Mark III2020年Cinema EOSCinema RAW Light(LT/ST/HQ)4K(スーパー35 6K相当センサー)
EOS C702020年Cinema EOSCinema RAW Light(LT/ST/HQ)4K(スーパー35)
EOS R5(初代)2020年EOS R系内部RAW(.CRM、12bit、RAW/RAW(Light))+HDMI ProRes RAW8K DCI 最大29.97p
EOS R5 C2022年EOS R系(Cinema寄り)内部Cinema RAW Light(LT/ST/HQ)+HDMI経由8K 12bit linear RAW(外部ProRes RAW化)8K
EOS R12024年EOS R系内部RAW/Light RAW(6K Light RAW 59.94p≈1800Mbps)6K 最大60p
EOS R5 Mark II2024年EOS R系内部RAW(Standard/Light、12bit、.CRM)+4K SRAW;HDMI RAW出力8K DCI(8192×4320)最大59.94p
EOS C802024年Cinema EOSCinema RAW Light(6K RAWはLTのみ・639Mbps/12bit・Netflix承認)+HDMI RAW出力(最大6K60p、外部ProRes RAW化)6K 30p RAW(LT)、4.3K 59.94p
EOS C4002024年Cinema EOSCinema RAW Light(LT/ST/HQ、Netflix承認・推奨記録形式)6K 60p RAW(フルフレーム)
EOS C502025年Cinema EOSCinema RAW Light(LT/ST/HQ、12bit;フルフレーム3:2オープンゲート)7K 最大60p(17:9)/3:2オープンゲート30p、4K120p・2K180p
EOS R6 Mark III2025年EOS R系(ハイブリッド)内部RAW(Standard/Light、12bit、7K・6960×3672)+HDMI ProRes RAW(最大7K30p);7Kオープンゲート30p7K 59.94p RAW、4K120p・2K180p
EOS R6 V2026年EOS R系(Vシリーズ・動画特化)内部RAW(Standard/Light、12bit、7K・6960×3672)+HDMI 7K ProRes RAW(Standard);7Kオープンゲート(Standard/Light、6960×4640)7K 59.94p RAW(Light)、4K120p・2K180p

初代Cinema RAW(.RMF)は、EOS C500(2012年)で外部レコーダー記録の非圧縮4K RAWとして登場した点を歴史の起点として押さえておく。

機種別・グレード別ビットレート(Canon公式値)

同じCinema RAW Lightという名前でも、機種・センサーモード・フレームレート・グレードによってデータレートは大きく変わる。以下は、Canon公式仕様および製品マニュアルで確認できる代表的なビットレートをまとめたものである。数値はおおよその値で、フレームレートやシステム周波数(NTSC/PAL)で前後する。

機種解像度・センサーモードグレードフレームレートビットレート(約)
EOS C500 Mark II5952×3140 フルフレーム 12bitLT24p544 Mbps
EOS C500 Mark II同上ST24p836 Mbps
EOS C500 Mark II同上HQ24p(29.97pは2120)1700 Mbps
EOS C4006000×3164 フルフレーム 12bitLT25p(50pは1160)576 Mbps
EOS C400同上ST25p886 Mbps
EOS C400同上HQ25p(HQは最大30p)1800 Mbps
EOS C4006K フルフレーム(最大時)最大60p最大約2130 Mbps
EOS C806000×3164 フルフレーム 12bitLTのみ30p639 Mbps
EOS C804368×2304 4.3KLT59.94p678 Mbps
EOS C506960×3672 フルフレーム 12bitLT773 Mbps
EOS C50同上ST1190 Mbps
EOS C50同上HQ2420 Mbps
EOS C506960×4640 3:2オープンゲートLT/ST976/1510 Mbps
EOS R5(初代)8K DCI 12bitRAW29.97p2600 Mbps
EOS R5(初代)同上RAW(Light)29.97p(24pは1350)1700 Mbps
EOS R5 Mark II8192×4320 8K 12bitRAW(Standard)29.97p2600 Mbps
EOS R5 Mark II同上RAW(Light)59.94p2600 Mbps
EOS R5 Mark II同上RAW(Light)29.97p(25p1400/24p1340)1670 Mbps
EOS R5 Mark II4096×2160 SRAWStandard/Light59.94p1860/840 Mbps
EOS R6 Mark III6960×3672 7K 12bitRAW(Standard)29.97p2600 Mbps
EOS R6 Mark III同上RAW(Light)29.97p(25p1270/24p1220)1520 Mbps
EOS R6 V6960×3672 7K 12bitRAW(Standard)29.97p(25p2240/24p2150)2600 Mbps
EOS R6 V同上RAW(Light)59.94p(50p2010)2410 Mbps
EOS R6 V同上RAW(Light)29.97p(25p1010/24p970)1210 Mbps
EOS R16K 12bitLight RAW59.94p約1800 Mbps

数値から見えることは三点ある。第一に、8Kクラスの標準グレード(R5 Mark IIの8K RAW Standardなど)は約2600Mbpsに達し、第2章で述べたメディアとストレージの負担が現実の制約になる。第二に、同じ機種でもLight系を選べばデータレートはおよそ半分前後に収まり、記録時間とのバランスを取りやすい。第三に、C80の6K RAWがLTのみである一方、C400は同じ6KでLT/ST/HQを選べるように、機種の位置づけによって選択肢の幅そのものが異なる。数値の大小だけでなく、選べるグレードの多さも機材選びの判断材料になる。

到達点:解像度とフォーマット

CanonのRAWが視野に入れる解像度は、Cinema EOSの世代で広がってきた。スーパー35クラスでは4K前後、フルフレームのC500 Mark IIで5.9K、C400で6K、EOS R5 Cで8Kに達する。センサーの読み出しモードによってクロップやアスペクト比の制約があり、フルフレームで撮るかスーパー35で切り出すかで画角と解像度が変わる。RAWの選択は、解像度の到達点だけでなく、こうしたセンサーモードの制約とあわせて考える必要がある。

他章との整合

RAWの一般原理は第1章、データ量とワークフローの代償は第2章、内部記録と外部出力の技術的差異の一般論は第3章に置いた。本章はCanon固有の系統とグレード、そしてR5 Cを例とした内外RAWの具体的な条件依存性を担う。カラーマネジメントとACESの詳細は補章に委ねる。読者の疑問のうち、内外RAWの一般原理は第3章、16bitと12bitの読み方は第9章で扱い、本章はCanonの数値と機種事情に限定して重複を避けた。

まとめ

Canonは、非圧縮の初代Cinema RAWから、軽量なCinema RAW Lightへと軸足を移し、その中にLT/ST/HQという三段階のデータレートを用意した。Cinema EOSは内部にCRMを記録でき、EOS R系は機種によって内部RAWか外部RAW出力かが分かれる。EOS R5 Cは、内部CRMと外部ProRes RAWの両方を選べる点で、内外RAWの違いを一台で示す好例である。どちらが高画質かは条件依存であり、ビット深度、圧縮方式、信号経路、そしてワークフロー全体を踏まえて選ぶべきものである。名前の似た複数のRAWを持つCanonだからこそ、その系統とグレードを正しく理解することが、機材選びの近道になる。

出典(一次情報)


動画RAWコーデック解剖

  1. RAWとは何か|A/D変換・デベイヤーと「RAWのグラデーション」
  2. RAWの代償|データ量・熱・記録時間・メディア・ワークフロー
  3. なぜ同じ「RAW」で画質差が生まれるのか|内部収録RAWと外部ProRes RAWの技術的差異
  4. ProRes RAW|Apple×Atomosが選んだ「生に近い」設計
  5. Blackmagic RAW(BRAW)|「最適化されたRAW」という発明
  6. REDCODE RAWと特許|動画RAWを縛った知的財産の構造
  7. CanonのRAWコーデック群|Cinema RAWとCinema RAW Light(ST・HQ・LT)
  8. Sony X-OCN 前編|歴史と設計思想(FX5から遡るVENICE・F5/F55の系譜)
  9. Sony X-OCN 後編|ワークフロー・対応ソフトウェア・他RAWとの比較
  10. Nikon N-RAWとTicoRAW|ライセンスRAWという第三の道
  11. その他のRAWフォーマット概観|ARRIRAW・CinemaDNG・Panasonic・DJIほか
  12. 総合比較|「どれだけRAWか」の見取り図と2026年版マトリクス
  13. カラーマネジメントとアーカイブ|ACES・メタデータ駆動現像・長期保存

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