
「バッテリー残量が気になって、撮影に集中できない」——そんな経験はありませんか。モニター、カメラ、LEDライト。機材が増えるほど電源まわりの管理は複雑になります。その悩みを根本から解決してくれるのが、Vマウントバッテリーです。
今回レビューするのは SmallRig VB99 SE。99Whクラスのコンパクトなボディに6ポートを搭載し、「最初の1本」として選びやすいバランスの良さが魅力です。
Vマウントバッテリーとは
Vマウントバッテリーは、業務用映像機器の電源規格として1990年代から使われてきたバッテリーシステムです。背面のV字型プレートでカメラやプレートにロックする仕組みで、14.4V前後の高電圧と大容量を両立しています。もともとは放送用カムコーダー向けでしたが、近年ではミラーレスカメラやLEDライト、モニターなど幅広い機材への給電手段として、個人の映像クリエイターにも浸透してきました。
航空機への持ち込みが許可される上限は 100Wh。VB99 SEの約99Whという容量は、このラインをギリギリで収めた設計です。
Vマウントバッテリーの歴史や規格の詳細については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事: Vマウントバッテリーの歴史と規格解説 誕生から現代、そしてBマウントへ
Vマウントバッテリーの主要サプライヤー
Vマウントバッテリー市場には、さまざまなメーカーが参入しています。ここでは代表的な3社を紹介します。
IDX(アイ・ディー・エクス)
日本発の業務用バッテリーメーカーで、放送局や映画制作現場での採用実績が豊富です。品質と信頼性では業界トップクラスですが、価格帯もそれなりに高め。ARRIやREDなどのシネマカメラとSMBus経由で連携できるのが強みです。
NEEWER(ニーワー)
2011年に深圳で設立された映像機材ブランド。LEDライトやストロボで広く知られていますが、PS099EをはじめとするVマウントバッテリーも展開しています。手頃な価格と豊富なポート構成が持ち味です。
SmallRig(スモールリグ)
今回の主役であるSmallRigは、2013年に深圳で創業したカメラアクセサリーブランド。ケージやリグで世界的に支持されており、VBシリーズのVマウントバッテリーはラインナップの充実度がピカイチです。
IDXと中国勢の実力差については、こちらの記事でも整理しています。
関連記事: Vマウントバッテリー、日本企業製を選ぶ意義はあるか——IDXと中国勢の実力差を正直に整理する
SmallRig VB99 SE スペック
| 型番 | 4608 |
|---|---|
| 素材 | 難燃性ポリカーボネート |
| 容量 | 14.54V / 6800mAh / 98.87Wh |
| 定格放電出力 | 100W / 10A(ピーク) |
| 充電時間 | 約2.5時間(65W充電器使用時) |
| サイズ | 112 × 72 × 53.8mm |
| 重量 | 約595g |
| ディスプレイ | OLEDスクリーン |
| ネジ穴 | 1/4″-20 / 3/8″-16 |
入力ポート
- BP / D-Tap入力: 16.8V 6.8A(最大)
- USB-C入力: PD 65W(最大)
出力ポート
- USB-A: QC2.0 / QC3.0対応(最大12V 2.5A)
- USB-C: PD3.0対応(最大20V 3.25A / 65W)
- DC 8V出力: 5.5×2.1mm — 8V 3A(最大)
- DC 12V出力: 5.5×2.5mm — 12V 3A(最大)
- BP / D-Tap出力: 14.54V 10A(最大)
99Whという容量は航空機持ち込みの上限ギリギリ。出張や海外ロケでも安心して持ち運べます。WhとmAhの関係が気になる方は、こちらの記事もどうぞ。
関連記事:バッテリー容量の正しい比較方法——mAhとWhの違いを理解し、カメラ機材の電源を選ぶ


VB99 SE 付属品について
パッケージ内容はシンプルです。
- VB99 SE 本体 × 1
- ユーザーマニュアル × 1
- オペレーションガイド × 1
- 保証カード × 1
USB-Cケーブル、充電器、D-Tapケーブルは一切付属しません。 PD 65W対応のGaN充電器とUSB-Cケーブルを別途用意する必要があります。D-Tap経由で機材に給電する場合も、ケーブルは別途購入が必要です。
NEEWERのPS099EにはD-Tapケーブルが1本付属していたので、この点ではVB99 SEのほうがやや不親切。初めてVマウントバッテリーを買う方は、ケーブル類もまとめて注文しておくことをおすすめします。
競合製品との比較
VB99 SEの購入を検討する際に気になるのが、同クラスの競合製品。ここでは IDX DUO-C98P、SmallRig VB99 Lite、NEEWER PS099E の3製品と比較します。
基本スペック比較
| 項目 | SmallRig VB99 SE | IDX DUO-C98P | SmallRig VB99 Lite | NEEWER PS099E |
|---|---|---|---|---|
| 容量 | 98.87Wh | 97Wh | 99Wh | 99Wh |
| 電圧 | 14.54V | 14.54V | 14.54V | 14.54V |
| 最大放電電流 | 10A | 10.5A | — | 14A(D-Tap) |
| 充電時間 | 約2.5時間 | —(専用充電器依存) | 約3時間 | 約3時間 |
| サイズ | 112×72×53.8mm | 95×146×39mm | — | 111×73×56.7mm |
| 重量 | 約595g | 約640g | 約550g | 約590g |
| ディスプレイ | OLED | 5-LEDインジケーター | タッチスクリーン + 5 LED | 1.12″ OLED |
| ネジ穴 | 1/4″-20 / 3/8″-16 | なし | — | なし |
ポート構成比較
| ポート | VB99 SE | IDX DUO-C98P | VB99 Lite | PS099E |
|---|---|---|---|---|
| USB-C(入出力) | ✅ PD 65W | ✅ PD 60W | ✅ PD 65W | ✅ PD 65W |
| USB-A(出力) | ✅ | ❌ | ✅ | ✅ |
| DC 8V(5.5×2.1mm) | ✅ | ❌ | ❌ | ✅ |
| DC 12V(5.5×2.5mm) | ✅ | ❌ | ❌ | ✅ |
| D-Tap / BP | ✅ 1系統 | ✅ 2系統 | ✅ 1系統 | ✅ 1系統 |
| SMBus | ❌ | ✅ | ❌ | ❌ |
各製品の特徴まとめ
IDX DUO-C98P は、プロ現場での信頼性が段違い。D-Tapが2系統あり、SMBusでARRIやREDのビューファインダーにバッテリー情報を表示できます。ただしDCバレル出力やUSB-Aがなく、ポートの汎用性ではVB99 SEやPS099Eに劣ります。形状は従来型の薄型フラットデザイン(95×146×39mm)で、ミニ型とはコンセプトが異なります。価格は約$279と、中国勢の2〜3倍。プロ機材との連携を重視するなら選ぶ価値があります。
SmallRig VB99 Lite は、VB99 SEの弟分的なモデル。約550gとクラス最軽量で、価格も手頃です。ただし DCバレル出力(8V/12V)が非搭載 で、ポート数は4つ(BP、D-Tap、USB-C、USB-A)にとどまります。モニターやLEDライトへの給電でDCバレルを使いたい場合は、VB99 SEのほうが柔軟です。
NEEWER PS099E は、D-Tap出力が14Aと4製品中で最大。大電力を要求する機材に強く、1.12インチのOLEDディスプレイも見やすいです。ネジ穴がないのでリグへの直接マウントには工夫が必要ですが、D-Tapケーブルが1本付属するのは親切なポイント。

NEEWER PS099Eの詳しいレビューはこちら。
NEEWER PS099E レビュー|ミニVマウントバッテリーの新定番になるか
筆者が一緒に使用しているアクセサリー
VB99 SEの実力を引き出すには、周辺アクセサリーとの組み合わせが重要です。筆者が実際に使っているものを紹介します。
KONDOR BLUE コイル状D-TapからロックDC 2.1mmケーブル
D-Tap出力からDC 2.1mm機器に給電するためのケーブルです。コイル状なのでケーブルの取り回しがしやすく、リグまわりがスッキリします。ロック式のDCプラグなので、撮影中に抜ける心配もありません。D-Tap電圧(約14.5V)を受け入れるモニターやLEDライトへの給電に活躍します。Atomosなど多くの業務用モニターは7〜17V程度の広い入力電圧に対応しているため、D-Tap出力をそのまま使えます。なお、VB99 SE本体にもDC 8V(5.5×2.1mm)出力ポートがあるので、8V専用機器にはそちらを使いましょう。



エレコム MPA-CCECL03BK
USB-C to USB-Cケーブルです。VB99 SEのSB-Cポートからカメラへの給電・充電に使用しています。PD 60Wまで対応しています。0.3mという長さがちょうど良く、ストレートとL字という組み合わせのケーブルです。PD 65Wをフルに給電することはできないのでご注意ください。


KOKIGAFOTO NPFデュアルサイド NPFダミーバッテリー(タイプC&D-TAP入力付き 5525ロックケーブル)


NP-F規格のダミーバッテリーで、USB-CまたはD-TAPから入力が可能。NP-Fバッテリースロットを持つモニターやLEDライトに対して、Vマウントバッテリーから直接給電できるようになります。5525ロックケーブルが付属しており、接続の安定性も良好です。
Vマウントバッテリーからミラーレスカメラへの給電方法をもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
関連記事:
Vマウントバッテリーでミラーレス一眼カメラに給電する方法——1台のバッテリーで現場を動かす実践ガイド(後編)
NP-F互換バッテリーでミラーレス一眼カメラに給電する方法——長時間収録の「電源切れ」を防ぐ実践ガイド(前編)
外観デザインについて
VB99 SEの外観は、コンパクトなブロック型。素材は難燃性ポリカーボネートです。
ポート類は本体の側面に集約されていて、使わないときはゴム製のダストカバーで保護できます。現場でホコリや水滴が入りにくいのは嬉しいポイントです。
OLEDディスプレイはバッテリー残量や入出力の状態をリアルタイムで確認可能。ボタン操作でディスプレイの表示内容を切り替えられます。ダブルクリックで電圧とパワーの表示を切替、3秒長押しでUSB-C/USB-A/DCポートの放電を強制停止する機能もあります。
VB99 SEの大きな特徴が、Vマウント背板に1/4インチ・3/8インチのネジ穴を搭載 していること。ボールヘッドやクランプで直接固定でき、リグへの組み込みが容易です。PS099Eにはこのネジ穴がないため、リグとの親和性ではVB99 SEに軍配が上がります。
サイズは112×72×53.8mmで、手のひらに収まるコンパクトさ。重量は約595gと、ほぼ缶ビール1本分です。


セットアップ例







ミラーレスカメラ + モニターなどへの給電
VB99 SEは、6つのポートを活かした複数機器の同時給電が得意です。
- D-Tap出力からフィールドモニター・レコーダーに給電(Atomos Ninja TX等)
- DC 8V出力からダミーバッテリー経由でカメラに給電
- USB-Cポートからダミーバッテリー経由でカメラに給電(LP-E6やNP-FZ100など)
この構成なら、バッテリー1本でカメラ+モニター+スマホをまとめて管理できます。99Whの容量があれば、ミラーレスカメラの連続収録でも数時間は余裕で持ちます。
ケージ背面への直接マウント
VB99 SEのネジ穴を活かせば、Vマウントプレートなしでもケージに直接固定する運用が可能です。SmallRigのケージシステムとの親和性が高く、拡張パーツも豊富なので、同ブランドで揃えるとセットアップが効率的です。
まとめ
SmallRig VB99 SEは、99Whクラスのコンパクトなバッテリーの中で ポートの充実度とリグとの親和性に優れた 製品です。
- 6ポート搭載で多彩な機材に同時給電
- DC 8V / 12Vバレル出力でモニター・ライトに直接対応
- 1/4インチ・3/8インチのネジ穴でリグに直接マウント可能
- 約2.5時間の高速充電(65W PD対応)
- 航空機持ち込みOKの99Wh設計
- 難燃性ポリカーボネート筐体で安全性も確保
「最初の1本としてどれを選ぶべきか」と聞かれたら、VB99 SEはかなり有力な候補です。DCバレル出力とネジ穴を備えている分、リグ運用との相性が良く、現場での使い勝手に差が出ます。ミラーレス一眼での映像制作を始めたばかりの方にも、FX3やEOS C50のようなシネマカメラを使っている方にも、電源まわりの悩みを解消してくれる1本になるはずです。
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